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インタビュー:歳出の数値目標、改革の手緩める=諮問会議・高橋氏

[東京 30日 ロイター] - 経済財政諮問会議・民間議員の高橋進氏(日本総合研究所理事長)はロイターのインタビューで、30日に閣議決定された政府の「経済・財政再生計画」で歳出の目標設定に異論を唱えたのは、数値目標を設定した途端、歳出の構造改革の手が緩むためだと説明した。

今後の課題では、骨太の方針に沿って、改革工程表とKPI(成果目標)を実行に移せるかだと強調。ここ十数年の中で類をみないほど具体的に書き込んだ社会保障改革について実行できるかは「政権の責任」であり、「諮問会議・民間議員と覚悟と責任が問われることになる」と決意を語った。

10%超への消費税率引き上げの必要性に関しては「消費税の10%(超)だけでなくて、社会保険料の引き上げ、患者の負担増も含め、安易な負担増を先行させれば、歳出改革の取り組みが甘くなる」と、歳出改革の切り込みが先決だとした。

インタビューの概要は以下の通り。

──「経済・財政再生計画」は、2020年度基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化実現に向け、安倍晋三首相が指示した「具体的な計画」となったか。手応えはどうか。

「閣議決定後、間髪いれず専門調査会を立ち上げ、改革工程表・KPI(成果目標)の具体化に着手する。その意味で、具体化はまだこれからやらなければならない課題だ。具体的かどうかより、20年度に向けて、あるいはその先に向けて健全化に取り組む基本方針が確立できた」

──計画全体の実効性は、担保されたとみるか。

「実効性という意味では、18年度に中間目標を掲げ、PBのGDP比マイナス1%を明確にした。かつ、必要なら追加措置を取ることを明記したことが実効性の担保になる」

「このうち歳入について、やるべきことは好循環をできるだけ維持すると同時に、成長戦略を実行していくこと。また、歳出改革を通じて税収を伸ばしていくこと」

「歳出改革は歳出総額やキャップをはめることよりも、歳出の構造を変えることに主眼を置いた」

「従来は、診療報酬を抑えるとか、薬価を抑えるとか、価格のコントロールに主眼があった。ところが長く続けることはできず、後で反動が出てくる。今回は価格もコントロールするが、人々の行動を変えることに取り組み、結果的に量をコントロールできるようにする。それが歳出の抑制につながるという考え方で、歳出改革に実効性を確保しようとした。従来と発想が違う」

「歳出の厳しい枠を設定することが実効性があるかのごとく言われてしまうが、実現する手段がなければ実効性はない」

「また、過去は物価の伸びが低かったために歳出はそれなりに抑制できたが、今後、賃金・物価が上昇するもとで過去と同じ前提で置くことは、実質、相当のマイナスになることを覚悟しなければならない」

「その場合、歳出抑制が経済に悪影響を与える危険性や、厳しいキャップをはめることで、歳出改革の中身の改革がむしろ進まなくなってしまうなどの弊害が生まれることを懸念した」

「この結果、(財務省が主張したような)過去3年間を伸ばすのではなく、経済・物価動向を踏まえるという文言を入れ、そのアローワンスのなかで必要なインセンティブを与えながら、歳出の中身を変えることを主張した」

──歳出の目標設定に異論を唱え続けた。「目安」があるほうが歳出改革に現実味が出るのではないか。

「数字を置いた途端に、歳出をいかに削るかという話しになり、歳出の中身を変えることにつながっていかない。今までも、歳出がなかなか切れない時には、増税をしないと言いながら、実質的に社会保険料の引き上げや患者負担の引き上げといった負担増を織り込んで尻を合わせる動きになっていた。増税あるいは負担増を前提に改革を進めようとした途端に、歳出の切り込みができなくなるのが過去の経験だ」

──今後の課題は何か。

「基本的な方針が定まったので、工程表とKPIを作って実行することができるかどうか。従来の骨太では社会保障改革について、具体的な中身を書き込むことはできなかったが、今回はかなり具体的に書き込むことができた。これをいかに実行していくか。ここに政権の責任がかかっているし、われわれ諮問会議・民間議員の覚悟と責任が問われることになる」

──10%超への消費税引き上げの議論も、将来不可欠だと思う。いつごろ着手できると見るか。

「もちろん、2020年度ではなくて、(団塊世代が後期高齢世代に入る)2025年度や2030年まで見据えて改革を進めなければならない」

「しかし、消費税の10%(超)だけでなくて、社会保険料の引き上げ、患者の負担増も含め、安易な負担増を先行させれば、歳出改革の取り組みが甘くなる。当面は消費税の10%への引き上げを超える負担増は考えるべきではない」

「むしろ歳出改革に注力すべきだ。最後はある程度の増税は不可避としても、このまま負担増を先行させてしまえば20年度以降、とめどない増税になってしまう。それを食い止めるために、3年間の集中期間に歳出改革に取り組むべきだと主張している」

──18年度の中間評価の時点でPB黒字に届かないと見通した場合、歳入改革も俎上(そじょう)にあがる。

「歳出・歳入両面で必要な追加的な措置を取る。その時には歳出改革がある程度効果を挙げていること、見込んでいる税収が上がってくることが前提になる。その両方で赤字幅に届かないのであればということだ」

(吉川裕子 編集:田巻一彦)

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