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「丁寧な説明」には程遠い、安保法制議論

集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案が国会で審議入りした。政府が説明するように日本を巡る安保環境が変化しているのは事実だが、法案成立に対する国民の理解は進んでいない。法案の複雑さに加え、政府の姿勢が「丁寧な説明」とは程遠いからだ。

 26日の衆院本会議で審議入りする安保関連法案は2本。一つが自衛隊法など10本の法律を改正する「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する案」(通称:平和安全法制整備法案)、もう一つが新たに制定する「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案」(国際平和支援法)だ。










 内容は盛りだくさん。内閣官房の説明資料によると、18ページにわたって自衛隊による在外邦人の保護措置や、米軍に対する物品役務の提供の拡充、国連PKOにおける業務の拡大、武力攻撃に関する米軍以外の外国軍隊への支援の追加などの改正内容が書かれている。

 「平和安全法制」の概要(内閣官房HP)

 http://www.cas.go.jp/jp/houan/150515/siryou1.pdf

 中国の台頭や北朝鮮の暴走、国際テロの頻発、同盟を組む米国の相対的な影響力の低下など日本を取り巻く安保環境は急激に変化している。尖閣諸島など日本の領土を守るうえで、現行の法制度に不備が生じていることや、これまでの政府が安保法制の整備から逃げてきたために課題が積もり積もっているというのも事実である。

 しかし、そもそもは米国に一方的に守ってもらうだけで、日本は何も貢献しないという「不自然さ」をどう解消するかというところから始まった議論。集団的自衛権の行使容認の是非を正面から議論すべきだったのだが、国民の目先の理解を得るために、現実の課題を引き合いに出して少しずつ改正項目を加えていった印象がぬぐえない。

 改正項目が多すぎて、国民の理解が追いつかないのは無理もない。与党内でも改正内容を完璧に把握している議員は多くない。政府・与党があらかじめ審議時間の上限を設定しようとしているというのも誠実さに欠ける。

 さらに首をかしげるのは政権内の「答弁不一致」だ。首相は「一般に武力の行使や戦闘行為を目的として海外の領土や領海に入っていくことはない」と説明しているが、中谷元・防衛相は「武力行使の新3要件に合致すれば他国の領域内で敵基地を攻撃することも可能」という。一般国民には答弁が食い違っているようにしか見えないだろう。

 首相も「一般に」というように、この法律が成立すれば他国の領域内での武力行使が可能となる。具体的にどういう事態が想定され、どういう場合に武力行使が可能となるのか。法律内では政府の暴走にどう歯止めをきかせているのか。徹底的に議論し、必要があれば修正していくことが求められる。

 「戦争に巻き込まれる」といった左巻きの論調にはくみしないが、多くの国民は実際に漠然とした不安を抱いている。安保法制の整備に前向きなフジ・産経グループの世論調査でさえ、今国会での成立には反対が57.7%で、賛成は31.7%にとどまった。

 「大阪都構想」を巡り、橋下徹大阪市長は連日街角でタウンミーティングを開き、住民への説明に明け暮れた。内容の是非はともかく、そのくらいの覚悟が与党には必要だ。

 国民に対する正面からの丁寧な説明から逃げれば、安倍首相が目指す「戦後体制の矛盾」解消はますます遠ざかる。急がば廻れ、である。

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