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「戦争をしない国~明仁天皇メッセージ」を読む

最新刊の「戦争をしない国〜明仁天皇メッセージ」(矢部宏冶/須田慎太郎・小学館)を読みました。著者の矢部氏は「日本はなぜ『基地』と『原発』を止められないのか」を書いたジャーナリストで、明仁天皇の公式メッセージを写真つきで紹介しながら、現天皇こそが最強の平和主義者であり、日本の未来への指針者であることを説いています。副題では「あなたは、天皇の言葉に耳を傾けたことがありますか?」と問いかけています。

天皇が現憲法下での「国の象徴」としての役割を忠実に果たそうとして、過去の戦争の過ちを忘れず、平和を志向していることは広く知られていますが、それが立場上の義務感を超えた深層からの信念であることを、矢部氏も近年になってから知ったと述べています。そこから現天皇の少年期における敗戦の経験、青年期における恋と結婚、昭和天皇との交流、そして沖縄訪問時の「火炎瓶事件」などを考証し、それらを通して形成されて行った強固な「平和の伝道者」としての天皇を紹介しているのです。

皇太子には「天皇になる」以外の選択の自由はありませんでした。その立場の重苦しさをともに分かち合う覚悟を決めてくれた伴侶を得たことで、明仁天皇は「新憲法の下で生きつづける新しい天皇」になることができたのです。全国民の統合の象徴とは何であるのか、それは「すべての国民の心に寄り添うこと」に尽きます。戦争犠牲者への尽きることのない哀悼の思いも、次々に起こる災害犠牲者への寄り添いも、そこから生まれます。政府が原発事故の収束を宣言しても、故郷を失った人々の悲しみを、天皇は忘れないのです。

そこだけを見れば、天皇は日本の未来を導く希望の星なのかもしれません。天皇の意向は皇太子にも受け継がれています。しかし天皇は、制度的に政治的権能を有しない存在です。何らかの指導的役割を期待するのは矛盾しています。そのぎりぎりの制約の中から発せられるメッセージに、人々が人間的な温もりを感じるのは、なぜでしょうか。

矢部氏は巻末に本音を書いています。戦争法制が整えられようとしている今だからこそこの本を世に出したのです。それは言うまでもなく、明仁天皇こそが今の日本で平和憲法の最強の体現者であるからです。歴史経過をたどれば、日本は戦争をしない国になった、その条件で天皇は天皇でありつづけることが許されたのです。

かつてこの国は天皇の命令で戦争に突入し、多くの人を殺しました。その反省から、天皇の命令で戦争をしない国になったわけではありません。戦争をしない国でありつづけるのは国民の選択で、それを喜ぶ天皇がいるのです。

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