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コラム 日本の財政の「真実」(第26回)財政健全化への道筋(3)

ニュースサイト「ムーラン」に連載中のコラム「日本の財政の「真実」」の最終回が掲載されました。

※本コラムは、個人としての見解であり、組織の見解を代弁するものではありません。
※バックナンバーは下記URLをご覧下さい。
http://www.geocities.jp/weathercock8926/fiscaltruth.html

日本の財政の「真実」(第26回) 財政健全化への道筋(3)

6月末頃までに公表するとされている、財政健全化計画の策定へ向けて、議論は佳境に入ってきている。

財政健全化は、(1)デフレ脱却・経済再生、(2)歳出改革、(3)歳入改革の3つの柱で進めることとされており、このうち(3)の歳入改革については、2017年4月に予定されている消費税率の10%への引上げ以外に大きな歳入増を伴う施策は現時点で議論されていない。

したがって、当面は(1)の経済再生と(2)の歳出改革の2つの柱が中心となるが、2020年度のプライマリー・バランス黒字化のために9.4兆円必要とされる収支改善について、どちらの柱でどの程度実現するかが議論の焦点となっている。

これに関連して最近、税収弾性値という言葉がしばしば言及される。税収弾性値とは、GDPの伸び(名目)に応じて、税収がどの程度伸びるかを示す数値だ。GDPが1%伸びた時に、税収も1%伸びるのであれば弾性値は1であり、税収が2%伸びるのであれば弾性値は2となる。

政府は現在、税収弾性値を公式に算定していないが、財政健全化計画の前提となる内閣府の中長期試算では、税収弾性値はおおむね1となっているとされる。だが、試算において、弾性値をもっと高くしてもよいのではないか、との議論が経済財政諮問会議の民間議員の一部からもなされているようだ。

その当否はともかく、個人的には、こうした議論にあまり本質的な意義は無いのではないかと思う。税収弾性値について高い前提を置けば、財政健全化目標の達成はより近づくことになるが、それはまさに試算上の「数字合わせ」にすぎない。

また、これまでのコラムでも述べてきたように、一時的な好景気やそれによる税収増で瞬間風速的にプライマリー・バランスの黒字化を達成しても、それだけでは中長期的な財政の健全化はできない。内外の要因で経済が失速するリスクは常に存在する。仮に高い税収弾性値で税収が伸びたとしても、そうした税収は落ちるのも速やかだろう。それがまさに、リーマンショック後に起きたことだ。

中長期的な財政健全化を実現するためには、安定的・継続的に黒字状態を維持できる財政構造を構築しておくことが必要なのである。そのためには、歳出・歳入について、構造的・制度的な改革をひとつひとつ進めていくしかない。税収弾性値の議論に目をそらされることなく、そうした本質論に意識を集中し、高いレベルの財政健全化計画の策定に注力すべきだ。

さらに言えば、高い経済成長を目指すのは当然であるし、それがなければ財政健全化も限りなく困難となるが、これを前提条件として計画に組み込むことは、常に不確実性が伴う。経済成長率は内外の様々な要因に左右されるものであり、政府が人為的にコントロールすることには限界がある。それに対し、政府がより直接的に動かしうるのは、具体的な制度であり、歳出・歳入の制度改革に重きを置くことは、計画の信頼性を高めることにつながる。

日本の財政健全化計画は、内外の市場関係者やメディアからも注目されている。高齢化の進展と、それに伴う財政の悪化は、多くの国が共有する課題であるが、日本はその両者に最も顕著な形で直面する、いわば「課題先進国」だからだ。

だからこそ、日本がこの課題を克服し、超高齢化時代にも持続可能な経済・財政・社会モデルを作り上げることができれば、まさに「課題解決先進国」となることができる。

講演等で財政の厳しい現状を解説すると、暗い気分になるという人も多いが、悲観することはない。財政を構成する給付と負担はすべて、日本人が決め、選んできたものだ。したがって、日本人は、それを変える能力を有している。問題は、その意思を持つことができるかどうかだ。それが日本の財政の「真実」に他ならない。

(以上)

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