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三菱重の水陸両用車に将来性はありや?

三菱重の水陸両用車に米海兵隊が関心、BAEなどが協業模索三菱重の水陸両用車に米海兵隊が関心、BAEなどが協業模索
>三菱重工業 が研究を進める新型の水陸両用車に、米海兵隊が関心を示している。これまで突破できなかった技術的な壁を超えらえる可能性があるとして、特にエンジンに注目。海兵隊向け次期車両の開発に携わる英BAEシステムズ と米ゼネラル・ダイナミック(GD) が、それぞれ三菱重と協業を模索している。

>AAV7の水中での速度は時速7ノット(13キロ)。日本の関係者によると、三菱重が研究中の車両は時速20─25ノット(37キロ─46キロ)だという
 この三菱重工とGDの話は既にブログや記事で書いたかと思います。その話を聞いた時はGDしか名前は出てきませんでしたが、BAEも色気をだしているところは面白いですね。

ですがそもそも論で言えば、この手の水陸両用装甲車が必要かつ有用でしょうか。
 兵器の長射程化、精密誘導化、小型化が進んでおり、C4IRも進んでいる現在、上陸作戦のあり方は大きな変換期に来ていると言えます。
 
  そのようなときに思想の延長線上の、現用品に毛が生えたよう程度のものを大金かかけて開発する意義があるでしょうか。
 つまり蒸気機関車から電気機関車への過渡期に、高性能な蒸気機関車をつくるような話になるじゃないでしょうか。

 ある意味米海兵隊は、それがわかっていたからオスプレイの開発と導入にこだわってきたわけです。成功したかどうかは別として。

 基本的に水上航行能力と、防御力、陸上での生存性はトレードオフの関係にあります。それを実現することはピストルのように小型で隠し持てて、ライフルのように長射程で精度の高い射撃ができる銃が欲しいというようなものです。

 因みに普通の水陸両用装甲車、例えばAMVなどでも防御力を上げたタイプは水上航行が不能になっています。

 高速で水上航行し、リーフや防潮堤を超える踏破性能を有し、また十分な防御力を付加させるのは至難の業です。例えば巨大なエンジンを搭載したフロートでも付けて、上陸時に切り離すとかなら可能でしょうが、コスト的にも現実的ではないでしょう。

 むしろ高速の揚陸艇に通常型で踏破性能の高い装甲車を搭載するとか、空挺型の装甲車の方が現実的でしょう。むろんこれらも一長一短があるでしょうが、高速水陸両用車よりは技術的にも予算的にも現実的だと思います。

 また日米共同開発には問題もあります。米軍と自衛隊では開発にかける金額が文字通り桁違いです。開発費は折半と言われたら出せないでしょう。EFVだってあれだけ大金かけたわけです。
 日本側が調達数に併せてR&Dの比率を決めようといっても聞いてもらえるでしょうかね。恐らく日本側のそのような交渉能力はありません。共同開発をやるにしても米国企業の下請けでしょう。BAEといっても実態は米国支社の元UDがやるでしょうから、米国企業のようなものです。
かといって防衛省と三菱重工だけで開発予算が確保できるのか。現実的な製品が開発できるのか過去の実績をみると甚だ不安です。

 もっと根源的な問題は何輌調達するの、ということです。せいぜい数十輌の調達ですから、それに大金かけて開発するんですかということです。仮に50輌調達するとして、開発費に500億円かかれば調達単価が10億円として(多分それ以上かかるでしょう)開発費を頭割りすれば実質20億円、戦車の倍です。96式自走迫撃砲みたいにたった24輌しか調達しないのに新車種を開発するようなことになるんじゃないでしょうか。

 だいたいAAV7だって1回も南西諸島で上陸の試験もせず調達を決定しちゃった「軍隊」がまともなリサーチや試験をするんですかね?輸送艦から下ろす実験も●●でたった一回やったきりでしょう。あとは富士学校と土浦の武器学校で水遊びやって程度です。
世の中をなめているとしか思えません。

 率直に申し上げて、水陸両用部隊を編成するにあたって、まともなリサーチもしない組織に、次世代の水陸両方戦闘を想定し、しかるべき戦略やドクトリンを組み立てるつもりも能力もないでしょう。英海兵隊への調査でも今年になってからです。

 少なくとも5年ぐらい前から、世界の水陸両方部隊を調査すべきだったでしょう。ところがそんな知恵もないし、カネも出さない。カネが惜しいので、なんとなく米海兵隊を横目でみて、その劣化コピー。で、ろくに考えもしないでAAV7やオスプレイを大人買いしちゃったわけです。

 胡乱な水陸両用装甲車の開発よりも、必要な情報や知恵にちゃんと投資をするという、世の中のアタリマエのことが当たり前にできない組織の、あり方を変えるほうがさきでしょう。


自衛官を国際貢献で犬死にさせていいのか
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