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僕は理想的平和主義を貫けない~子どもに嘘を言えない

■絶対的平和主義で平和は続くか

最近僕はネットのニュースをさっと流し読みするだけなので、テレビや新聞で「集団的自衛権」がどう論じられているのかはよくわからない。

が、例の「3人の法学者による法案の完全否定」以降、どうやら今の「安全保障法制」は流れが変わり(【詳報】「安全保障法制は違憲、安倍政権は撤回を」~長谷部恭男氏・小林節氏が会見)、また、共産党の志位委員長がやたらかっこいいといった(5月28日(木) まるで法廷劇を見ているような志位共産党委員長による質疑)断片は知っているが、それらが僕にとっての根本的「問い」に対して光を射した出来事だったかというと、実はそうでもない。

根本的問いとはこうだ。

集団的自衛権に関する法整備の強引さは理解しているし僕は反対だ。が、ではそれを反対するとして、そのまま現憲法9条を守り続け絶対的平和主義を主張することで、本当に「平和」は続くのか、というものだ。

もう少し言うと、いまの自衛隊はどこからどう見ても「軍」であり実際に予算的には世界5位か6位(だったっけ)の規模を誇るのに、そんなたいそうな軍隊を持ちながらその自衛隊の威力と意味には言及せず表面的には「平和を続けよう」と語り続けることができるのか、という問いだ。

■国のアイデンティティ=領土

続けて言うと、近代国家と近代国家、クニとクニというものは、それぞれの国家の意味を常に確認するために「自国領土の規模の確認」をし続ける存在であり、自国領土拡大や損失の機会を見逃さないのが近代国家あるいはクニの定義そのものではないかと僕は思っている。

つまりはお隣のクニのどこかの領土が微妙に「空白」状態になった時、すかさずその空白を埋め自国領土を拡大しそれを正当化するのが、そもそも国家というものではないか。

その「領土の埋めあい」の季節が今まさに東アジアにやってきている(「資源」も広義の領土だと思う)。内戦や独立戦争はあったものの全体的には第二次大戦後小康状態だったとも言える東(南)アジア周辺で、「陣取り合戦(近代国家としてのアイデンティティ獲得合戦)」が始まっているように僕には見える。

どの国が悪でどの国が正義かは、この記事では触れないでおこう。ただ、東(南)アジア内の小さなあるエリアで何かあった時、比較的規模の大きな近代国家同士によるそれぞれの領土の物理的確認(つまりは陣取り合戦)の可能性が少し前よりは遥かに高まってきたということだ。

言い換えると、近々、戦争というよりは領土の小競り合いがどこかで起こりそうだ、と僕は直感している。これは僕だけの直感ではなく、日本の「空気」だとも思う。

だからこそ、超保守的現政権はこの機を捉えて安全保障法制提出に踏み切っているのだし、保守政権に名指された法学者はそれに反旗を翻したのだし、国会議事堂には数万人単位で集会が行なわれているのだし(こうした動きがここ数年激増した)、志位さんがアイドルになる。

■ジョン・レノン

僕は高校時代からジョン・レノンが一番好きで、ジョンの声を聞くと、そのラブ&ピースには嘘はないと確信していた。それは今も変わらず、当欄でも以前こんな記事を書いてもいる(平和が気持ちいい、でなぜダメ?~集団的自衛権論の前に)。

自分でも甘いと思う。が、今もこの一文「平和が気持ちいいのではなぜダメなのか」が本音だ。

しかし一方で、案外現実主義者のもう一つの僕が現れて、「それだけでは無責任ではないか」と問うてくる。

上に書いたとおり、国家というものはそのアイデンティティを賭けて常に自国土の規模を確認する。隣の国の、それがどれほど狭いエリアだろうが不便な場所にあろうが獲得するチャンスがあれば動く。その具体的動き方はそれぞれの国の行動指針と戦略に則って行動するのだろうが、基本的に「陣取り合戦」という要素が含まれる。

一つの国が理想的平和主義を貫いても、他のすべての国は陣取り合戦だとすれば、理想的平和主義国家は結果的には「侵略」(現実的には辺境領土あるいは資源の喪失)されることにことになる。

■「9条削除」論

領土が一部切り離されても(場合によっては国土が解体され複数の国に分割されても)あくまで平和主義を貫く、現在の「9条」を完ぺきに貫けば、行き着くところはこうした危険性を伴っている。だからこそ現実には自衛隊が存在し、アメリカ軍が日本には駐留している。

また、法哲学者の井上辰夫氏の言う「9条削除」論の根幹もここにあると僕は解釈している((今こそ政治を話そう)あえて、9条削除論 法哲学者・井上達夫さん)。その理念を徹底すると領土放棄につながりかねない9条をあえて捨て(あるいは更新し)、現実的な「専守防衛」論を全面に出した文言に変えるべきでは、ということだ。

軍(自衛隊)はそのため(専守防衛のため)にもち、集団的自衛権は放棄する。また、理想的平和主義は尊重するものの法には明記しない(ということを明記してもいい)。

これから世界は(東アジアも)どんどんきな臭くなる。日本国内で否定しても、陣取り合戦によるアイデンティファイを宿命的に持つ近代国家間では、あちこちでいざこざが生じるだろう。その時、我々大人は、若い人たちに、あるいは「前線」に近いかもしれない10代の人たちに向かって何を言うのか。

理想的平和主義を貫く場合、究極的には国土解体というハイリスクが控える(その危機感への反動として集団的自衛権が確立されるかもしれない)。専守防衛等を明記する場合(現実的平和主義とでも言おう)、紛争リスクに備えることはできるが現在の「9条スピリット」を失う。

たぶんこのどちらかだ(理想的平和主義か現実的平和主義)。ジョンレノンの「マザー」と「イマジン」と「ハッピークリスマス」と「パワー・トゥ・ザ・ピープル」と「女は世界の奴隷か」と「ハピネス・イズ・ア・ウォームガン」と、そして「ラブ」が大好きな僕は51才になり、仕方なく後者の現実的平和主義を選ぼうと思っている。

理想を権力に突きつけながら、現実は自衛的武装をしているというダブルバインド(日本人はダブルバインド好き)を維持することは、きな臭い時代に晒されるこれからの子どもたちには逆に申し訳ないと考える。★


※Yahoo!ニュースからの転載

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