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【詳報】集団的自衛権の行使は現行憲法の枠内〜安全保障法制で、西修・百地章の両教授が会見

29日、集団的自衛権の容認・"合憲"派として知られる駒澤大の西修名誉教授と日本大の百地章教授が日本外国特派員協会で記者会見を行った。

百地教授は冒頭、「黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』ではありませんが、合憲派として名前を挙げられました三人のうち一人です(笑)」と自己紹介、両氏とも19日に行われた日本記者クラブでの会見※1に続き、現行憲法の下でも、集団的自衛権の行使は可能であり、安全保障法制は"合憲"という説明を行った。

※1:19日に行われた日本記者クラブでの会見のもよう
【全文】集団的自衛権「合憲派」の西・百地両教授が会見〜①冒頭発言②質疑応答


質疑応答

ーお二人とも、今回の安全保障法案は現憲法の範囲内だとおっしゃいました。しかし、保守系の方々には、本当は憲法を改正するのが望ましいのだが、と言う方もいる。つまり、理想は憲法改正だが、安全保障環境があまりにも早く変化しているので、それを待っているのでは間に合わない、そういう中で対応するために、今は憲法解釈を変更するしかないと言っているのです。お二人も、本当は憲法改正しあければならないが、とりあえず現状のニーズに対処するため、解釈で対応するほうがよいと考えているのでしょうか。

また、憲法を改正すべきというその理由の中には、やはりこの憲法は日本人が書いたものではなく、GHQが押し付けたものである、という意見もあるが、それについてはどう考えているのでしょうか。(ロイター)


西教授:私の解釈では、今の法案は憲法の枠内ですから、憲法改正は必要ありません。もしそれを超えれば、憲法改正が必要だと思います。この法案に関する限り改正は必要ない、というのが私の見解であり、また政府の見解ということです。

百地教授:西先生の仰るとおりで、憲法というのはただ言葉に書いてあるだけのものではありません。生きた憲法、現実に対応できる解釈というのが必要です。もちろん条文の枠内の話ですけれども。

そもそも日本国憲法下で自衛隊が憲法違反ではないとされている事自体、ある意味ではやや曖昧さを残していると思います。しかし私はそれもある程度やむを得ないということで、憲法違反ではないと考えております。

この集団的自衛権もそういう意味では憲法の枠内の問題ですから、別に問題ないと。ただ、より明確にするためには、はっきり憲法を改正して、これを位置づけるが必要がある。ただし憲法改正というのはあまりにも手続きが難しい、時間がかかります。

他方、南シナ海における中国の軍事的脅威をはじめ、アメリカは内向き志向になってしまって、日米安保条約は本当にいざというとき動き出すかわからない。そういう中で、アメリカの戦争に巻き込まれるのではなく、アメリカをもう一度日本の防衛体制に引き込むために、今までは一方的に守ってもらっていた日本が憲法の範囲内でやっていけることはしよう、日米同盟をもう一度絆を強くことによって日本の安全を守る必要がある。そのためにとりあえずできるところからということで、憲法解釈の変更を行っているということです。

二番目の質問ですが、押し付け憲法だと思っておりますから、まさに日本人の手で全面的に書き改めたい。しかし難しい手続き規定がありますから、とりあえずできるところから変えるしかないと思っております。

ー学者のお二方に失礼な質問かもしれませんが、国連憲章51条に出来ると書いてあること、憲法には明確に禁ずるのがないということを理由に合憲であるというのは、正直言って弱いように思いました。

そこで質問なのですが、お二方は憲法改正論者であられて、百地先生は徴兵制にも賛成されていると、そういうお立場です。今回の憲法解釈は、"憲法はそうとしか読めない"という意味でおっしゃっているのが、本来は改正すべきという立場なので、"そう読むこともできる"というような意味でおっしゃっているのか。つまり、お二方の政治的なお立場と全く関係なく、憲法学者として中立的に見た時に合憲と読めるのか、それとも、私見のようなものも入っているのか、失礼な質問かもしれませんが、よろしくお願い致します。(ビデオニュース神保哲生氏)


