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  • 橘玲
  • 2010年12月06日 10:00

日本人はなぜ自殺するのか?

日本では、毎年3万人を超えるひとたちが自らの意思で死を選んでいる。これは、「市場原理主義」による改革により、日本人の安心が奪われてしまったからだと説明される。

だが国際的な自殺率の比較を見ると、日本の自殺率(10万人あたりの自殺者数)が24.4なのに対し、市場原理主義の国アメリカの自殺率は11.0、イギリスにいたっては6.4だ。この統計を素直に解釈すれば、日本をアングロサクソン型の市場原理主義国家にすれば、年間1〜2万人のひとが自殺から救われることになる。市場原理と改革を声高に批判するひとたちは、これをどのように説明するのだろう。

年功序列と終身雇用は真面目に働く労働者にやさしいシステムで、それを「市場原理主義者」が成果主義で破壊したために、追い詰められたサラリーマンが自殺していく、というのが定番のストーリーだ。でもかつて、サラリーマンはほんとうにそんなに幸せだったのだろうか。

『残酷な世界~』で紹介したけれど、「日本人はむかしから会社が大嫌いだった」というデータをアップしておきたい。

1980年代後半(バブル最盛期)の日米比較調査で、原典はLincoln, James R., & Arne L. Kalleberg [1990] Culture, Control, and Commitment-A study of work organization and work attitudes in the United States and Japan, Cambridge Univ. Press。小池和男 『日本産業社会の「神話」』 記載のデータから作成した(図版をクリックで拡大)。

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断っておくが、これは日本とアメリカを間違えて逆にしてしまったわけではない。

80年代の日本経済は絶好調で、それに対してアメリカは、製造業を中心に大規模なリストラが相次いでいた(日米貿易摩擦がもっともはげしくなった時期だ)。それでも日本(厚木地区)とアメリカ(インディアナポリス地区)の製造業に従事する労働者を比較すると、アメリカ人の方がはるかに仕事に愛着とプライドを持ち、会社に忠誠心を抱き、自分の選択が正しかったと思っていたのだ。

私たちは、年功序列と終身雇用の日本的システムこそがひとびとを幸福にすると信じて疑わないが、実はサラリーマンはむかしから会社が大嫌いだった。それでもガマンして働いていたのは、高度成長でパイが拡大していたからだ。

バブルが崩壊し、景気が落ち込むと、厚化粧が剥げ落ちるように、日本的な会社(雇用制度)の醜悪な面があらわになった。大卒内定率が50%を下回るのも、労働者の3人に1人が非正規雇用になるのも、中高年のサラリーマンにうつ病が急増するのも、日本人がアメリカ人の2倍(イギリス人の4倍)の割合で自殺するのも、すべて、機能不全を起こした日本的システムから生じる同根の現象なのだ。

空理空論では現実は変わらない。日本的雇用を礼賛するひとたちは、この事実を直視したほうがいい。

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