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米、特殊部隊による拉致、暗殺作戦を強化 直近の襲撃で情報の“宝庫”を入手 アル・カポネの経理マンと評されるアブ・サヤフを暗殺 - 佐々木伸

中東の過激派組織イスラム国がイラクに侵攻し、イラク第2の都市、モスルを占領してから10日で1年が経過した。イスラム国の壊滅を目指す米国は有志連合を主導してイラクとシリアで空爆作戦を続けているが、同組織が崩壊する兆しはなく、顧問団450人の増派を余儀なくされた。米戦略の手詰まり感が深まる中、オバマ大統領はイスラム国の指導者の暗殺と拉致という秘密作戦を激化させそうな雲行きだ。

地上部隊の大規模投入を拒否するオバマ・ドクトリン

 ブッシュ前政権が始めたアフガニスタンとイラクの2つ戦争を「愚かな戦争」と批判して大統領に上り詰めた現実主義者のオバマ氏は、カネと人命を消費する紛争地帯への大規模な地上軍派遣には応じるつもりはない。大統領は就任以来、2つの戦争からの米軍撤退をしゃにむに推進し、イラクからは2011年に撤退を完了させ、アフガニスタンからも2016年末までに撤退させるという日程を確定させている。

 大統領のこの性急な政策がイスラム国の台頭を生んだとも言えるが、地上部隊の大規模投入を拒否する戦略こそが「オバマ・ドクトリン」だ。その眼目は「最小の費用で最大の効果を挙げる」というのに尽きる。とりわけテロとの戦いでは、地上戦闘部隊を派遣する代わりに3つの戦術が柱になっている。第1に、地上戦はあくまでも地元勢力に行わせるということ。第2に、米軍は空爆による支援に徹すること、第3に無人機(ドローン)と特殊部隊による暗殺と拉致作戦の実行、である。

 この第3の秘密作戦の中で、無人機による暗殺作戦はオバマ政権になってから激増。これまでに国際テロ組織のアルカイダの幹部ら3000人以上を殺害し、現在もパキスタンとイエメンで暗殺作戦が続いている。一方の秘密に包まれている海軍のシールズや陸軍のデルタ・フォースなどの特殊部隊の作戦は2011年のアルカイダの指導者オサマ・ビンラディンの暗殺以来、分かっているだけでこれまで10件に及んでいる。

 主な作戦を挙げてみると、リビアでのナイロビ爆弾事件の主犯を拉致、ソマリア海岸でのテロ組織アルシャバーブへの攻撃、キプロス沖でのリビアのタンカー急襲、シリアの米人質救出作戦、イエメンでの米人質救出作戦、そして先月のシリア東部のイスラム国の拠点急襲などだ。

 特に直近の5月16日深夜に敢行された作戦では、イラクから武装ヘリ、ブラックホークとオスプレーに分乗した約20人のデルタ・フォースが闇に紛れて拠点を襲撃、銃撃戦の末、同組織の経理責任者アブ・サヤフを殺害、その妻のウム・サヤフをイラクに拉致し、パソコン、携帯電話など多数の証拠品を押収した。

 アブ・サヤフは「米犯罪史の中の伝説のギャング、アル・カポネの経理マンのような存在」(米紙)といわれるように、石油の密売など組織の資金活動や資金管理を担当していたチュニジア人幹部だ。拘束されてイラクで米捜査官の尋問を受けている妻も西側の人質事件に通じた人物だとされる。

情報を伝達する運び屋(クーリエ)として妻たちも重要な役割

 米紙などによると、押収した証拠品の中には、米国がこれまで知らなかった貴重な情報が含まれていた。情報の“宝庫”とも言える可能性がある。この情報により、米軍はアブ・ハミドという組織の有力幹部のシリアの潜伏先を突き止めて5月31日に空爆、殺害したことが濃厚だという。

 また指導者のアブバクル・バグダディに関しても貴重な情報を入手したもよう。バグダディの動向や、いかにして米軍の空爆を回避しているのかなどの一端も明らかになり、幹部らがバグダディと会う時には、居場所を特定されないよう携帯電話などすべての電子機器が没収される仕組みだという。またバグダディを含め組織の上級幹部の妻たちが米国の交信傍受を回避するため、情報を伝達する運び屋(クーリエ)として重要な役割を務めているようだ。

 すでに米情報当局はイスラム国の首都ラッカにある組織の中枢部門が入っている7つの建物を特定しているが、これらの建物には多数の住民が入居している上、何人かの西側の人質も収容されており、これらの人たちを巻き添えにする恐れが強いことから空爆ができないでいる。となれば、民間人の被害を最小限にするため、特殊部隊の投入も十分考えられるだろう。

 6日付の米有力紙ニューヨーク・タイムズは、闇に包まれた特殊精鋭部隊「シールズ第6班」の実態を長文の特ダネとして報じたが、世界が驚がくするような秘密作戦が近く、実施されるかもしれない。

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