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「ビューティフル・マインド」よ永遠なれ

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後に「ナッシュ均衡」と呼ばれる「均衡点」を世に広めた論文は:
Nash, J. (1951). Non-cooperative games. Annals of mathematics, 286-295.
ナッシュ交渉解についてはこちらの論文:
Nash Jr, J. F. (1950). The bargaining problem. Econometrica: Journal of the Econometric Society, 155-162.
被引用件数は、(2015年5月26日現在で)前者が7162件、後者が7016件です。引用数で両者が競っているというのは少し意外でしたが、おそらく「ナッシュ均衡」があまりにポピュラーな共通言語となってしまったので、原典が引用されることがほとんどない、という事情が影響しているのでしょう。ナッシュ交渉解を用いた論文も確かに少なくありませんが、実際にはナッシュ均衡の方がケタ違いに多いはずです。


ナッシュ・プログラムに関する論文はこちら:
Nash, J. (1953). Two-person cooperative games. Econometrica: Journal of the Econometric Society, 128-140.
論文の中で分析された同時手番の交渉ゲームも、ナッシュの名前をとって「Nash Demand Game」(ナッシュ需要ゲーム)と広く呼ばれています。


不動点定理を使った均衡存在の証明というテクニックは、その後のArrow=Debreuに代表される市場均衡の存在証明で大活躍します。写像の構成方法に関して、特にブラウワーの不動点定理を適用するための(対応ではなく)関数の作り方などは、かなり直接的な影響を与えているのではないかと推察されます。その割には、この時代の数理経済学者がナッシュ氏の貢献に対して適切な評価を与えている気がしない、のはゲーム理論家の被害妄想なのでしょうか…(きちんとした理論のバックグラウンドを持つ経済思想系の方にぜひ検証して頂きたいトピックです)


ナッシュの博士論文(オリジナル原稿の複写)はこちらに収録されています:
リンク先を見るナッシュは何を見たか―純粋数学とゲーム理論 [単行本]丸善出版2014-09






書き上げたらバッチリ宣伝させて頂きます!(笑)


【注】
「どんな有限ゲーム(プレイヤーの数と戦略の数がそれぞれ有限個のゲーム)にも、混合戦略まで含めればナッシュ均衡が必ず一つは存在する」ことを証明した定理。日本人数学者である角谷静夫氏の業績「角谷の不動点定理」を使って、次のわずか1ページの論文の中で証明が与えられています:
Nash, J. F. (1950). Equilibrium points in n-person games. Proceedings of the national academy of sciences, 36(1), 48-49.
今回改めて論文を眺めていたら、最後の脚注に
「The author is indebted to Dr. David Gale for suggesting the use of Kakutani's theorem to simplify the proof」
という記述を発見!Gale氏はナッシュ氏の大学院時代の学友で、マッチング理論の金字塔である「Gale=Shapleyメカニズム」でも有名です。まさかナッシュに角谷の不動点定理を使うことを提案していたとは、Gale恐るべし…
ちなみに、角谷氏にブラウワーの不動点定理の拡張を提案したのは、ゲーム理論の生みの親であるフォン・ノイマン氏で、角谷氏がプリンストン高等研究所滞在中のことだったようです。ナッシュ、Galeらが活躍した20世紀半ばのプリンストンはまさにゲーム理論研究の中心地で、その様子については日経ジビネスオンラインのこちらの記事でも触れさせて頂きました。ぜひご参照ください!

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