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アングル:ソニーとパナがTV黒字定着に道筋、撤退危機から脱却

[東京 19日 ロイター] - ソニー<6758.T>とパナソニック<6752.T>が、苦戦を強いられていたテレビ事業の赤字基調から脱却し、黒字定着に道筋をつけつつある。「4k」など高級テレビに集中し、販売地域やチャネルを絞り込む「局地戦」が効果を上げている。止血にメドが立った結果、事業撤退や売却の危機感は後退する一方、高級テレビを通じたブランド強化や、テレビ技術の他の事業への応用など、グループ内での存在感も高まっている。

<「10人に1人」の事業モデル>

「もうサムスンは全く意識していない」――。昨年7月に分社化したソニーのテレビ子会社、ソニービジュアルプロダクツ(東京都品川区)の高木一郎社長は、韓国勢との世界規模でのシェア競争に敗れた過去に区切りをつける。ディスプレイサーチの調査によると、サムスン電子<005930.KS>の2014年の市場シェア(金額)は27.6%で圧倒。サムスンと首位争いをしていた2008年に18%あったソニーのシェアは14年には8.2%まで縮小した。

15年3月期に同社は11年ぶりにテレビ事業の黒字化という「悲願」を達成した。12年に液晶合弁を解消、2年間かけて設計人員や海外販売会社の人員を削減し、可能な構造改革はほとんどやり終えた。「再び赤字が続いてどうしようもなくなったら(事業売却や撤退の)出口戦略を考えなければならないが、今はそうしたリスクは感じていない」と高木社長は現状への自信を示す。

高木社長がソニーのテレビ事業に求める姿は、ブラウン管テレビの時代に、独自のトリニトロン技術で業界を席巻したビジネスモデルだ。絶頂期の96年には「平面ブラウン管テレビ『ベガ』」を発売、他社製品に比べ明確な違いがあるトリニトロンテレビは、値下げ競争に巻き込まれることなく、より高い価格での販売が可能だった。

今のサムスンのように市場の3分の1を支配する力がなくても、他社より10―15%高い価格で売れればいい、というのが高木社長の基本姿勢だ。かつてソニーが業界ナンバー1を誇った時代でも、同社のシェアは10%程度だったという。

「(差別化が難しい)液晶テレビも、大画面化すれば画質の違いがはっきり表れてくる」。米国や中国で60―65インチ台のテレビ販売が本格化することはチャンスとみており、「多少高くても良いものが欲しいという顧客が10人のうち1人でもいれば、シェア10%の事業モデルは成り立つ」と同社長は語る。

<米国市場で再起>

黒字基調の継続に向け、同社はテレビの価格下落を防ぐ新たな対策を講じている。販売店の「在庫処分」で値引きが発生する悪循環を食い止めるため、ソニーは、世界各地の販売チャネルを選別して、在庫データを提供しない販売店との契約を解消。この結果、今期から世界全体の販売台数の7―8割は実売状況を週単位でモニターできるようになった。

最大のテレビ市場である米国でも、テレビを箱のまま山積みして安売りする販売店と決別した。代わって、14年度から大手量販店ベストバイで全米350店舗にソニーの専用販売コーナーを設ける「ショップ・イン・ショップ」戦略を展開。ベストバイのテレビ販売全体に占めるシェアは13年度の3%から14年度は12%まで高まった。今期からベストバイのショップ・イン・ショップは26店舗増設する。

構造改革で販売拡大に急ブレーキをかけた12年には北米市場でのシェアが5.2%まで落ち込み、「一時は縮小・撤退の選択肢も考えた」(高木社長)という状況はひとまず回避した。ディスプレイサーチの調査によると、同社の販売シェアは15年1―3月期に9.2%まで回復。大赤字が続いていた米国市場は「今期から黒字化のフェーズに入る」と同社長は明言する。

<パナソニック、世界4拠点で製販連結>

今期8年ぶりの黒字化を目指すパナソニックも、販売市場を日本、アジア、欧州、中南米の4地域に絞り込んで「局地戦」を展開する。赤字の中国・米国での販売は縮小する方針。1月末に中国山東省のテレビ工場の生産を停止し、米国向けのメキシコ・サンディエゴ工場も、他社への売却やテレビ以外の生産転用を検討している。   

それら4地域の核となるのは、日本が宇都宮工場、アジアはマレーシア工場、欧州はチェコ工場、中南米はブラジル工場・メキシコ工場。現地の意思決定で工場の稼働を調整し、価格下落に対応できる柔軟な「製販連結」をめざす。

4月1日からテレビ事業の責任者に就任した品田正弘事業部長は、ブラジル市場を立て直した実績がある。12年度まで赤字だったブラジルは13、14年度に2年連続で黒字化を成し遂げた。いまやブラジルは優良地域で、コンシューマ家電事業を統括する本間哲朗常務役員はテレビ事業の黒字化に向けて「ブラジルの成功体験をグローバルにコピーする」との戦略を描く。

ブラジルでは、大幅値引きを要求する都市部の大型販売店との関係をやめる一方で、地方都市の家電販売店との取り引きを重視した。安売りをしないで丁寧に売ってもらえる強固な関係を築き、店舗によっては、販売シェアの5割を獲得してサムスンを超えたという。

ただし「世界でサムスンに打ち勝つ発想はない」(品田事業部長)のはソニーと共通。「ターゲットにする国や地域で、したたかに生き残る」。これがパナソニックのテレビ事業部が出した結論だ。

<グループにテレビは欠かせない>

世界シェア首位のサムスン電子も1―3月期のテレビを含む家電事業が赤字に陥るなど、いまやテレビは「儲からない事業」の代表格。ソニーとパナソニックも、テレビ事業の今期の黒字計画はそれぞれ50億円と3億円に過ぎない。ソニーのテレビ事業は1円の円安で25億円の営業減益の要因で、パナソニックも円安やユーロ安、中南米の通貨安に揺れ動く不安定な状態が続いている。

さらに、スマートフォン(スマホ)やタブレットで映像コンテンツを視聴し、テレビを買わない世代も増えるという市場の構造変化も進んでいる。目先の黒字定着の目標を遂げた後、ソニー、パナソニックの日本メーカーには「テレビというハコ」を進化させ「リビングルームのディスプレイ」の姿をどう描くのか、将来像を示すことが求められている。

こうした厳しい環境の中で、ソニーはテレビ事業への取り組みを、単なる過去のビジネスの継続とはみていない。高木社長は、映画・音楽事業のコンテンツの出口とテレビを定義。さらに「テレビの再生につれてオーディオの活性化が際立ってきている」と述べ、ゲーム機「プレイステーション」との連携にも意欲を示すなど、グループの力を結集したテレビ事業の強化を目指す。

パナソニックは13年4月から、テレビ事業を白物家電の社内カンパニーに統合した。品田事業部長は「世界のほとんどの市場はテレビを通じて顧客とつながっている。冷蔵庫や洗濯機の白物家電の販売を増やすためにも欠かせない」と強調する。

同社は2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、NTT<9432.T>と映像・通信の新商品やサービスの共同開発で提携した。「テレビで培った映像の技術の蓄積をテレビだけに留めることなく、パートナーの力を借りて新しいソリューションを実現する」と津賀一宏社長はテレビ技術を転用することで新たな事業を創造することに期待を深めている。

*記事の体裁を修正して再送します。

(村井令二 編集:北松克朗)

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