記事

ジブリとスピルバーグのお話

スティーブン・スピルバーグ製作の新作「ジュラシック・ワールド」が凄いらしい。私が予告編を見た限りでは、かなり良い出来だ。凶暴な恐竜達を飼いならしユニバーサル・スタジオやシー・ワールドの様に大観衆を集めて大遊園地が出来る。子供から大人まで大量の観客を集めて大盛況だ。しかし、突然何かが狂い出す。始め小さな恐竜の暴走が、段々大惨事になって行く。今までのシリーズでは犠牲者はまだ少なめであったが、今回は大観衆を巻き込み、あり得ないほどの大パニック状態となる。今年8月公開。1993年から立て続けに3作作って少休止し、2015年の今回は時間をかけてじっくりコンセプト練り直して、久々の映画化。鮫が暴れるパニック映画「ジョーズ」を作った男が腕によりをかけて設定やプロットをスタッフと練ったのだろう。現在、全米興行成績1位だが、久々に客の入る映画を作ったスピルバーグもインタビューでは興奮気味だ。自分でも手ごたえがあったのだろう。クリエーターなんてそんなものだ。「当たればうれしい。」に決まってる。そして私は商売の上手いスピルバーグの戦略性が決して嫌いではない。

「だって映画は娯楽・エンターテイメント産業なんだし、いっぱい客集めてなんぼでしょう?」と開き直っているようでかえってうれしい。私はもちろん小品映画・芸術映画・大人のための映画・知的映画も認めるが、この中年になった永遠の映画少年が最近ちょっと、渋い名作に走っていたのが、今回は娯楽精神全開。元々初期のセールスマンの小型車が突如、巨大トラックに追いかけられる「激突!」の頃から人を怖がらせる腕はピカ一なのでこの映画、観客満足度は高いらしい。ちょっと余談だが、私が中学生の頃、夏休みの昼間NHKを見ていたら突然あるテレビ映画が始まりクギ付けになった。結局、終了まで目が離せなかった刑事ドラマがあった。「刑事コロンボ」のシーズン1の一回目「構想の死角」だった。スピルバーグの監督第一作。若干25歳。大テレビシリーズの第一回目をちょっと彼が作った自主映画を見て得体の知れない若者に任せてしまうユニバーサル映画も凄い。あるシーン。決定的証拠品がテーブルの端に置いてある中、コロンボと犯人が立ち話中にその証拠品にカメラがゆっくり近づくいてゆく。視聴者だけは気付いている。かなりドキドキした。NHKも平日の昼間に凄いのやってるな~と唸った。名作「刑事コロンボ」は最初そんな扱いだった。

一方、話が変わって「スピルバーグがアメリカ映画をダメにした」と書いている高名な日本の小説家が最近いた。私はその方のコメントもわからない訳ではない。でも私はスピルバーグは本物の戦犯ではなくスピルバーグを中途半端に真似したり彼を利用している輩に罪があると思う。確かに、スピルバーグもある意味、無邪気に凄い量の作品を作っているので、正直、玉石混合である。第二次大戦中のLAを題材にした戦争コメディ「1941」、製作で入った竜巻映画「ツイスター」、巨大ロボット対戦CG映画「トランスフォーマー」など個人的には「なんじゃこりゃ!」と思う作品もある。一方で宇宙人と少年の交流物語「E・T」も巨大UFOが地球に来る「未知との遭遇」も冒険活劇「インディアナ・ジョーンズ」も画期的で胸躍る作品だったし、シリアス系ではナチス収容所映画の秀作「シンドラーのリスト」、戦中の上海を描いたJ・Gバラードの傑作小説の映画化「太陽の帝国」、第一次大戦の悲惨さを一頭の軍馬の運命で描いた「戦火の馬」、またクリント・イーストウッドの「硫黄島2部作」にも製作で参加している。もうこの人はエネルギーが有り余っているから何でもかんでも手を出してしまう。だから「シンドラーのリスト」をヨーロッパでロケ中に衛星回線でハリウッドと結び、「ジェラシックパーク・1」のCG映像チェックをする様な、映画制作中毒者なんです。もっと言うと映画バカなんです。だから彼がCGアニメーション「シュレック」や最近勢いのある米国テレビドラマに手を出すのは当然の成り行きなのです。

キャスリーン・ケネディとフランク・マーシャルという大物プロデューサー夫婦がいる。夫人は「E・T」の頃から、夫は「インディアナ。ジョーンズ」の頃からスピルバーグ映画をプロデュースしている。夫人はディズニー社がジョージ・ルーカスから権利を買い取った今年末公開の話題作「スターウォーズ7」のプロデューサーである。無茶苦茶、優秀な夫婦である。そして二人はいつの頃からかスタジオ・ジブリ作品の全米公開のプロデューサーになる。声優を決めたり、興業のやり方を決めたり、音響効果を決めたり、宣伝を指揮したり、ポスターのビジュアルを決めたり。やはり人脈がモノを言うアメリカ映画界では、このぐらいの大物でないと話にならないとジブリ関係者は考えたのだろう。データーを調べると凄い。「借りぐらしのアリエッティ」は全米1522館公開。(これだけの映画館を押さえるのも凄い)、興業収入1900万ドル。日本のアニメが娯楽にうるさいアメリカで北米初登場9位というのですから驚く。そんな、キャスリーン・ケネディら夫婦は絶対にスピルバーグ本人にジブリ作品の観賞を薦めていたと私は思う。そして、ジブリ作品に魅了されたと思われるスピルバーグはある日、日本に来日したときに真っ先にある場所へ向かった。

東京・三鷹の「ジブリ美術館」です。
きっとケネディ・マーシャル夫婦に聞いたと推測する。
これは、鈴木敏夫さんに直接聞いた話だ。(鈴木さん書いちゃってすいません。)

彼は美術館の玄関に設置してある映画の原点とも言える映像装置「ゾートロープ」に映る動くトトロを1時間も飽くことなく見ていたというのである。何か考え込みながら。その時スピルバーグを案内した鈴木さんは私に言った。 「あんな人ははじめてです。きっと彼は映画が本当に好きなんですね。」

スピルバーグは現在68歳。飽くことを知らない探究心・研究精神。あれだけ映画を当てていても、ジブリのゾートロープ装置を1時間も研究している。ウディ・アレン監督が78歳でバリバリの現役なのだから、彼も健康であればあと10年は映画を作れるだろう。「ジュラシック・ワールド」をただのアトラクション映画とかたずけるのも簡単だが、宣伝映像で久々の彼の元気な姿を見て、娯楽映画も秀作映画も沢山作って下さいよ、と思った。でも、スピルバーグ・ブランド汚さぬようにをちょっとだけ作品を選んね。(了)

あわせて読みたい

「映画」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    京都大学がGW10連休を「無視」か

    川北英隆

  2. 2

    韓国の親日美人議員を北が罵倒

    高英起

  3. 3

    安倍首相による平和賞推薦に疑問

    舛添要一

  4. 4

    統計不正は森友と同じ忖度行政

    岸本周平

  5. 5

    辺野古の賛否問う県民投票に疑問

    MAG2 NEWS

  6. 6

    日本=悪者 韓国のフェイク教育

    NEWSポストセブン

  7. 7

    林修 ブレイク6年目も消えない訳

    文春オンライン

  8. 8

    「ダメ、ゼッタイ。」が生む偏見

    WEDGE Infinity

  9. 9

    コメ生産で日本の技術求める中国

    WEDGE Infinity

  10. 10

    医師と患者で差「完治」の解釈

    中村ゆきつぐ

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。