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キャッチーなタイトルは諸刃の剣-女性活躍推進派に寝返っても、まだ心配なこと - 高岡 和佳子

近年、女性の活躍推進のムーブメントは凄まじい。先月、企業の持続的な成長と中長期的な価値向上を目的とする「コーポレートガバナンス・コード」が定められた。そこにも、女性の活躍推進を含む社内の多様性の確保が盛り込まれている。筆者は、これまで女性の活躍推進を懐疑的に見てきたが、とある本を読んで漸くその本質を理解した(気になっている)。

そこで、いまや少数派になっているであろう、未だに女性活躍推進に懐疑的な方々に、推進派に寝返り間もない筆者の視点で女性活躍推進の重要性を解説する。併せて、女性の活躍推進という言葉を多用する風潮に潜むリスクについて言及する。

【なぜ懐疑的に見ていたのか?】

   女性の活躍推進に関し、「女性活用が進んだ企業ほど利益率が高い」といった分析が引き合いに出される。筆者を懐疑的にさせた理由はここにある。「女性活用が進んでいる企業ほど利益率が高い」からといって、「女性活用を進めることで企業の利益率が高まる」とは言えないからだ。利益率が高く、余裕のある企業が女性活用を進めているのかもしれない(因果が逆)。

また、既存の枠に囚われない新進気鋭の経営者の存在が、女性活用の推進と高い利益率の双方に寄与しているのかもしれない(共通要因の存在)。因果が逆もしくは、共通要因の存在が理由なら、女性の活躍を推進したところで、高い利益率の実現は期待できない。誤解の無いように記しておくが、筆者は保守派ではない。確信できる根拠があれば、社会の変化は拒まない。ただ、確信がない事に賭ける勇気のない小心者なのだ。

【なぜ寝返ったのか?】

   筆者は毎朝、研究所内の図書室を通り自席に向かう。しばしば、研究領域外の本に目が留まる。これが、狭くなりがちな視野を広げてくれる。そして、先日マーケティング関連本(高橋仁著(2014)「女性資本主義論」幻冬舎)に目が留まり、これをきっかけに筆者は女性活躍推進派に寝返った。その本は、「狩猟」「開拓」「征服」に代表されるような弱肉強食型システムを「おっさん資本主義」、「誠実」「利他」「共感」に代表されるような相互補完型システムを「女性資本主義」と称している。

そして、「おっさん資本主義」の限界と「女性資本主義」の成功事例を記している。筆者が寝返ったのは、「女性資本主義」の成功事例を理由に、「女性活用を進めることで企業の利益率が高まる」ことを確信したからではない。中には女性創業者による事例も含まれるが、いずれの事例も成功の秘訣は、女性上級職の数などにはなく、相互補完型システムの導入にある。そして本の趣旨は、いかに多様性を重視する価値観への転換が重要かを説くことにあると筆者は理解した。

「女性資本主義論」という時勢に合ったタイトル、「おっさん」という言葉の選択、これらの狙いは読者に興味を抱かせ、より多くの読者に趣旨を届けるために違いない。筆者が寝返った理由はここにある。女性の活躍推進は枕詞に過ぎず、多様性を重視する価値観への転換が一丁目一番地。直接的には企業の利益率を高める効果がなくても、女性の活躍推進を掲げることで価値観が変化すれば、間接的に企業の利益率が高まる。そして、価値観が変化すれば、自ずと女性が活躍する場も増え、結果的に女性の活躍推進につながる。筆者はこのように理解し、寝返った。

【女性の活躍推進を掲げる上で心配なこと】

   女性的とは何だろう。そして、先の本の前提は一般認識と合致しているのだろうか。そこで、最近よく耳にする「女子力」に対するイメージを例に考える。女子力の高さを感じる要素に対するコメントを属性別に集計した。結果、“ふわもこ部屋着”の着用や、手入れされた爪といった「ファッション」に関するコメントが3分の1を占めた。しかし、2番目に多い「仕草、言葉遣い」や3番目に多い「気遣い」は、「誠実」「利他」「共感」と通じる。先の本の前提は、一般認識から大きくは乖離していなさそうだ。

しかし、中に気になるコメントがあった。「周りの女子に差をつけることを目的として女子力が高い人は嫌い」という類のコメントだ。このコメントから、「狩猟」「開拓」「征服」に代表される弱肉強食型システムは、女性に受け入られにくい(女性顧客満足度や女性従業員満足度の下げ要因になる)ことが分かる。しかし、分かることはこれだけではない。戸籍上は女だが、弱肉強食型思考が強い女子の存在が垣間見える。

筆者は、女性活躍を掲げるがために、思いもよらない間違いが起こらないか心配している。女性的価値観を取り入れるために、男性経営者が“ふわもこ部屋着”の着用を試みるといった類の間違いではない。現行の体制と親和性が高い、弱肉強食型思考が強い女性ばかり採用してしまうという間違いである。

この場合、女性の活躍推進は進んでも、多様性を重視する価値観への転換は起こらない。ならば、企業の利益率も高まらない。女性活躍推進を掲げることで、注目度があがるが、本筋を見誤るリスクが潜むというように、キャッチーなタイトルは諸刃の剣だ。

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