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インドの再生医療事情

最近、日本の再生医療の規制について聞かれることが多いので、今日は、再生医療の規制について調べていました。

日本の法律(通称:再生医療新法)については、たまたま僕がインドに来る前に、立案を担当していたのですが、2年も前のことだし、法案を国会提出した段階でインドに来たので、その後の細かいルール作りはフォローしていません。

そこで、再生医療新法のおさらいをしました。

僕が言うのも、手前味噌もはなはだしいですが、僕の後に残って細かいルールを作って、制度の施行までやってくれた人たちが、ずいぶんと分かりやすい資料を厚労省のHPに載せてくれていたので、とてもありがたかったです。

関係者の方以外は関心がないかもしれませんがご参考に(↓)

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000079192.pdf

よい資料のおかげで、日本の再生医療新法の復習はすぐに終わったのですが、なぜ、日本の再生医療の規制に、インドの人が関心を持つのか気になったので、インドの再生医療の状況や規制について調べてみました。

1 確立した医療以外の幹細胞治療は臨床研究としての手続が必要

造血幹細胞移植や角膜上皮幹細胞を使用した角膜再生医療は確立した医療とされているので治療として自由に提供可能であるが、それ以外の幹細胞治療は医療機関で患者に提供されるものも含めて、すべて臨床研究とみなされ、必要な手続をとる必要がある。

具体的には、倫理委員会の審査と保健省への登録が必要であるが、特に他家細胞移植やES細胞、iPS細胞を活用したもの(おそらくリスクの高いものという考え方)は、それに加えて、幹細胞由来製品の製造販売を目指したものでなくても薬事規制当局の臨床研究の許可が必要とのこと。

2 生命倫理上問題のある治療は禁止

クローン胚の作製、受精後14日以内のヒト胚の使用、動物由来の細胞製品を人間に用いる等の生命倫理上問題のある行為は禁止されている。

3 ガイドラインによる規制

しかしながら、これらの規制は法律ではなくガイドラインに基づいて実施されています。

その意味では本来的意味での規制ではありませんが、法規制の不存在が理由で、実際には広く医療機関で幹細胞治療が行われているそうです。

4 日本の法整備前の状況

日本が3年くらい前に、再生医療新法の制定を求められていた背景の一つは、日本がRegulatory Hevenと言われ、規制が存在しないために安全性の確立していない幹細胞を用いた医療行為が行われており、健康被害の危険が指摘されていたことにあります。

日本の場合は、ガイドラインで幹細胞を用いる臨床研究については、開始前に事実上厚生労働省の許可を求めておりました。

法律による規制ではないので、法的な義務はありませんし罰則などの強制的な措置はありませんが、研究機関はこのガイドラインにしたがって、様々な専門家のチェックを経た上で臨床研究(つまり実際に人に医療行為を行う)を行っておりました。

一方、医療機関で行う医療行為として幹細胞治療を行う場合は、このガイドラインの対象外なので、自由に行われておりましたし、実際にどのような医療行為が行われているか、把握することも難しい状況でした。規制のある海外の国で培養した細胞を持ち込んで、日本の医療機関で注入するということが行われており、一部には健康被害も報道されておりました。

こうした状況の中で、iPS細胞に代表されるこの分野の日本の優れた技術を活かして、治らない病気の新しい治療法を確立しよう、また、創薬や製品開発につなげてイノベーションを起こして経済成長を促そう、そういった目標の下に、安全性を確保しながら研究を加速させていこうという大きな方針の下に、再生医療新法は出来上がりました。

5 インドの状況

それでも、日本の場合は国民皆保険制度の下で、ほとんどの医療機関は保険診療のみを行いますし(つまり、確立された治療しか行わない)、実質的に無規制状態だったのは一部の自由診療の医療機関という状況でありました。

一方、インドの場合は国民皆保険により治療行為が定義づけられているわけではなく、かつ、医療機関の8割は民間企業がビジネスとして行っているので、実際にはかなり幅広く安全性の確立していない幹細胞治療が行われているそうです。

インドもバイオ関係はかなり力を入れており、再生医療の研究も進めていこうとしていますが、こういう技術はひとたび重大な医療事故が起これば、研究がストップしかねないので、規制の不存在に悩んでいるようです。

なにか、日本が法規制を導入する頃とよく似た状況ですね。

実際に、医療行為に規制を持ち込むのは、インドではかなりハードルがあるような気もしますが、それでも日本の経験に関心を持ってもらえるのは、とてもありがたいことです。

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