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企業とイノベーション

あつまろです。

私たち人類が飢餓から解き放たれて、自己実現や娯楽に関心を向けるようになったのは、じつはここ2世紀の出来事です。では何がターニングポイントになったかというと、19世紀から20世紀の変わり目に登場した「企業」です。

「産業革命」

歴史の授業で、産業革命こそが私たちの生活を変えた原動力のように教えられました。産業革命の時代を振り返って見てみましょう。

イギリス人発明家ジェームズ・ワットにより1776年に開発された蒸気機関。では、この蒸気機関の発明により欧州の経済はいかほどまで向上したのかと見ても、欧州のGNP成長率は19世紀を通して年率で2%以下という低成長だったそうです。豊かな社会を実現したのは産業革命の発信地である欧州ではなく、アメリカだったのである。

「どうしてアメリカなのか」

産業革命による技術革新(イノベーション)を、経済成長に結びつけるもの、それは「市場」です。ワットの蒸気機関が産んだ鉄道に目を向けます。

鉄道業はビジネスを開始するまでに膨大な投資が必要となります。アメリカでは、ウォール街がリスクを多数の株主に分散させて、その投資資金を提供する役割を担いました。しかし、鉄道業はレールを敷いて列車を導入するだけでなく、数千キロにおよぶ線路における列車の安全運行には、経営管理が必要不可欠となります。そこで株主だけでなく、権限まで実務組織に分散させた「企業」が誕生することになりました。

こうしてアメリカでは、所有と経営を切り離す「経営者資本主義」が編み出されました。そこに出現した「企業」は中間管理職という新しい役割を必要とし、その供給をビジネススクールが請け負うことになりました。米ハーバード大学が社会の需要を察知して、1908年に経営学修士(MBA)プログラムを始めました。一方、イギリスでは富を持つ資本家が自前でビジネスを開始しました。彼らは、自らの資金や能力の枠を超えて手を広げることはなく、明日の成長より今日の利益を重視することになりました。対するリスクを負わないアメリカの経営陣は、際限なく企業の成長を渇望します。

この結果、アメリカはイギリスを一気に抜き去ることになりました。

「技術革新(イノーべション)」

ワットの蒸気機関とアメリカの鉄道業の成り立ちをみていると、ドラッカーの言葉が思い起こされます。
イノベーションは化学や技術そのものではない。経済や社会にもたらす変化である。消費者、生産者、市民その他の人間行動にもたらす変化である。イノベーションが生み出すものは、単なる知識ではなく、新たな価値、富、行動である。
 
今回の事例を指しているかのようです。蒸気機関の発明は、何十年もの期間を経て世界を変えるイノベーションに成り得たのです。

最近ではIT革命という言葉も見かけなくなりました。しかし、私たちの生活は変化を遂げています。至るところでイノベーションが起こっています。しかし、ひょっとしたら、まだ我々は本当の意味でのIT革命の成果、本当の意味でのイノベーションを起こせていないのかもしれません。
世界の動きそのものを変える予測不能なイノベーションがある。それらのイノベーションは起業家が何事かを起こそうとして試みるイノベーションである。それらこそ、真に重要なイノベーションである。それらのイノベーションは確率分布の外にある。ほとんど生起不能に近いところにある。

ドラッカーのいう世界の動きそのものを変えるイノベーションは、ITの分野において、数々の起業家がトライしてまだ達成していない途上にあるのかもしれません。

参考文献:P.F.ドラッカー「マネジメント」、

日経新聞ゼミナール欄「企業を考える」

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