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安保法制で事実上の戦争に巻き込まれる 柳澤協二さんの講演から

防衛官僚から内閣官房副長官補として安全保障・危機管理担当していた柳澤協二さんの講演を聞いた。このまま法律が成立すると、専守防衛から武器を使うことが前提になり、自衛隊が米軍と一体化する軍隊になる。憲法との矛盾が起きるだけでなく、事実上の戦争に巻き込まれると指摘されていた。




 講演は、5月28日に開催された自治体議員立憲ネットワークの総会で行われたもの。


■戦争に巻き込まれる

 柳澤さんは、今回の安保法制について、法律はわざと分かりにくいように作っているようだが、何をしたいかは新ガイドライン(日米防衛指針。18年ぶりにこの4月に改定された)を読んで狙いが分かった。中国をけん制できるものであり、日米同盟の歴史的展開と政府は評価しているが、対米追随であり、行動の一体化となるもの。自衛隊の活動範囲は世界中が対象になり、共同作戦計画を作ろうとしている。

 実際に何か起きたら、計画されていたのに断るのかといわれ、日米同盟強化のための計画なのだからやらないとは言えない。安倍総理は、アメリカの戦争に巻き込まれないと言ったが、絶対にあるとの認識だ。

 自衛隊法95条に現場判断で武器を使用できるとあるが、拡大解釈で米艦隊にも拡大して武器を使用すれば事実上の戦争になる。ミサイルが飛んできたから撃ち落とす、撃ち落とさないは東京で判断している時間はなく現場判断でしかできない。第一次世界大戦は、サラエボで皇太子が打たれたことが引き金になった。満州事変も現場判断から日中戦争になった。戦争はこうした始まるものだ。南沙諸島ではどうなるか? 米中戦争に国会承認もないうちに参加してしまうのではないだろうか。


■お気楽な考えに、安全保障に携わった人間として我慢できなくなる。

 日本がアメリカの船を守れば抑止力が高まるというのはお気楽な考え。安全保障に携わった人間として我慢できなくなる。抑止力は、やってきたら倍返しするとして攻撃しないようにする力だが、中国が恐れ入って攻撃をしなくなるのか。よほどの覚悟をもって攻撃するのだから、自衛隊の船が1、2隻いても恐れ入ることはない。挑発されてあわてて撃ってくる可能性もある。抑止が壊れたらどうなるかを考えていない。
 それに、海外で自衛隊がアメリカの船を守るとすれば、手薄になる日本本土を攻めたほうがやりやすくなる。これは子どもでも分かることだ。切れ目なく戦争に巻き込まれる。

 私は官邸では、サマワへの自衛隊派遣に携わっていたが、ロケット弾が撃ち込まれたことがあった。誰もいないコンテナだったので被害者はでなかったがこれは偶然だ。イラクの人道支援以上をやろうとしているのだから、絶対に犠牲者が出る。国会による統制が考えられているが、米軍が何をしているか分からないのに情報がでるのか。事前承認は7日以内とあるが「努力義務」でしかない。



 
■70年が証明するもの

 戦後日本は、70年戦争をしていない。集団的自衛権を使っていればベトナム戦争や湾岸戦争、イラクではどのようにしていたか。他国の戦争に関わらなかった事実の重みを知るべきだ。それに、してこなかったことは、できない、苦手、戦争がどうやるか知らないことでもある。憲法9条があったから余計な戦争に巻き込まれなかった。それを変えようとしているのは誰なのか。

 日本を守る賢い方法は、専守防衛だ。紛争を局地化し早期収拾が唯一の方策だ。集団的自衛権を行使できる力もなく、戦争を誘発する危険性が高い。敵をやっつけるのではなく、作らないことが必用。銃を使わない、殺さない「日本ブランド」を活用すべきだ。

 今必要なのはリテラシー。感情ではなく理論で考えるべきだ。今の動きは日本から出てきたもの。このままでは、米国が守ってくれるか分からないからで始まった。しかし、米国は日本がやってくれることを拒否しないが、周辺諸国ともめごとを起こさないでくれ、巻き込まないくれが本音だ。


■政府が国民を煽っている
 
 今回の背景として米国へのコンプレックスと中国をやっつけたいが勝てないとの二重のコンプレックスの積み重ねがある。米国に頼ることで思考停止になっているが、何が抑止力なのかを考えること。中国に何で勝つのか? 軍事力か? を考えるべきだ。 
 尖閣がなぜ揉めるのか。石油は出そうにないし、島をとってもすぐに攻撃される。中国は海南島から外海に出られることを考えると軍事合理性がなく名誉の問題でしかない。ナショナリズムのシンボルになっていることが問題だ。

 戦争の要素として、国民と軍隊と政府がある。戦争に必要なのは国民感情を煽ることだ。戦争をしないように沈めるのが政治の役目だが、今は煽っている。

 これからどうすべきか。自衛隊が最初の一発を打つまで時間はある。憲法改正に焦点をあつめることも必用だとされていた。


■今後の焦点 

 以上は話の概要をかいつまんだもの。内閣にいて安全保障を実際に担当していた人の言葉だけあって、的を射た内容で重いものだろう。講演の冒頭、内閣にいた人間が政府を批判するのかといわれると、変わったのは私ではなく政府だと話されていたことも印象的だった。


 集団的自衛権で自衛隊を海外に送り出せば、自衛隊のリスクはどう考えても高まる。何かのきっかけで戦闘になり、それは戦争の始まりとなる可能性も大きいのは、普通に考えれば分かることだ。これまで続けてきたことを大転換しなくてはならない理由は何か。米国から何かを言われたのか。それとも首相の想いだけなのか。
 国会での議論は続くがメディアの調査では、政府の説明不足を指摘する意見が多く、今の国会で成立を求めている意見は少数だ。選挙で勝てば何でもできるとなってしまえば、民主主義とはなにか。国会の意義さえも「存立の危機」となってしまいそうだ。そんな政治を国民は求めていたのだろうか。

 今、選挙が行わるとどのような結果になるだろう。今の状況を止めさせるには政権を変えることが必要になるが、その受け皿が見えていないのも現実だ。その意味では民主党の責任は重い。
 
 まだ成立したのではないので、今後のより注目は必要だ。その先には柳澤さんも指摘されていたが、改憲があり、国民投票も行われることになる。ここへ焦点を持ち、対策を今のうちから考えることが必要だろう。平和な日本を続けていくために。



【資料】
柳澤さんの当日資料は、自治体議員立憲ネットワークのサイトにあり

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