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武田邦彦氏の功罪

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中部大学教授の武田邦彦氏が原子力発電所の事故についての情報を書いている。Twitterで検索してみると、わりと多くの人が信用しているようだ。しかしながら、武田邦彦氏の発信している情報は玉石混交である。正しいこと、参考になることも書いているが、明らかに誤っていることも書いてある。情報の可否を判断できない人は武田邦彦氏の主張を信用しないほうがいいと私は考える*1。武田氏の主張について検討してみた。具体的に引用する。

■武田邦彦 (中部大学): 原発 緊急情報(10) 政府・マスコミ、ごまかし。危ない?!
【政府のトリック】

政府やマスコミは「福島原発から20キロのところの放射線は、330マイクロシーベルトだから、胃のレントゲンの2分の1」という言い方をしている。だから安全という.

しかしそれは「そこに1時間しかいない人」の事であり、住んでいる人ではない。だから、1ヶ月あまり住む人は330ミリシーベルトを浴びることになり、子供も親も白血病になるだろう.

すぐ待避しなければならない。決して「安全な放射線」ではないのだ。

放射線量の単位についての武田氏の指摘は正しい



マスコミが、しばしば「シーベルト」と「シーベルト毎時」の区別をつけていないという指摘は有用である。「330マイクロシーベルトは胃のレントゲンの2分の1だから安全だ」という誤った説明も、もしかしたらあったのかもしれない。「シーベルト」は距離、「シーベルト毎時」は速度に相当する。330マイクロシーベルト毎時の放射線量であっても長時間暴露されたら健康に影響が出る。

政府やマスコミが「ごまかしている」という武田氏の主張は誤り



しかし、「政府とマスコミがごまかしを始めた」という武田氏の指摘は、あまりに陰謀論的である。正しい説明をしているマスコミもある。ごまかしているのではなく、単に間違えているだけであると考えるのが妥当だろう。マスコミは非専門家であるので、間違えることもある。間違いは間違いとして、淡々と指摘すればよい。むやみに疑惑や不安を煽るのはデメリットのほうが大きい。

白血病の発症は確率的な現象であることを武田氏は理解できていない



武田氏は、400ミリシーベルトぐらいの放射線を浴びると多くの人が白血病になると誤解している。放射線の暴露と白血病の発症の関係は疫学の分野になるのだが、武田氏は疫学を理解できていない(■生活習慣病が増えているにも関わらず寿命が延びているのはなぜか?■アスベストの有害性は疑わなくていいの?)。私が調べた範囲内*2では、400ミリシーベルトで、白血病の死亡は約5人/10万人年から約15人/10万人年に増える。具体的な数字で説明してみよう。

「福島原発から20キロのところの放射線330マイクロシーベルト毎時」で考えてみる。話を単純にするために、屋外での測定結果であったことや減衰や体内被曝やそのほか諸々の条件は無視する。330マイクロシーベルト毎時の暴露を約1200時間(約50日間)受けると、400ミリシーベルトとなる。仮に10万人の人が、330マイクロシーベルト毎時の暴露を50日間受け、その後安全な場所に避難したとする。その10万人の人たちの中で、将来、毎年15人の人が白血病になる。被曝しなくても5人は白血病になるので、毎年10人が余計に白血病で死亡することになる。

被曝によって、白血病だけでなく、固形癌のリスクも上がる。私が調べた範囲内では、固形癌の死亡は、約500人/10万人年が、400ミリシーベルトの被曝によって約600人/10万人年に増える。400ミリシーベルトの被曝で、10万人当たり年当たり余計に100人が固形癌によって死亡する。むろん、この計算はきわめて大雑把である。リスク評価にあたって原著を確かめていないし、報告によってリスクの大きさには幅があるだろう。しかし、大まかなところは理解できる。

武田氏による大雑把なリスク計算は評価できる



■武田邦彦 (中部大学): 原発 緊急情報(11) どこがまでが危ないか:計算結果

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