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中央銀行による国債引受が禁じ手である理由

 一部政治家などからの復興国債の日銀引受要請に対して、政府は否定的な見解を示したそうである。今回の大災害による復興には当然ながら巨額費用が必要となる。だからといっていきなり日銀への国債引受を要請というのは、まったく筋道が立っていない。中央銀行による国債引受は禁じ手であり、それを行うにはそれ相応の理由が必要である。デフレ解消のために日銀に国債を引き受けさせよという議論そのものに問題があるとともに、それをこのタイミングで推し進めようというのはあまりに危険な考え方である。

 日本だけでなく主要先進国は中央銀行による国債引受を禁じている。これは主要国の歴史から得られた貴重な教訓による。すなわち中央銀行がいったん国債の引受などにより政府への資金の供与を始めてしまうと、その国の政府の財政規律を失わせ、通貨の増発に歯止めが効かなくなり、将来において悪性のインフレを招く恐れが高まるためである。また、それにより日本に対する国内外からの信認も失われ、格付け会社による日本国債の格下げも行われよう。国債への信認低下により日本の長期金利は大きく上昇し、これは日銀の金融政策などにより抑えられるものではなくなる。

 中央銀行による国債引受は麻薬に例えられることがある。いったん踏み入れてしまうと常用することになり、元には戻れず最後に身を滅ぼすことになる。先進主要国が中央銀行による政府への信用供与を厳しく制限しているのは、こうした考え方に基づくものである。

 たとえば、米国では連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。つまり、FRBは国債の直接引受を行うことができない。また、1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないこととなっている。しかし、FRBは日銀と同様に国債の買入れは行なっている。これは市中に発行された国債を資金供給などの目的で買入れことは可能であるためである。

 また、欧州では1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件の一つとなっている。つまり、ドイツやフランスなどユーロ加盟国はマーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うことは禁止されている。ECBも国債の買入れを行っているが、あくまで市場からの買入れであり、財政ファイナンスが目的の直接引き受けではない。

 イギリスではイングランド銀行による国債の引受は明示的には禁止されておらず、以前にはイングランド銀行による国債の直接引き受けが行われていた例はあるものの、現在、直接引き受けは行われていない。

(「新しい日本銀行─その機能と業務」日本銀行金融研究所を参照)


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