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「『何が自分にとって幸せで楽しいのか』を明確にしておけ」~声優・大塚明夫インタビュー~

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スティーブン・セガール、ニコラス・ケイジ、デンゼル・ワシントンといった洋画吹き替えや、ゲーム『メタルギア』シリーズのソリッド・スネーク役などの代表作で知られるベテラン声優・大塚明夫氏。大塚氏が、3月に上梓した著書「声優魂 (星海社新書)」は、自身のキャリアや声優業界の事情を紐解きながら、「声優志望者」に対して「甘い考えを捨てろ」「覚悟を持て」と強烈なメッセージを送る内容だ。



30年以上のキャリアの中で、「自身のやりたいこと」を追い求めてきた大塚氏の口から語られる言葉は、声優ならずとも日々働くすべての人々にとって胸に響くものとなっている。大塚氏に「声優」という職業や自らの仕事に対する思いについて聞いた。

重要なのは、「声優になった後どうするか」

―大塚さんの著書「声優魂」の帯には「声優だけはやめておけ」という言葉が刻まれていますし、声優志望者を打ちのめすような記述が全編にわたって出てきます。こうした本を書こうと思ったきっかけを教えてください。

大塚明夫氏(以下、大塚):まさかあんなセンセーショナルな帯になるなんて、僕はちっとも予想してなかったんです。「声優だけはやめておけ」なんて大きく書いてあって、僕は一体何を批判しているんだろうって(笑)。実際は、「こういう現状だからよく考えてね」という話をしているだけで、そこまで強くは言ってないんですけどね。

直接のきっかけは出版社の方からお声掛けいただいたことです。本を書くのは本業ではないのですが、事務所やマネージャーと相談してゴーサインが出たので、「じゃあやります」となったわけです。

―「勘違いした若者が声優を目指して苦労する…」ということに対する違和感は以前から持っていたのでしょうか。

大塚:自分がどうだったかというと、わりと安易にというか、ものの弾みで、この業界に踏み込んだわけですから、「最近の若者は…」みたいなことを言うつもりはないんですよ。ただ自分の場合、この世界に足を踏み入れたときに、「普通の生産社会にもう一度戻るというのはおそらく無理だな」という覚悟は決めていたんです。

別に時代が悪いと言うつもりはないのですが、最近になって、専門学校に入って資格みたいなものをとれば、声優になれると考える人が増えていると思います。「声優になる」ということ自体はいいとして、重要なのは「なった後どうするか」ということです。「ただ、声優になれればいい」というのであれば、もう少し考えた方がいいよと。

若い人は人生の分母が短いせいか、声優になった後のことまでなかなか考えられない。だから、「後で後悔することがないといいなぁ」というおせっかい心から書いた本なんです。 アイドル声優みたいな方を見て、きっと皆さん「自分も」と考えるのでしょう。ですが、アイドルという売れ方であれば、テレビに出ている普通のアイドルの人たちと同じように、何十年かすれば、「今はどうしている?」という話になります。それは声優の世界もまったく同じですから、例えば実家を継ぐといったような先の展望がある人なら目指してもいいですが、そうじゃない人にはリスクが高いですよね。

―後輩に向けて、「やめておけ」とおっしゃる大塚さんが考える職業としての声優の魅力はどんなものでしょうか?

大塚:僕は「声優」と呼ばれていますし、そう呼ばれること自体には何の問題もないと思っています。

ただ僕としては、「俳優の仕事の一つとして、声の仕事もありますよ」という認識なんですね。だから、僕は演劇も非常に好きなんです。やはり目の前でお客さんが喜んだり、感動したりしてくれたりと、オーディエンスの反応がダイレクトに伝わってきますから。オーディエンスと演じ手が、その空間を共有できるということが、僕は楽しいんです。だから僕自身は、「自分は声優」だという風にはくくってないんですよ。

―俳優の仕事の一部として「声だけ演じる仕事=声優」があるということですね。

大塚:そうですね。なので、お笑い芸人でもタレントさんでも、誰がやっても「そういう声の仕事をしました」というだけで、問われるべきは見た人が納得するかどうかだけだと思います。

「演じる」ということにおいては、どの分野でも通底することですし、核になる部分は同じです。それが声優の場合は、台詞、声しか使えないというだけの話です。舞台などになれば、だんだん可動範囲が広くなるわけですが、それはそういう部門というだけであって、演じるという中の一つのスタイルでしかありません。

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