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造船の円安活況長続きせず創業ルーツを切り離す三菱重工 混沌とする業界再編 - 葉田邦夫 (経済ジャーナリスト)

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広島県呉市。かつて旧帝国海軍の戦艦「大和」を建造した呉海軍工廠を母体とするジャパンマリンユナイテッド(JMU)の呉事業所は今、久方ぶりの活況の中にある。主力の80万トンドックでは、引き渡しを前に最後の艤装工事を急いでいる6万重量トン型バルクキャリアの奥で、コンテナ1万4000個積み(20フィートコンテナ換算)の超大型コンテナ船10隻の連続建造がはじまったばかりだ。

 2013年1月、JFEホールディングス傘下の旧ユニバーサル造船と、IHI傘下の旧IHIマリンユナイテッド(IHIMU)が経営統合して発足した「JMU」。JMUの三島愼次郎社長は「統合によって開発陣は1000人を超え、(業界最大手の)三菱重工と並ぶ陣容となった」と胸を張る。船種の拡大にも十分、対応できるというわけだ。

 JMU呉事業所だけではなく今、国内の造船所は軒並み2年半~3年近くの手持ち受注残を抱え、フル操業下にある。つい2年前まで「2014年には手持ち工事量が底を打つとして心配された『2014年問題』がまるで嘘のような状況にある」(若栄正宣みずほ証券シニアアナリスト)といってもよい。鉄鋼業界関係者も国内の鋼材の使用量が増えているのは造船業界向けくらいでしょう」と話す。

円高の中で落ち込んだシェアも奪回の局面にある

 その背景にあるのは、“アベノミクス”を契機とした円安の定着だ。国際商品である船舶の商談はドル建てが基本。円安により円ベースでの競争力が上がり、13年の国内造船所の受注量が前年比56%増の1380万4000総トン、14年が同40%増の1932万5000総トンと急速に回復、「円高の中で落ち込んだシェアも奪回の局面にある」(大坪新一郎国土交通省海事局船舶産業課長)のだ。

 一時、受注残が激減し、造船業からの撤退も検討してきた住友重機械工業も15年3月期にアフラマックス型タンカー9隻の受注が決まり、当面、事業を継続する方針という。

活況の背後で広がる悲観論

 しかし先行きの業況見通しは決して明るいものではない。世界の造船業は「基本的に供給力が過剰」(西村眞司住友重機械工業副社長)な状態にあるうえ、船価(ドル建て)もリーマンショック前の水準まで回復していない。主力のバラ積み貨物船の運賃も中国経済の落ち込みによる世界的な海上荷動きの低迷から低水準を脱し切れていない。総合的な海運運賃指数である「バルチック海運指数」(1985年=1000)もこのところ、600前後と低迷している。これでは「船会社の新造船発注意欲もわかない。今年の受注量は1000万総トンにも届かないのでは」(日本造船工業会関係者)と悲観的な見方が広がっている。

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世界地域別竣工量の推移(1950年~2014年)
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 こうした中、日本の造船業はどう生き延びようとしているのか。

 業界の耳目を集めているのが、これまで業界大手をめぐる再編劇の中で蚊帳の外だった三菱重工業の動きだ。同社はこれまで神戸造船所の商船建造から撤退、瀬戸内を中心とした中小造船の相次ぐ買収で業界トップに躍り出た今治造船(愛媛県今治市)との間でLNG(液化天然ガス)船の設計・販売を手掛ける合弁会社「MILNGカンパニー」を設立するなど造船部門の構造改革を進めてきた。さらに、今年10月1日付で、創業のルーツともいえる長崎造船所の香焼工場を切り出して二つの子会社を設立すると発表したのだ。

 三菱重工が100%出資して設立するのはLNGやLPG(液化石油ガス)などを運搬するガス船を中心とした商船建造会社と、大型船体ブロックを専門に製造する会社の2社。同社が造船部門の再建にここまで思い切った対策をとるのは、LNG船と並ぶ高付加価値船として進出した豪華客船建造で船主からのクレームが相次ぎ、工程に不具合が生じて、15年3月期決算で1300億円にも上る特別損失を計上、事業の再建を余儀なくされたためだ。

 これによって長崎造船所は、海上自衛隊向けイージス艦など艦艇の建造に特化し、同時に「エンジニアリング(EPC)事業を強化、将来のメシの種にする」(柳澤順三船舶・海洋事業部長)方針だ。具体的には、大型コンテナ船など他の船種についても開発設計を進め、建造については専業中手に委託、競争力を強化していく。本体は商船建造から撤退することになる。

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