記事

バロンズ誌:ギリシャ国民投票より、中国株安こそ懸念材料

Barron’s : Greece Will Approve An Austerity Package, Market Should Focus On China.

バロンズ誌、今週の特集は物言う投資家ネルソン・ペルツ氏に迫る。化学大手デュポンとの委任状争いには敗北を喫したとはいえ、73歳のペルツ氏はインタビューで「中途半端な業績で納得しないよう取締役会と株主を教育することができた」と振り返ります。またターゲットをバルブ製造大手ペンテアに定め、再編を促す構えです。詳細は、本誌でご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは、5日に国民投票を控えるギリシャと中国がテーマ。有識者は、ギリシャ債務危機への懸念を過剰と判断しています。その一人こそ、香港に拠点を置く経済調査会社ガベカルドラゴノミクスのアナトール・カレツキー氏。国際債権団との交渉で発揮されるチプラス首相の「自滅的な無能力ぶり(suicidal incompetence)」が、「欧州をはじめとしたリスク資産には結果的に強気要因」と言い切ります。

理由は簡単。急伸左派連合(Syriza)やチプラス首相は国民投票で敗北し、ギリシャ国民は国際債権団の財政健全化案を受け入れを表明する見通しだからです。ドラクマへの回帰は、検討することすら恐ろしいはず(訳者中:そういえばバルファキス財務相は紙幣印刷機を破壊したと発言していましたっけ)。ギリシャ政治家の性向を踏まえれば紙幣を刷りまくることが予想されるため、ドラクマの通貨価値は下がり貯金をはじめ年金、賃金が目減りするというとんでもないシナリオが現実化しかねません。欧州連合(EU)からの補助金すら、受け取れなくなってしまいます。ギリシャ国民が国民投票でチプラス首相の期待に反し財政再建案へ「イエス」と回答すれば、テクノクラートへの政府移行がスムーズに進みEU、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の支持も取り付けやすくなるというもの。ギリシャにとっては財政再建の鬼とごときメルケル独首相も、態度を軟化させる期待が膨らむ。第2次世界大戦終了後に米国が敷いた”マーシャル・プラン”を彷彿とさせるギリシャ復興計画に向け、協力する可能性すら浮かび上がります。

チプラス首相、国民投票後はどんな決断を下すのか?
[画像をブログで見る]
(出所:Martin Schulz/Flickr)

軍隊の間で「爆撃された兵士は迫撃砲の砲撃音を聞いたことがない(soldiers never hear the mortar round that gets them)」という言葉があるように、プエルトリコのデフォルト問題、Fedの利上げ、イランの核協議などには不必要に不安視しなくてよいのかもしれません。なぜなら、一連の問題は各メディアで報じられ織り込み済みと言えます。

恐らく最も重要な問題こそ、中国株。世界中でバブルが指摘されるなか、上海総合指数は過去数週間で25%以上も下落してしまいました。過去12ヵ月でみるとまだ100%高、IT関連が多い深セン総合指数は150%高と、まだまだ高い位置にあります。

中国の強気相場を振り返ると、市場開放も一翼を担っていました。適格国外機関投資家(QFII)の枠組みで規制されていた海外マネーの流入が承認され金融機関だけでなく、個人投資家も香港市場を介して取引が可能に。中国国内では輸出主導、投資主導の経済モデルからサービス業、内需主導の経済へ転換を図ると同時に、株高で国内企業および銀行の債務支払いを進めバランスシートの改善を促したものです。規制緩和のほか低金利政策で株式相場を支えて来たのは、言うまでもありません。

マッキンゼー・グローバル・インスティチュートの試算では、中国の債務(政府、企業、家計含む)は2014年半ばまでに国内総生産(GDP)比282%に及ぶといいます。2007年の7兆ドルから28兆ドルと、4倍に膨れ上がりました。新規株式公開(IPO)の件数が増加し株高が進んだにも関わらず、債務は拡大の一途をたどっています。Jキャピタルのアン・スティーブンソン—ヤン氏は、年初来での株式発行で調達した資金は2.8兆元(約4520億ドル)ながら、ローン規模は52.6兆ドルで社債発行高も6.9兆ドルに達すると分析していました。株高は債務高を減少させていなかったというわけです。

しかもスティーブンソン—ヤン氏いわく、中国国内の非上場企業はIPOで得た利益を他の銘柄に投資することなく自身の非上場子会社に振り向けたか、海外へ退避させたといいます。さらに、個人で保有する株式を銀行融資の担保に活用してきました。2007〜08年、上海総合が70%も急落し6年に及び低迷した時のように中国株が下落を続ければ、世界も被害から無縁でいられなくなること必至です。中国の不動産市場には、さらに壊滅的なリスクが及びかねません。1974年の名画”チャイナタウン”の名台詞に「忘れろよジェイク、ここはチャイナタウンだ」がありますが、市場関係者にとっては記憶に刻まれる一大イベントとなり得ます。

ストリートワイズは、公益セクターへの買いを推奨。Fedの利上げ警戒から、同セクターは年初来で11%も下落してきました。S&P500セクターではエネルギーより劣る有様で、最悪のパフォーマンスとなっています。しかしマーケットは、Fedの利上げに過敏に反応し過ぎた感が。ドイツ銀行の株式ストラテジスト、デビッド・ビアンコ氏はFedが緩やかな利上げにとどめるならば、長期金利は比較的安定的に推移し長期金利に振れやすい公益セクターに買い戻しの機会を与えるといいます。2004年6月に利上げを開始した当時も、公益セクターは利上げ開始から1年間で32%上昇していました。急増した自社株買いが米当局の介入もあって鈍化すれば、株式相場の下支え役を失うことになる。公益セクターに、再び熱い視線が向けられる可能性を残します。

あわせて読みたい

「ギリシャ」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    河野大臣「ワクチンは十分に足りている」接種状況について説明

    河野太郎

    08月03日 09:13

  2. 2

    在宅勤務で生産性低下した国は日本だけ? 背景に対面コミュニケーション依存の働き方

    非国民通信

    08月02日 15:12

  3. 3

    男性視聴者の眼福になっても女子選手が「肌露出多めのユニフォーム」を支持する理由

    PRESIDENT Online

    08月02日 15:27

  4. 4

    森林大国ニッポンが木材不足のナゾ ウッドショックは林業に変革をもたらすか

    中川寛子

    08月03日 08:07

  5. 5

    この1週間を凌げば、オリンピックが終わります。もうしばらく我慢しましょう

    早川忠孝

    08月02日 14:37

  6. 6

    コロナ軽視派「6月で感染者数減少」予想大ハズレも、重症者数が大事、死亡者数が大事とすり替え

    かさこ

    08月02日 10:29

  7. 7

    何をやっても批判される「老夫婦とロバ状態」の日本

    内藤忍

    08月02日 11:52

  8. 8

    人権尊重、企業は本気か-DHCの不適切文書に批判

    山口利昭

    08月03日 08:42

  9. 9

    学生の自由と大人の責任。政党学生部の発言・活動に議員が介入するのは、言論封殺や圧力なのか問題

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    08月03日 08:37

  10. 10

    来るべき自動車産業戦国時代を勝ち抜ける日本がなぜEVなのか?

    ヒロ

    08月03日 11:52

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。