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「レッド・ファミリー」レビュー。家族とは役割の演技か。

キム・ギドク脚本のレッド・ファミリーをようやく見た。大変素晴らしい。南北朝鮮の問題に迫っているが、家族のドラマとしても秀逸で、家族というものの本質を見事に突いている。

何年も家族を演じる北朝鮮のスパイが次第に情が生まれ、本物の家族のように絆を強めていく。本国には本当の家族を残していて、危険で理不尽な任務も北に残した家族を守るため。しかし、スパイの擬似家族もまた、血のつながった家族と同じく重要になっていく。失態を咎められ、チーム全員が処刑されかかった時には、娘役を全員でかばおうとする。

家族という役柄を与えられ、それをこなすうちに本当の家族のようになっていく。家族を演じることで、本当の愛情を見つけ出し、虚構の関係性を突き抜けるという展開は、園子温の紀子の食卓を彷彿とさせる。

家族は血のつながりか、場を共有し役割を演じるものか。一緒に過ごした時間と血のつながりを対比して家族のあり方を問う作品は数多くあるが、この作品はその2択をせまらず、スパイ演じるニセ家族たちにとっては遠い北朝鮮に残した血のつながった家族もいまだに家族である。しかし、任務のために集まっただけの偽物の家族もまた強い絆を作り上げていく。



こうした家族のドラマに南北問題が絡み合う。北のスパイ家族は、くだらないことでしょっちゅう揉める隣の家族に、南の堕落を見るが、ある意味でその堕落は平和ボケでもある。人知れず気を張りながら生きているスパイの彼らにも次第にそれが豊かさの象徴にも見えてくる。

そして、何十年も暗殺を続けても南北問題の進展はほとんどない。無為な殺人とどこかで気づいていても、任務を絶対視する工作員たち。だが何年も南に暮らして、北の支配の無意味さに疑念を抱いている者がほとんどだ。(少なくとも本作に登場する工作員はそう)南の家族のセリフをそのまま演じるスパイ一家に、北の暗殺者たちが胸打たれてしまうのは、彼らとてそれがわかっているから。

南の一家の、夫婦の間を取り持とうとする息子のセリフ「お互いが敬いあえばうまくいく」というのは、南北の現在の関係に対しても向けられている。対話の机に座ることもままならない南北両国が分かり合える日がくるのか。その未来への想いは、スパイ一家の娘ミンジと隣家の息子チャンスの関係に託すかのように描いている。

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