百地教授:憲法、あるいは法律の解釈の問題には、一般に解釈学というもの、つまり法律や憲法の条文の枠内で何が正しいかというのを解釈する場合と、そもそも法律や憲法そのものが問題であるから作りなおすべきだというような、立法論というのがあります。 この解釈学と立法論は違うんですね。私が憲法違反でないと言っているのは、解釈学の世界で明らかにそれが言えるということです。

つまり、この集団的自衛権というのは国際法上の権利です。国際社会においては、憲法よりも国際法の方がが優先するんです。従って国際法で、我が国が集団的自衛権を放棄も禁止もしないで、無条件で国連に加盟しているわけですから、国際法によって我が国に認められているのが集団的自衛権です。すべて確認したわけではありませんが、集団的自衛権を憲法でわざわざ認めている国なんて無いはずです。必要ないからですね。したがって国際法を見ればわかる。他方、日本国憲法には集団的自衛権を禁止するとか放棄する規定はなにもありません。それゆえ、当然我が国が集団的自衛権を持てるということは京都大学の大石眞教授も言っておられることだし、国際法と憲法の関係さえわかれば、当然そういう結論が出るはずです。

ところが日本の憲法学者は、憲法の条文いくら探しても集団的自衛権が出てこない、中にはネス湖でネッシーを探すより難しいなんて馬鹿なことを言っている人もいますが、それくらいナンセンスな議論でありまして、だったらアメリカの憲法探して集団的自衛権出てきますか。フランスの憲法、ドイツの憲法探して集団的自衛権出てきますか。出てこないはずです。従いまして、その理論はそもそもおかしいんです。国際法上の権利はそれを否定しなければ当然持っているということなんです。これが大前提ですね。

それから徴兵制の問題ですが、これも誤解がありまして、某国会議員が誤解を国会で述べていたようですが、何を根拠に言っているのか非常に疑問です。

私は日本記者クラブでの会見でも徴兵制は憲法違反であるし、そもそも不要であると言っています。今日ハイテク化が進んでいる中で素人を引っ張ってきてもは役に立たない、だから足手まといというのが現実ですから、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスもいずれも徴兵制を認めておりません。もう一つは金もかかります。ですから非現実的です。

ただし、政府が"意に反する苦役に当たるから憲法違反だ"という言い方をしていることに対しては、私は異論があるということを申し上げたんです。つまり逆に言えば、自衛隊員の方々は自らの意志で苦役に就いているのか、ということになりますね。国の防衛という大変大事な仕事に就いている方々が、苦役に従っているというのは彼らにとっても耐え切れないでしょうし、私としてもそんな言い方はできないです。神聖な任務に就いておられるわけですから。

従って、意に反する苦役だから憲法違反であるという言い方には私は反対である、ただし、結論は、徴兵制は不要であるということです。どうぞ誤解のないようにお願いします。

西教授:最初の質問、すなわち政府の今の限定的集団的自衛権は憲法の範囲内であるかどうか、それについて、私の今までの解釈から導きだされるものなのかという質問ですが。私の今までの説から当然導かれる結論です。すなわち今回の政府の解釈が合憲であるというのは、わたしが今回あてはめた、適用した、という解釈ではありません。私の今までの解釈でも、政府の解釈は枠の中であって、当然導かれる解釈であると申し上げたいと思います。

徴兵制については、国会の委員会でも同じ質問を受けましたが、必要ないというのが私の意見です。イタリアなどの国でも徴兵制が廃止されました。徴兵制を採用している国にはスイスがありますが、ご存知のようにとても強い国軍を持っており、集団的自衛権も認めていない国です。また、日本国憲法18条の「苦役に服さない」というのは、アメリカ合衆国憲法修正第13条から来ていますが、アメリカでは徴兵制は最高裁では合憲という判断が下されたこともあり、政府によって態度が違うということも指摘しておきたいと思います。

ーフランスでは1789年に革命が起きて、奴隷は認めるべきでないという人権や自然権といった考え方も定義されました。それの延長である国連憲章の51条を読みますと、安保理が議論することになっていますが、いま進められようとしている憲法解釈、安保法制によって、1930年代に起こったような侵略を起こすのではないかという懸念を持っている人もいます。(フランスの記者)

