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元少年Aと太田出版に対してどういうメッセージを出すのがいいか

読みもしないで言及しようというのだから、碌でもないコメントの一つに数えられるだろうが、多くの人がすでに沢山のコメントを出されているので、私も実物を見もしない、読みもしない、経験もしないごくごく普通の大衆の一人の立場で私の感想を書き記しておきたい。

読んでいないのだから、本当の情報はどこにもない。
あくまでブロゴスに転載されている長谷川豊氏の記事を頼りに、様々な憶測を交えて真実を解き明かそうとしている。
当然、数々の疑問が湧く。
私の疑問の第一は、この本は元少年Aが実際に書いたものか、ということだ。
元少年Aが書いたとして、本当のことをありのまま書いているのか、それとも自分の脳内だけで作り上げたフィクションが相当程度混じっている虞はないだろうか、という予断と偏見に基づいて長谷川氏の所論を読み解こうとしている。

上手に嘘を吐く証人を何度も見てきたから、証人が何を言ってもすぐには鵜呑みにはしない。
対面し、客観的証拠と照らし合わせ、様々な切り口からの反対尋問を行って、それから証人の証言の信用性を判断する。

元少年Aとはこれまで会ったことも見たこともないから、元少年Aがどの程度に通常の人たちと違っているのか違っていないのかを見極めることが出来ない。
長谷川氏の記事から元少年Aの手記に語られている内容を想像すると、普通の劇作家を遥かに凌ぐような自己観察力、事実検証力、表現力、文章力の持ち主のようだから、私たち平凡な人間の感性とは違った感性の持ち主だと思っている。

普通の人間であればどんどん忘れてしまっておかしくないような事柄を実に詳細に語ることが出来る人がいることは知っている。
すべての情報がそのままに頭の中に蓄積され、いつでも再現できる状況にあるのではないかと思うような人がいる。

元少年Aがそういう類の人間であるかどうかは、まだ分からない。
分からないが、普通の人間ではとても理解し得ないようなとてつもない酷い犯罪を実行してしまった人間の本当の心理の変化や実際の行動の軌跡、そういうものを齎してしまった環境要因などなどを分析し、解明するためにこの種の手記が貴重な資料になることは疑いがない。

しかし、問題はこの手記を書き、しかも出版するに至った本当の動機にありそうだ。

重大な猟奇的犯罪を犯すに至った犯罪者の心の闇を解き明かすために、元少年Aに何度もインタビューを重ねた第三者がインタビュー記事を再構成して手記の形で発表する、ということは十分あり得ることだろう。

しかし、元少年Aが自ら手記を書いてこれを出版社に持ち込んでいたとしたら、これは一種の自己顕示でしかないことになる。

誰が、どんな目的のために手記の出版を唆したのか、ということが問題になる。
どうも売らんかな、の商業主義が背景にありそうだ。

そういう商業主義の片棒を担ぐのは嫌だから、私はこの手記を買おうとは思わない。
しかし、何年も経って事件関係者が皆、いなくなったら、政治や司法に携わる者の一人として読まなくてはならない貴重な資料になりそうだということは否定できない。

この本の販売の取り次ぎを拒絶した書店が出てきた。
多分、現時点ではこれが出版関係者としての正しい選択の一つだろうと思う。

しかし、そうすることによってますますこの手記の市場価値が高くなってしまうことに違和感がある。
無視することによってますます無視できなくなる存在になってしまう、というパラドックスである。
私も元少年Aの手記については無視しようと思ってきたが、ついに言及することになった。

元少年Aの手記の出版に踏み切った太田出版がどうするのか、が目下の私の関心である。
太田出版も元少年Aもこの手記の出版によって得た経済的利得は一円残らずすべて被害者の遺族の方々に還元してもらいたい。

被害者の遺族全員の同意がなければこの種の出版はすべきではない、などと言うつもりはないが、せめて被害者の家族の方々の心の傷に塩を擦り込む新たな加害はしないようにしてもらいたい。

太田出版や元少年Aにはそれなりの弁護士が付いているはずである。
社会正義の実現と基本的人権の擁護を責務としている弁護士らしい対処を、是非ともお願いしておきたい。

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