- 2015年06月01日 09:00
小泉進次郎の24時間拝見 -政界で歩くマナーの教科書と呼ばれる理由 - 常井健一
1/21 名刺交換 なぜ、毎回、同じやりとりを繰り返すか
世の注目を集め続ける小泉進次郎の魅力は、どこにあるのか。
政治の現場を取材する中で小泉進次郎に密着し彼の所作を丁寧に観察していると、ビジネスやマナーを考えるうえで学ぶところが多くあることに気づく。人の心をつかみ先を読む動き方、考え方が非常に参考になる。
政治家の世界、特に自民党という旧態依然とした組織の中では目立ちすぎると嫉妬が渦巻き、出る杭は打たれるのが常。それをうまく回避しながら、政界で圧倒的な存在感を示しているのが進次郎だ。
進次郎が最も大切にしているのは挨拶だ。与野党を問わず、また相手が議員でも秘書でも党職員であっても必ずしっかりと挨拶を交わす。これが彼の基本的な姿勢だ。立党60年目を迎えた老舗企業のような組織の自民党には、出世争いがあり損得計算が渦巻いている。その中で進次郎からは、相手の肩書に左右されず「若手と何かを成し遂げたい」「若手を励ましたい」という強固な意識が読み取れる。立場と年齢の上下が複雑に絡み合っている政治の世界で、一番目立たず立場の低い人の声を徹底してすくい上げようとする。
また、初対面の人と名刺を交換する際、一瞬立ち止まってまず相手の名前をしっかりと見る。そのうえで、「この苗字、珍しいですね。どちらの方ですか」「僕の名前(もしくは家族の名前)と似ていますね」というようなことを必ず言う。名前の話はまったく当たり障りがないし、言葉を2、3回交わすにはもってこいの話題だ。ずっと進次郎に密着していた私やメディアには毎回同じような光景を見せるわけだが、進次郎はまったく意に介さず愚直に「いつもの名刺交換」を繰り返す。初対面の相手への敬意を最大限に優先している証であろう。
2 歩くマナー本 なぜ、マナーを守る人を、人は憎めないか
進次郎は「歩くマナー本」と呼んでいいほど、礼節を重んじる政治家だ。
記者たちが話しかけると、進次郎は必ず「○○さんのその質問に対しては……」と、名前を呼びながら返事をする。記者は大抵、足元を掬ってやろうとか批判的に書いてやろうなどという思いがあるが、こういう対応をされるとやや甘くなってしまう部分がある。また、批判的な記事を書く私のようなフリーの記者であっても自ら声をかけていく。こうされると悪い気はしないのが人の情けだ。なかなかできることではないが、受け手にならず自分から先に発信することが彼のポリシーである。記者に限らないが、「自分は彼に認知されている存在」「一度会った人を忘れない」と相手に印象づけ、人を取り込む技術に長けているのだ。
こうしたことを自分に対して実行してくれる人を、人はなかなか憎むことができない。一つの言葉が持つイメージや有用性といったものを常に頭の中に入れている。
自民党青年局のメンバーから「独身議連」をつくる提案をされたときは、
「いや、マスコミを賑わせるから、少子化対策議連にしましょう」
という発想が咄嗟に出てくる。「独身」というと合コンするようなお遊び的な議連に見えるが、「少子化対策」と言い換えるだけで、前向きな若手の政治活動が浮かんでくる。
実践も怠らない。2012年2月から、東日本大震災の起こった日である毎月11日に「TEAM-11」として、被災三県を訪れている。避難生活を余儀なくされている人たちと意見を交換し、地元のリーダーと懇談する。
進次郎の動向が伝えられる際、被災地発の報道になることが多いのはこのためだ。毎月11日は東京や地元の日程をできる限り断るという。岩手県大槌町で若い男性が彼にこう言ったことがある。
「政治家は都合のいいことばかり言うので会うのも嫌なんですが、進次郎さんはしっかり被災地を回っている。だから今日、ここに来ました」
彼を密着していて思うのは、愚痴がほとんど出ないこと。唯一あったのは「寝る暇もなく、自民党は人遣いが荒いんですよ(笑)」と冗談混じりに言ったこと。ぼやきであっても笑いに変えるところにも品格が出ている。
3 身だしなみ なぜ、どんな天気でも髪形が崩れないか
進次郎は選挙応援の際、ノーネクタイで臨むことが多い。2012年の決起集会では、「(自民党が大敗した09年の)あの夏の厳しい戦いを決して忘れちゃいけない。選挙というのは厳しい戦いであって、ネクタイ締めて、かしこまって、カッコつけて勝てるような甘い世界じゃない。そして、私の原点である初めての選挙で支えてくれたみなさんに対する感謝を、忘れてはいけないという(気持ちの)表れです」と語った。
国会活動など、ネクタイを締める場面でも、ブランドのロゴが使われているような柄を選ぶことはない。ワイシャツは基本が白、ジャケットも派手な色や形は避けてダークスーツを着用しており、清潔な印象とともに、ネクタイの柄や本人の表情に視線が集まる。
右手の袖口から覗くのは、青年局特製の被災地支援グッズである、「継続は絆なり」と書かれた白のシリコンバンド。胸元のリボンで政治的主張を強調する政治家は多いが、見えなそうなところで主張するのが進次郎流。左手首にはいつも高級ブランド物ではない腕時計をつける。こうした細かいところにも、身近な存在に感じてもらうためのさりげない気遣いが感じられる。
遊説先ではどんな悪天候でも髪形が乱れることはない。恐らくジェルとスプレーの合わせ技で固めているのだろうが、鏡を覗いて気取っている素振りは舞台裏でも見せない。橋本龍太郎元総理はヘアクリームでガチガチに固めた髪形、父・純一郎元総理は奇抜な「ライオンヘア」で強烈な個性を印象付けたが、額の右半分だけを見せる進次郎氏の七三分けも清新さと毛並みの良さを印象付ける要素となりつつある。
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