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「絶歌」のベストセラー

神戸連続児童殺傷事件の犯人である「酒鬼薔薇聖斗」こと元少年Aが著した「絶歌」がベストセラーとのこと。内容が気になるのですが、間接的に元少年に印税を払うことになると思うと、買う気になれません。

この事件に関しては、元少年Aの両親の手記も発刊されています。『「少年A」この子を生んで…』というタイトルで、事件から4年後の2001年に文藝春秋から出版されています。

私はこのどちらも読んでいません。読んでないのに論評のしようはないのですが、中身の論評ではなく、こうした出版についての意見を述べたいと思います。本の出版は表現の自由の一つです。犯罪を負ったからと言って制限される権利ではなく、国家による言論弾圧や検閲などの歴史があることからも、その制限は慎重でなければなりません。

一方で、著者は「元少年A」となっており、~編集委員会などのグループ名ではありません。細かな契約条件を知る術はありませんが、元少年Aはこの手記の出版で印税収入を得ることになるでしょう。その印税収入が被害者の贖罪のために贖われるのかは分かりません。出版に際して被害者の父親が反発していることからも、そのような合意はないと推定するべきでしょう。

「絶歌」は現在アマゾンのベストセラー1位であり、10万部の初版も売り切れ、増刷とのニュースも流れています。印税の額は相当な規模になるでしょう。事件を起こすことによって、結果的にその「対価」を得ることになるのです。

出版するなと言うつもりはありません。ですが、表現の自由を行使するだけならインターネットなどの媒体に掲載することも可能です。出版メディアを通じたのは、それが金銭を得ることの出来るツールだからに他なりません。そうであるならば匿名での出版は極めて卑怯な行為であると思います。

元少年Aは更生保護プログラムによって本名を変えているという可能性もあり、これまで事件の加害者として知られることなく一般人として生活を過ごしてきたわけです。少年法は加害者の「更生」を保護法益とする法律ですが、今回のようなケースでは「やり得」を容認する機能を果たしているのではないでしょうか?さらに今回の出版による金銭獲得までをも保護する必要はあるでしょうか?

私は、出版という表現の自由を行使するのならば、行使の主体を明らかにし、実名を晒すべきだと思いますが、本人がそれを望まないのならば、遺族の両親による出版差止め訴訟、あるいは精神的苦痛を受けたことによる不法行為による慰謝料請求権などの訴訟により、元少年Aを被告にするしかありません。

訴訟になれば原告と被告は公開されることになり、元少年Aは匿名を失うことになるでしょう。そして、出版によって得た収入は支払い能力を示すものとして慰謝料の算定に用いられるでしょう。どの程度になるかはともかく、印税の総額≒慰謝料の額となることが望しいのではないでしょうか?

結果的に、元少年Aは出版によって得るものはないようにも思います。このような「やり得」を司法は許してはいけません。これは「更生」という保護利益の「濫用」です。

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