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法科大学院制度を維持するためには法科大学院の入口で入学者を絞らないと。そんなことできるのですか。

 現在、法曹養成制度を巡って政府内で検討(もどき)が行われていますが、第20回法曹養成制度改革顧問会議での議論がおもしろいです。

第20回 法曹養成制度改革顧問会議(平成27年5月21日開催)

 司法試験合格者の質をどのようにして維持していくべきなのか、司法試験の合格率を上げるということになれば、当然、一定数は必ず合格させるということになりますから、必ず質は落ちます。要は司法試験が質の担保ができない、選抜機能の働かないという状態になります。

 しかも、文科省は法科大学院の入試競争倍率2倍の要請について、昨年度は補助金削減の基準から外しました。
 その結果、法科大学院の入試競争倍率が2倍未満の法科大学院数は次のようになります。
  平成22年度  55%
  平成23年度  26%(2倍未満を補助金削減基準に入れる)
  平成24年度  18%
  平成25年度  10%
  平成26年度  25%(2倍未満を補助金削減基準を外す)

 入試競争倍率2倍確保の要請は質の確保です。しかし、現実には定員割れをしている法科大学院にとっては、質の確保などとは言っていられず、来る者拒まずの姿勢で入学者を確保しようとしてきたのです。
 それでは質の確保は不可能で、結局、法科大学院課程を修了しても司法試験に合格することなど全くおぼつかない結果に陥ります。法科大学院間の司法試験合格率の格差はここに顕著になります。

 平成27年度の法科大学院実入学者数は2,201人と昨年度比-71名に留まったのは2倍未満を補助金削減基準から外した結果です。そうでなければ2,000人を切っていたことでしょう。

 このような状態だから司法試験の合格者の質の低下は必然の結果となります。
 最低でも2,000人を司法試験に合格させるということでこれまでやってきたわけですから、そうならざるを得ないのです。
 昨年度が1,810人と若干の減少がありましたが、これでは焼け石に水です。
 そのため文科省が現在導入計画を進めているのが、共通到達度確認試験(仮称)です。未修者コースが念頭にあります。
 もともとの趣旨は、全国での到達度を知ることによって、従来の学習の到達度が知ることができると同時に、成績が伸び悩んでいる場合の早期に進路変更を促すためと説明されてきました。
 要は司法試験の受験前に一定数を淘汰しようということです。

 それ以上に、法科大学院の入口で絞るということが、この顧問会議での議論で出てきたことは、法科大学院制度を制度として維持していくことそのものが限界に来ていることを示していると思われます。
 当初3,000人目標とされていましたが、それは最低限の目標とされていたのですが、それは法曹需要が溢れんばかりに満ちており、それを目指して毎年数万人規模で法科大学院を目指す、ということを思い描いていたようです。
 そうでなければ一定の水準は保てません。
 志望者激減、「全入」という状況でも、司法試験の年間合格者数はとにかく2,000人で維持させてきたのですから質は低下の一途です。

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 そのため、顧問会議で出てきたのが、法科大学院の入口で絞る、だそうです。
 もちろん入口で絞るべきでしょう。法科大学院課程に2~3年間を費やさせておいて結果も出ないようでは、ご本人の努力の問題もさることながら見込みのない者を合格させてしまうという無責任なやり方の方が問題です。これまでは単に授業料が欲しいため、法科大学院を閉校にさせないために入学希望者を実質全員「合格」させてきたわけですから、無責任の極みだったわけです。

 しかし、現実問題、入口で絞れるのでしょうか。
 各法科大学院でのバラツキがひどい中で、現実には無理です。
 本来であれば、それこそ「共通入試制度」(仮称)でも導入しない限り、入口での質の担保はあり得ません。
 この質の確保を現実に行うためには入試競争倍率の2倍が確保されればよいというものではなく、2倍だろうが3倍だろうが、見込みのない者は合格させないということが求められるのですが、現状の2倍基準は、逆に入試競争倍率2倍になるまでは合格させもよいという意味合いになってしまっています。

 顧問会議での議論は、机上の議論でしかなく、法科大学院制度自体の維持が困難であることの自覚もできず、未だに現実を見ることのできない人たちの集まりでしかなく、このようなレベルの議論で国家の政策が決まっていくことに恐ろしさを感じます。

法科大学院の利権って何だろう?

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