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何気なく行われる差別

 25日に、東急田園都市線たまプラーザ駅で、女子中学生が路線に転落。急行電車にはねられ、死亡する事故があった。
 駅での事故であるから、これが発生した時にも多くの目撃者があった。目撃者たちはTwitterなどのSNSに「女子高生が路線に落ちて電車にはねられた」旨を書き込んだ。

 ところが、これがいつの間にか「女子高生が歩きスマホをしていて転落した」という話に変化していた。目撃者からはスマホの情報などは出ていないのに、SNS上で情報が変化したという。(*1)

 女子中学生と女子高生の混同自体は、あってもおかしくないが、どうして「歩きスマホ」などという情報が入り込んだのか。
 理由としては単純で「女子高生が落ちたということは、歩きスマホに違いない」という、単なる偏見によるものである。それは産経新聞の記事にも書いてある。

 僕が気になったのは、さらにその先。「どうやら歩きスマホで転落というのは間違いらしい」という情報が広まってから先のネット界隈の反応である。

 まずは「○○というIDが最初に歩きスマホという情報を流し、それが多くの人に拡散された」という、間違った情報を流した元凶という人物を指し示す指摘が拡散された。

 しかし、僕が確認した範囲では、指摘されたIDの人は「歩きスマホ」という情報は流しておらず、多くの人から謂れ無き批判を受けたのか、途中からアカウントに鍵をかけてしまった。

 誤情報を流した罪を「特定の悪人」に押し付けようとするネット界隈のやり口には辟易とさせられる。

 また、誤情報を拡散した人が「どうやら誤報らしいです」として訂正をツイートをしていたのだが、その次には必ずと行っていいほど「歩きスマホが危険なことには変わりありません」と、さも自分が歩きスマホの危険性を指摘したかのような、ツイートをしていたことが気になった。

 あやふやな情報を拡散した側は本当に「歩きスマホは危険だから」という良心をもってツイートを拡散していたのだろうか?

 本当は「歩きスマホで落ちたバカな女子高生がいた」という、被害者を晒す気持ちでツイートを拡散したのではないか。そういう疑念は残る。
 本人たちは「だから、自分は間違ったことをしていないのだ」という言い訳をしたいのだろうが。それはあくまでも「歩きスマホでホームから転落した女子高生」という「特定の悪人」に罪を転嫁しているだけではないだろうか?

 「女子高生がスマホを」とのツイートをしたりRTした人たちは、十中八九特に何も考えずに、見かけた情報をそのままツイートしたのだろう。そこには主体的な行動意識はない。だからこそ、その情報が間違っていようと、そのことを真摯に反省することなどセず、なんかちょっと間違えたような感じで、お茶を濁してしまう。

 しかし、他者に対する偏見や差別意識というのは、そうした全く本人も意識していない何気ない行動の中にこそ現れる。
 「女子高生=どうせ歩きスマホだろう」と納得してしまう。その事自体が極めて差別的なことなのである。今回、この偽情報を広めてしまった人たちは、意識せぬままに、もっと多くの偏見を垂れ流している可能性がある。

 今回のことに教訓があるとすれば、そうした可能性こそ自覚するべきなのだと、僕は思う。

*1:東急・女子中学生死亡事故 「歩きスマホ」誤情報はなぜ拡散したのか?(産経新聞)

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