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Googleフォトがもたらすデジカメの終焉 Googleフォトの価値 写真の枚数は無制限、保管期間も無期限 - 川手恭輔

5月末から6月にかけてGoogle I/OとWWDC(Worldwide Developer Conference)という、それぞれGoogleとAppleの開発者向けのイベントが相次いで行われた。

 いずれもサンフランシスコ市内中心部にあるモスコー二センターのモスコーニ・ウェストを会場にしているが、例年と違ってGoogle I/OがWWDCに先んじて開催された。モバイル・クラウド時代の2大企業がまさに火花を散らすイベントには、開発者のみならず世界中の注目が集まる。

 開発者向けとはいえ、これまで一般のスマートフォンのユーザーがすぐに利用できる新しい製品やサービスが必ず発表されてきた。今回は、それぞれGoogleフォトと、Appleミュージックが大きな話題を呼んだ。いずれも日本の産業に大きなインパクトを与えることが予想されるサービスだが、今回はGoogleフォトに注目してみた。

モバイル・クラウド時代に
ハードはソフトになる

 音楽や写真や本や映像やゲームなどのコンテンツ、そしてコミュニケーションの音声や文字などのデータがデジタル化され、それを記録し、伝達し、保管し、表示するためのメディア(媒体)が変化することによって、関連する製品やサービスの市場にイノベーションが起こる。デジタル化によって、アナログのレコードがCDになった。次にiPodが出現して、音楽はインターネットで購入してパソコンにダウンロードするものになった。そしてWalkmanに取って代わったはずのiPodが、iPhoneの「ミュージック」という形のないソフトウェアになってしまった。

 モバイル・クラウド時代の現在、人々は手の中のスマートフォンからいつでもどこからでもクラウドにアクセスして、世界中のデータやコンテンツを利用し、誰とでもコミュニケーションをすることができるようになった。スマートフォンは常に人々の側にあり、そしてインターネットに繋がっている。そのアドバンテージによって、音楽プレーヤーやカメラや電子書籍リーダーなどのハードが、スマートフォンに飲み込まれてソフトになってしまった。もはや人々は、インターネットに繋がっていないもう一つのハードを持ち歩く必要性を感じなくなった。

コンパクト・デジタルカメラは
なぜ衰退したか

 100年以上続いたフィルムの時代が、デジタルカメラの出現によって終焉を迎えたのは2002年ごろだった。レンズ交換ができないタイプの一般向けのコンパクト・デジタルカメラは、2008年の1.1億台というピークまで年間の出荷台数を急激に伸ばした。しかし、リーマンショックの後の2010年には1億台を回復したものの、その後、下降線をたどり続け、2014年には3000万台を切るところまで一気に落ち込んでしまった。

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デジタルカメラの出荷台数(百万台 CIPA資料より作成)
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 人々が写真に興味を失ったわけではない。写真を撮らなくなってしまったわけでもない。ただ、新しいコンパクト・デジタルカメラを買わなくなってしまっただけだ。新しい製品が発売されても、すでに持っているコンパクト・デジタルカメラで、もう十分だと思うようになったことが、その一つの理由と考えられる。ハードに機能を詰め込むだけで、製品の価値を上げていくことができる旬の時間が過ぎてしまったのだ。

 そして、2010年にiPhone4が発売されて、Androidのスマートフォンとともに急速にその市場を拡大していった影響が大きかったと考えるべきだろう。インターネットに繋がっているスマートフォンのカメラによって、新しい写真の楽しみ方に気づいた人々は、スマートフォンで写真を撮ることに夢中になり、デジタルカメラを使わなくなってしまった。

 それでも、デジタルカメラで写真を撮り続けている人はまだ大勢いる。プロフェッショナルやアドバンスド・アマチュアと呼ばれる写真を趣味にする人たちだけではない。観光地では、レンズ交換ができる一眼レフやミラーレスという高級カメラだけではなく、コンパクト・デジタルカメラで写真を撮っている人を多く見かける。しかし、まもなくそのような光景も見られなくなるかもしれない。

