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南シナ海問題に警戒感を高める米国 中国を取り巻く国際環境の変化 - 岡崎研究所

アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)日本研究部長のオースリンが、5月14日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙にて、中国の南シナ海における高圧的な行動を止めさせるためには、中国の変化に期待するだけでは足りず、中国を巡る国際環境を変えていくことが有益である、と論じています。

 すなわち、ペンタゴンは、中国が新たな建設を進めている南シナ海の島嶼周辺を偵察する為に、米軍の艦船・航空機を派遣することを検討していると発表した。この計画がホワイトハウスにより承認されれば、アジアのパワーバランス形成を巡る争いは新たな局面に入る。

 米国の政策立案者達とアジアの同僚達は、中国が国際化し、国内で民主化を進め、対外的にも協力的になることを長く期待してきた。

 しかし、中国を巡る国際環境を再構築することの方が、中国政府の本質が変わることや民主的な蜂起に期待することよりも、中国の政策選択に影響を与える上で役に立つ。既に、中国の拡張主義的行動に対する反対の結果、中国は高圧的な行動だけでなく、隣国の猜疑心を鎮める試みも行うようになっている。中国の高圧的な行動に対抗する上で、米国は余りにも臆病であったが、このような米国の控えめな姿勢は、中国がスプラトリー諸島で埋め立てを始めた結果、変わりつつある。

 中国当局は、「状況が許せば」、新たな島に作られた民間施設を他国が人道目的や気象予測の為に使用することも許されると発表したが、このような協力的姿勢は、中国外務省が、中国はスプラトリー諸島の上空に一方的に防空識別圏を設定する権利を有すると述べた結果、霞んでしまった。

 中国の核心的政策が近いうちに変わるとは期待できないが、中国が疑惑を晴らそうとする努力を多少とも始めたことは、自らの行動に対する反応に懸念を持っている証左である。日本が、南シナ海での米軍との海空共同パトロールの可能性を含め、地域の安全保障につき自らの役割を拡大しようとしていることは、中国にとって特に関心の高い点である。

 中国は隣国を油断させることは何でもやろうとするであろうが、圧力を感じれば感じるほど、協力的に行動するであろう。その結果、東南アジアの隣国との領土紛争につき多国間で交渉することや、拘束力のある行動規範に署名することへの拒否感が和らぐ可能性もありえよう。

 西側は、中国にリベラルな基準を押し付けようとしても、中国共産党の既得権益に打ち当たって失敗に終わるだろうが、中国を取り巻く環境を変えることにより、中国が望ましくない政策をとることをある程度制御できる余地を得られるだろう、と論じています。

出典:Michael Auslin,‘China’s Confidence Can Be Shaken’(Wall Street Journal, May 14, 2015)
http://www.wsj.com/articles/chinas-confidence-can-be-shaken-1431621333

* * *

 中国を巡る国際環境に変化の兆しが見られることを活写した有益な論調です。今年の3月頃から、中国による南シナ海での埋め立てが大々的に取り上げられるようになり、この問題に対する米国の論調が、質量ともに従来とは異なる次元になっているように見えます。この論調からも米国内の対中認識が次第に厳しくなりつつあることが窺われます。

 そして、実際の政策面においても、オバマ政権は、中国による南シナ海での岩礁埋め立てへの批判を強めています。米軍は、沿岸海域戦闘艦(LCS)「フォートワース」をスプラトリー諸島の周辺海域に派遣して偵察活動を行い、P8対潜哨戒機「ポセイドン」を同空域に飛ばして偵察を行っています。また、大統領以下、政府高官、軍の高官らが相次いで、中国の南シナ海における行為を名指しで非難しています。

 国連海洋法条約は、人工の構築物の周辺に領海、経済水域等を認めていません。米軍による偵察は、そうした国際規範を目に見える形で示すという意味を持った行動ですから、継続されるべきでしょう。

 南シナ海での米中のせめぎ合いから新たな秩序が生まれるかどうか、期待し難いところではありますが、日本としては、既に約束している、フィリピンやベトナムへの巡視艇の供与等に加え、米国および有志国とともに、地域における、国際規範に基づいた海洋安全保障を確保する枠組み作りに努力をすることが求められます。それは、この論説が言うところの「中国を取り巻く環境を変えること」に他なりません。

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