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歴史認識問題で批判を続ける韓国知識人の典型的な主張 - 岡崎研究所

韓国延世大学教授の李正民が、4月16日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙で、安倍総理が米議会での演説で歴史に向き合おうとしなければ、米国の利益にならず、アジア人の心は掴めないだろう、と述べています。

 すなわち、安倍総理が4月29日米議会での演説でどのような歴史に関するメッセージを伝えるかに、アジアの関心が集まっている。

 もし安倍総理が、慰安婦問題を含む日本の戦時中の残虐行為をごまかし、無視しつづけるなら、日本が戦後民主主義、人権の先導役を果たしてきたとの主張はできなくなる。多くのアメリカ人は、中国と韓国が歴史にこだわっていることを快く思っておらず、日本が大きな過ちを起こしたのは70年前のことであり、中国など他の国の歴史にも暗い時代がある、日本は戦後責任ある大国であり、ほぼすべての重要問題で米国と立場を同じくする民主主義国、米国の同盟国として、歴史的苦痛を超える勇気を持つべきである、と言う。

 しかし、日本の優れた戦後の記録は、その前の出来事を消しはしない。安倍総理の修正主義は、オバマ大統領のアジアへの軸足移動も含めた米国の戦略的利益に反する。日本が歴史と向き合わないため、地域の和解ができず、中国に軍事力強化のための絶好の口実を与える。日本が歴史を否定することで、中国の国際的地位が上がり、中国の政策は他のアジアと調和しているとの見方が広がってしまう。

 安倍総理はアジア人の心をつかむことより、日本を「不沈空母」にする方が重要と考えるかもしれないが、もしそれが米議会での演説のメッセージであるとしたら、日本が米国のかけがいのない同盟国、中国に対する責任ある対抗勢力、そしてアジアの友人となる絶好の機会を失うことになるだろう、と述べています。

出典:李正民‘Shinzo Abe’s Duty to History’(Wall Street Journal, April 16, 2015)
URL:http://www.wsj.com/articles/shinzo-abes-duty-to-history-1429203445

* * *

 韓国知識人の典型的な議論です。しかし、筆者の李正民は、元安全保障大使を務めた人物であり、安全保障分野では日本にも知人が多く、対中政策、対北朝鮮政策では、日米韓の3国連携を重視している人の一人です。その彼が、ここまで歴史認識に触れなければならない韓国の現在の世論の雰囲気というのは、ゆゆしき状況でしょう。

 この論評が、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載されたということは、米国、米国人に対する意見として書かれたものであることを示しています。

 日本が歴史と向き合わないために中国に軍事力強化のための絶好の口実を与えているとか、日本が歴史を否定していることで中国の国際的地位が上がっているという議論は、説得力に欠けるものです。

 論説は、安倍総理が歴史認識を改めない限り、アジア人の心はつかめず、日本はアジアの友人になれないと言っていますが、それは事実に反します。タイをはじめ、東南アジアや南アジアの国々は、太平洋戦争に関し、日本が侵略を認め、お詫びをすべきだとは言っていません。歴史認識はすぐれて中韓2国の問題です。

 1つ言えることは、今後どのような形で歴史認識問題に言及するにしても、それで中国と韓国の批判が収まるとは思われないことです。20年前、戦後50年の年に、村山談話が「植民地支配と侵略」に触れ、「心からのお詫び」を述べたにもかかわらず、中国と韓国は、それで歴史認識問題に区切りがつけられたとは思いませんでした。歴史認識問題に関する両国の批判は、今後も続くと覚悟しなくてはならないでしょう。

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