西教授:まず、憲法第9条をはっきり見ていただきたいと思います。第1項で、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と定めております。まず憲法上、侵略戦争は絶対に致しません。

また、日本の国民は、民主主義その他、非常に成熟しております。ですから、侵略戦争は絶対しないということは明らかであります。

それから、国連憲章の安全保障理事会のことをおっしゃられましたけれども、安全保障理事会では、五大国が拒否権を持っております。なぜ集団的自衛権がこの国連憲章に入ったのか。それは、中南米の小さな国々が、もし国際紛争が起きた場合、五大国の拒否権によって自分たちの国が防衛できない、そういう理由からこの51条が入ったのです。また、国連には国連軍がありません。そういうことで、お互いが一緒に同盟してお互いに守っていきましょうというのが51条の趣旨です。

いずれにしても、現在の国連憲章においては、集団安全保障は認められていますけれども、それが全てではありません。ですから同盟国の中で自国を守っていく。これが当然のことではないでしょうか。

また、日本国民は絶対侵略はしない。いまの案を「戦争法案」と言っておりますけれども、私はこれは「戦争抑止法案」であると思っております。

百地教授:まず、西先生がおっしゃったことと重なりますけれども、国連憲章51条は個別的・集団的自衛権を認めております。これは、冷戦の中で、安全保障理事会に拒否権が認められてしまったので、もし紛争した場合は国連に提訴し、国連が対処することになっていたはずなんですが、冷戦が進行する中で出来ない場合が出てくる、そのときのために、個別的・集団的自衛権が認められたんです。我が国は国連加盟国の一員として当然その権利を行使する権利がある。なぜ日本が行使した場合だけ、侵略につながるんでしょうか。

次に、普通の国並みに防衛と安全を確保するために集団的自衛権を行使するのは当然のことであります。我が国は限定的行使にとどまっておりますが、フランスは全面的に行使することは認められております。そのフランスは侵略しないけれども、日本には侵略の可能性があるのではというのは、明らかに日本に対する不信感であって、私はとても受け入れられません。

ー(質問をした記者)フランス人は、フランスの憲法を尊重しますから、そこが違いではないかと思います。(笑)

両教授:それは日本人も同じです(笑)。

百地教授:まさに憲法を守っているから、こんなことしかできないわけです。つまり憲法を無視すれば大々的なことができるでしょう(笑)

また、こと、防衛や安全保障問題に関しては、戦前の日本と現在の日本は全く違います。安倍総理も度々おっしゃっていますが、戦後の日本は積極的平和主義に立って、いかなる国に対しても戦争をしたことはありませんし、これだけの平和が続いた国はひょっとしたらないんじゃないでしょうか。これが日本の立ち位置ですから、全くご懸念は無用です。もしそれでも信用できないのであれば、かつて奴隷制を採用していたフランスがいつまた奴隷制を復活させるかという議論につながると思います。(会場から拍手も。記者席から意見を述べようとするフランスの記者を司会が制止する。)

最後に私の憲法改正論ですけれども、解釈としては、現在の憲法の下でも集団的自衛権の限定的行使が可能であるというのが、客観的な憲法の解釈です。

他方、立法論。つまり憲法かくあるべしという議論では、私の理想を述べれば、西先生と同じように、侵略主義を放棄した9条の1項は堅持します。絶対に守ります。日本からは絶対戦争はしない。その上で第2項は、一切の戦力を持たないとなっていますから、外国からもし攻められた場合どうなるかと。あまり細かい議論はできませんが、日本の自衛隊は、核こそ持ちませんけれども通常戦力として、実態としては世界でもトップクラスの軍隊です。しかし9条2項で戦力の保持を禁止されておりますから、法制度上は軍隊ではないと言わざるをえないんです。つまり警察組織の一環なんです。したがってまともな国並みに、侵略を受けた場合それに対処する。あるいは侵略そのものを抑止するためにこそ、自衛のための軍隊を持つべきだと。

だから9条1項は変えない、堅持する。しかし2項は改正して自衛のための軍隊を持つ。これが私の基本的な考え方です。ただしこれは理想ですから、時間はかかると思いますけれども、速やかに実現したいと思っております。

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