Googleフォトの価値 
写真の枚数は無制限、保管期間も無期限

 コンパクト・カメラとスマートフォンのカメラで撮ることができる写真の品質(画質)に、大きな差があると思っている人は少ないだろう。しかし、これまでスマートフォンのカメラには弱点が2つあった。

 スマートフォンの内蔵メモリーの容量には限りがある。それはアプリや音楽やダウンロードしたゲームなどで、残りが少なくなっていることが多い。旅行やイベントなどで沢山の写真を撮るとメモリーが足りなくなってしまうことがある。すでに撮ってあった大切な写真を消さなければならないかもしれない。

スマートフォンを買い換えるとき、その写真データを新しいスマートフォンに移すことはけっこう難しい。iPhoneからAndroidに変えたり、内蔵メモリーの容量の少ない機種に変えようとするとき、写真データを移すことを諦めてしまう人も多い。パソコンなどに写真をバックアップすればいいが、それができる人はそれほど多くない。

 この2つのスマートフォンのカメラの弱点を、Googleフォトは解決してしまった。iPhoneであれAndroidのスマートフォンであれ、撮った写真(や動画)はクラウド上のGoogleフォトに自動的にバックアップされる。バックアップされた写真はスマートフォンの内蔵メモリーから消してしまって構わない。機種変更してもGoogleフォトのアプリさえダウンロードしておけば、バックアップされたすべての写真にアクセスしたり共有したりすることができ、新しく撮った写真は同じ場所に追加される。写真の枚数は無制限、保管期間も無期限で、しかもなんと無料なのだ。

 クラウドのGoogleフォトと連携するiPhoneとAndroidのアプリも非常に素晴らしい。パソコンに貯まっている大量の写真も、簡単な操作でGoogleフォトに送ることができ、すべての写真をこのアプリで簡単に管理して楽しむことができる。写真は1600万画素、動画は1080pという解像度の制限があるが、気にせずに送ってしまえば自動的にその解像度にしてくれる。ほとんどのコンパクト・デジタルカメラで撮った写真は1600万画素以内だし、動画の1080pはハイビジョンテレビで十分に楽しめる画質なので、この制限は多くの人にとっては問題にはならないだろう。

ハードの復活はないのか? 
コンパクトデジタルカメラにも終焉がくる

 レンズ交換ができる一眼レフやミラーレスのデジタルカメラも、一時の勢いを失ってしまった。その原因としては、コンパクト・デジタルカメラと同様のことがあてはまるだろう。流行りのような雰囲気もあったので、それが収束したということもいえるかもしれない。しかし、プロフェッショナルやアドバンスド・アマチュアと呼ばれる写真を趣味にする人たちは、これからも使い続けて買い続けるだろうから、一定の市場を保っていくことはできると思う。

 しかし、スマートフォン・カメラの2つの弱点が解決してしまうと、人々がコンパクト・デジタルカメラを使う理由がなくなってしまう。いよいよコンパクト・デジタルカメラにも終焉のときがくるのだろうか。今となっては、そう考えるほうが正しいだろう。

 ある日、例えばSJという、人と違うことを考える人間が、壇上で右手に見慣れないハードウェアを持って「カメラを再発明する」と言う。聴衆は歓声をあげるが、実際には彼が考えていることがよく理解できてはいない。その製品が発売されても、アーリーアダプターの前のイノベーターと呼ばれる人々が面白がってチャレンジするが、市場やアナリストの賛同はなかなか得られない。3世代目の製品が発売されるころ、ようやく技術やインフラや社会環境が追いつき、人々はSJの言ったことの価値を実際に感じることができるようになる。「こういうものが欲しかったんだよ、どうして今までなかったんだろう」と。

 音楽や写真や本や映像、そして(もしかするとゲームや)コミュニケーションは、人々の生活になくてはならないものだ。技術やインフラの進歩によって、その楽しみ方(HOW)は変化していくが、人々の基本的なニーズは変わらない。目の前で実現されているHOWを忘れて、その基本的なニーズに立ち戻って考えるSJのような人がいる。そのとき利用可能な技術やインフラや社会的な制約を無視して新しいHOWを追い求め、空想のような妄想のようなアイデアを突き詰めていく。そんな取り組みの中から、人々が考えもしなかった新しい体験が生まれてきた。 

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