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米国の利上げは成功するのか

 米国の中央銀行であるFRBの正常化(利上げ)に向けた地均しに関し、イエレン議長は前任のバーナンキ議長の手法をかなり意識しているように思える。2013年5月22日のバーナンキ議長(当時)の会見でテーパリング(量的緩和による債券購入額の減少)の意向が明らかとなり、その2年後の2015年の同じ5月22日にはイエレン議長が講演で年内の利上げの可能性をあらためて示した。

 そして、通常であればFRB議長は出席するはずのワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムに、2013年はバーナンキ議長が欠席したが、今年はイエレン議長が欠席となる。ジャクソンホールでのシンポジウムは、ある程度マスコミ等から遮断されての意見交換の場もあり、これには著名学者などとともに各国の中央銀行首脳が多数出席することで、金融関係者によるダボス会議のようなものになっている。

 2013年には9月のFOMCでテーパリング開始決定を市場は織り込みにいった。米10年債利回りは3%台をつけにきたが、このときはテーパリング開始は見送られた。見送りの理由としては、5月のテーパリングの示唆からの市場の動きが、テーパー・タントラム(taper tantrum)と表現されたように、かんしゃくが起きて予想を超える動揺を示していたためとの見方もあった。

 2013年のテーパリング決定に関して、当初は9月決定予定であったのを12月に先延ばししたのか。それともそもそも12月が本命であったのか。このときにバーナンキ議長を補佐していたのはイエレン副議長であり、当時の状況を良く知る立場というかその決定を下した主要メンバーであり、果たして真相はどうであったのか。

 この予行練習によって、12月の実際のテーパリング決定の際に市場はさほど「かんしゃく」は起こさず、その後も着々とテーパリングは進められ、市場は予想以上に落ち着いていた。このあたりの手綱さばきは見事と言えた。

 ところで、テーパリング開始(量的緩和解除)と正常化(ゼロ金利解除)は果たしてどちらが市場への影響は大きいのか。それは利上げだろうとの意見が多そうだが、2006年の日銀の量的緩和解除とゼロ金利解除について市場の注目は圧倒的に量的緩和解除にあった。ある意味、このふたつはセットとして認識されており、ゼロ金利解除は量的緩和解除によって既成事実化されていた。

 ところがFRBについてはテーパリングは可能でもゼロ金利解除は困難との見方も強い。このあたり、非伝統的手段への日米の市場関係者の意識の違いも大きいのであろうか。いずれにせよ、FRBの利上げはかなり慎重に行ってくることも予想され、9月のFOMCでフェイントをして、実際には12月に決定という2013年のパターンもありうるかもしれない。

 市場はこのFRBの利上げをどのように織り込みにいくのか。特に米長期金利については再び3%を見に来るであろう事が予想される。さらに正常化が達成されると、次は追加利上げも視野に入る。もちろんこれも慎重に行うであろうが、長期金利はそれを織り込んでくると予想される。

 米株式市場は過去最高値の水準まで上昇していたことの反動もあって、金利上昇に伴い、ある程度の調整は余儀なくされると思われる。過剰流動性相場の終焉も意識されるかもしれないが、まだ日銀やECBは頑張っている。それよりも相場が金融相場から業績相場に移行してくる可能性がある。金融政策が非伝統的なものから伝統的なものに戻せた事実こそ、世界の経済環境が危機以前の姿に回復していることを示すものとなろう。

 ただし注意すべきは2006年の日本の正常化への復帰後の事例である。サブプライムローン問題を発端とした危機が日本も襲って再び緩和政策に戻り、いまや異次元の緩和を日銀は実施している。歴史は繰り返されるのであろうか。

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