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【読書感想】コントに捧げた内村光良の怒り

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 あの「立てこもった犯人のもとに、「ローライズ刑事」「でんじろう刑事」「七転び八起き刑事」などが次々と突入して殉職する」というコントは、『ドリームマッチ』のなかでも、僕がもっとも笑ったネタでした。

 あの番組は「お祭り」みたいなものだと思っていたのだけれど、それまでのさまざまな因縁を辿っていくと、二人にとっては「負けられない戦い」だったのだなあ、と、これを読んでようやくわかったのです。

「ちゃんと作ったやつはちゃんとした尺で流してくれ!」

 内村はスタッフに激怒した。

『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』のとあるコーナーで華原朋美の「I'm proud」を千秋がモノマネし、PVのパロディを作り込んだものを完成させた。ところが、実際に放送されたのは半分以下にカットされたものだった。それに対し、内村は我慢できなかった。『笑う犬』誕生からさかのぼること2年前のことだ。

『やるならやらねば!』が不幸な事故の影響で終了し、大好きなコントができない状況が続いていた。『ウリナリ!!』は「ウリナリ芸能人社交ダンス部」や「ドーバー海峡横断部」など出演者たちの挑戦をドキュメント形式で見せるのがメイン。作り込んだ企画をやりたい内村に、ストレスが溜まっていたのかもしれない。そんな中で怒りが爆発した。

 だから「5分でいいからどうしてもやらせてくれ」と内村が懇願し、放送スタートから半年経過したあたりから「ランキングキャラクターライブ」が始まったりもした。

「あれは私の意地です」と。

 また、「社交ダンス」などの挑戦ものでも内村はさほど必要ないにもかかわらず、頑なに「ブラボー内村」などといったキャラになりきりながら挑戦していた。

 僕は『ウリナリ!!』大好きで毎週観ていたのですが、あの「ブラボー内村」に対しては、「みんなあんなに真面目にやってるのに、内村さんはなんで茶化すようなことやってるのかなあ、そんなに面白いとも思えないし……」と感じていました。空気読めよ、みたいな。

 でも、この本を読んでいると、あれは「ドキュメントバラエティへの内村さんなりの抵抗」だったのですね……真面目にやってみせるのが「照れくさかった」可能性もあるけれど。

 そういう「自分のやりたいことと求められることとのギャップ」に長年向き合ってきたからこそ、内村さんは後輩芸人に「やりたいことをやらせてあげる」ことに寛容というか、積極的にそういう場をつくろうとしているのかもしれません。

 このシリーズ、著者は直接、言及している芸人さんたちに取材しているわけではありません。

 雑誌やラジオ番組、芸人さんの著書などをひたすら読み込んで、そのなかから、「本音の断片」みたいなものを拾い集めて、ひとりの芸人の「素の部分」を組み上げていっています。

 僕は最初「なんで本人に取材しないんだろう?」って思っていたんですよ。

 でも、このシリーズを読み進めていくうちに、わかったような気がしたのです。

 人って、あらためてマイクを向けられて「あなたの本音は?」と尋ねられても、あるいは、取材者に「激白!」という前提でインタビューされても、「本当の本音」って出てこない。

 自分のなかで、「それらしくつくられた本音」を喋ってしまう。

 芸人、という仕事をしている人なら、なおさらでしょう。

 だからこそ、著者は「さまざまな資料のなかに埋め込まれている、油断してつい本音を漏らしてしまった部分」を大切に拾い集め、「本人にも言葉にできなかった気持ち」をこうして綴っているのです。

 一ファンだからこそ、本人と面識がないからこそ、迫れる「人間像」みたいなものがあるのかな、と。

 これって、気が遠くなるような積み重ねだと思うのです。

 いまの著者の立場であれば、本人に直接ぶつけて言葉を引き出すことも可能なはず。

 でも、それをあえてやらないからこそ、この本は面白い。

 著者は、あえて「こちら側」から芸人さんたちをみて、憧れつづけている。

 読んでいて、思わず目頭が熱くなってしまう場面が、いくつもありました。

 なかでも、レイザーラモンの回は、すごく印象的で。

 HGがハードゲイのネタで大ブレイクし、『ハッスル』でも大活躍。何の売りもないRGは、HGにひたすら「便乗」してきて、「なんかウザいなこの人……」と僕も思っていました(すみません)。実際に、HGとRGの関係も、かなりギクシャクしていたようなのです。

 でも、RGは常に「本気」でした。

 レイザーラモンが初めて「コンビ」ではなく「タッグ」を組んだのは2007年4月の「ハッスル22」でのことだった。コンビ仲はまだギクシャクしていたが、HGもRGの「ハッスル」での奮闘を認め始めていたころだった。

 ふたりはタッグチーム「レイザーラモン」として天龍源一郎・川田利明組と対峙した。レスラーとしてレイザーラモンを認めていたふたりは容赦ない攻撃を浴びせていった。喉元へのチョップ、顔面へのキック、グーパンチ……。激しい攻撃に遂に力尽き大の字になったHGに、試合を決めようとピンフォールの体勢に入る天龍。相方のピンチに必死にカットに入ったRG。ヘタレキャラをかなぐり捨て、鬼の形相で天龍に張り手をはなつ。それで火がついた天龍は馬乗りになってRGの顔面にグーパンチを連打していった。血まみれになったRGはそれでも天龍に立ち向かっていった。

 かつて文字どおりのブーイングで罵倒の嵐を浴びていたRG。それがいつしか歓声と同義のブーイングに変わった。そしてこの日、観客から受けていたのは紛うことなき歓声だった。芸人の誇りをかけて戦い抜いたRGたちに贈られたのは賞賛と感動の嵐だった。

 いくらレイザーラモンの二人が学生プロレスでならしていたからといって、超一流レスラーに向かっていくのは怖いに決まっているし、一つ間違えば、命にかかわる。

 それでも、RGは戦い抜いた。

 出川哲朗さんの項でも、出川さんの「リアクション芸人として、身体を張って死ぬのであれば、それはそれでしょうがない」という覚悟が紹介されています。

 ほんと、バカだよなあ、と思う。

 本当に死んじゃったら、どうするんだ?

 でも、この人たちの無謀な挑戦って、どうしてこんなにカッコいいんだろう。

 『THE MAZAI 2013』の本戦に、レイザーラモンは漫才師として出場しました。

 僕は「ふーん、レイザーラモンの漫才って、珍しいな」と思い、トップバッターの彼らのネタを「あんまり面白くないな」と聞き流しました。

 でも、あの場に行き着くまでの二人の道のりをこの本で知ると、「あの場で二人で漫才をやること」そのものに大きな意味があったのですね。

 あまり知りすぎると、「背景」ばかり気になってしまい、素直に笑えなくなってしまうのではないか、と不安になってしまうくらい、芸人さんたちの「生きざま」に魅了される本でした。

 涙腺が弱い人は、人前で読まないほうが良いかもしれません。

リンク先を見る コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方 (コア新書)

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