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それはホルミシス効果なのか?東電顧問・加納時男氏のインタビュー

本日(2011年5月5日)の朝日新聞の朝刊。衆院議院 河野太郎氏と、東電顧問・元参院議員 加納時男氏のインタビューが載っていた。見出しは、河野氏のほうが『「安全神話」もとから「おとぎ話」』。加納氏のほうが、「原子力の選択肢を放棄するな」。原発に対する異なる意見を載せているわけだ。加納氏は原発推進派である。それはともかくとして、加納氏のインタビューの最後の方で、「低線量放射線 体にいい」という見出しが。
低線量の放射線は『むしろ健康に良い』と主張する研究者もいる。説得力があると思う。私の同僚も低線量の放射線治療で病気が治った。過剰反応になっているのでは。むしろ低線量は体にいい、ということすら世の中では言えない。これだけでも申し上げたくて取材に応じた

「低線量の放射線は『むしろ健康に良い』と主張する研究者もいる」というのは正しい。このような主張を放射線ホルミシス効果という。ただし、放射線ホルミシス効果を主張する研究者は少ない。証拠が不十分だからだ。現時点では、放射線ホルミシス効果の実在について、説得力があるとは私には思えない。まあ、説得力の有無については主観の問題なので、個人的な意見の相違としてよかろう。次が問題。

「私の同僚も低線量の放射線治療で病気が治った」。何を言っているのかよくわからない。文脈から言えば、「低線量の放射線治療」とは、ホルミシス効果のことを言っていると解釈できる。しかしながら、もちろん、標準医療では放射線ホルミシス効果を取り入れた治療はない。仮にホルミシス効果が実在するとしても効果は小さく、病気が治ることを観察できるような強い効果はない。そのような強い効果があるのなら、臨床的な証拠を出せるはずである。「低線量の放射線治療」がホルミシス効果のことを指しているとしたら、病気が治ったとされる同僚は、「効果の証明されていない代替医療を受けて、治療のおかげで病気が治ったと誤認した」という可能性がきわめて高い。

ホルミシス効果を狙ってではなく、標準医療の範疇に含まれる放射線治療を受けたという可能性もある。何をもって「低線量」とみなすかにもよるが、相対的に「低線量」だという説明を医師から受けたのかもしれない。そうだとしても、「むしろ低線量は体にいい」という文脈からかけはなれている。加納氏の同僚が受けたという「低線量の放射線治療」が、ホルミシス効果を期待してのものだとしても、標準医療の範囲内のものだとしても、加納氏の主張には問題がある。

十分な証拠があれば、「むしろ低線量は体にいい」と言っても批判はされない。だが、十分な証拠がないのに、「むしろ低線量は体にいい」と主張すれば、批判されるのは当然のことだ。低線量放射線の害を少なく見積もりたい立場の人たちが、放射線に対する不安を過剰反応だとして、「むしろ低線量は体にいい」と主張したのであれば、なおのことだ。


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