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橋下徹と田中康夫を通じて「二項対立」について考えたのだ

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書こうかどうか迷ったが、書こう。

橋下徹さんのことだ。

そして、それは田中康夫さんに関連することでもある。

最初に言っておく。私は政治について素人だ。だから、政治や政治家に関してブログや記事で書くことは意識的に避けてきた。

そもそも私は、領空侵犯による極論で盛り上がるネット空間が嫌いだ。例えば、私は茂木健一郎の新卒一括採用批判が素人すぎて嫌いだ。ただ、一方で彼が言えば、それなりの説得力があり、共感を得てしまうわけで。ずっと批判していたら、ついには『朝日新聞』の「耕論」コーナーに載ってしまったのだが。

一方、発言しないことも罪である。今の日本において、怖いのは、規制であり、中でも自主規制だ。前述したような、領空侵犯による極論でさえも、それは「意見」であることは尊重したい。いくら論拠が軽薄で論理が破綻していても、意見は意見である。それに対する反対意見、反応で本質は見えてくる。

何度も読み返している新聞の一文がある(私にはそういう記事が、いくつもあり、世の中で何かが起こったときにこっそり読み返している)。その一つが、フランス文学者海老坂武先生の日本経済新聞2011年5月28日付夕刊でのコメントだ。ちなみに、学生時代は必修のフランス語の講義でお世話になった。厳しい先生だった。「会話」をしたことはない。ただ、彼の本や、メディアでの発言は講義よりよっぽど面白く。一方的に勝手に尊敬していた。

サルトルに関するインタビューなのだが・・・。ちょうど2011年で原発事故の後であり。このコメントが好きだ。
「僕はサルトル派ですから立場を明らかにしたいと常に考えています。そこで情けないと思い、悔やんでいるのは今回の福島原発事故です。僕は原発反対だったのに、過去に原発を批判する文章を一つも書かず、発言も全くしてこなかった。原発に関しての知識も勉強も不十分だから発言しなかったのですが、それは間違いだった気がします。問題を専門家だけに委ねていてはだめだ。素人は素人なりにここまでは言えるということがあると思うんです」
何度も読み返している一文である。

というわけで、前置きが長くなったが、橋下徹さんについて書こう。そして、その話は田中康夫さんに関する話から始まる。

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ちょうどあの投票の2日前、私は田中康夫さんの一般社団法人ワイアンドティ研究所の設立記念パーティーに参加していた。堀潤さんや中島信也さんもゲスト参加してのトークはいちいち面白かった。来場者も満員で、盛り上がりを見せていた。

今の田中康夫さんの考えは、私にいちいちフィットする。特にフィットするのは、「二項対立を超えて」というメッセージである。

戦略や体制の選択を装った、安易な二項対立が私は嫌いだ。そもそも、人間も、国家さえも動的なのだ。二項対立というのは、傲慢な自己肯定だとも言える。市場原理主義、ワンフレーズ・ポリティクス、文脈の切り取り、レッテル貼り。改革を装った改悪。「◯◯と☓☓なら、◯◯しかない」的な論調。

二項対立を装った、傲慢な自己肯定が跳梁跋扈していないか。

リンク先を見る33年後のなんとなく、クリスタル [単行本]
田中 康夫
河出書房新社
2014-11-26


この「いまクリ」こと、『33年後のなんとなく、クリスタル』は、単に「33年間の日本の変化」なんていうテンプレで読み解くべきではなくて、謎かけが沢山含まれた本であり、今の日本に対する庶民の悶々とした想いや、憂いに満ちた本だと私は解釈している。「微力だけど、無力ではない」私はこの言葉が好きだ。

衆議院選の直前に発売されたのも絶妙なタイミングだった。

そして、大阪都構想の投票2日前に、このイベントが開かれ、田中康夫さんが講演していたことにも、何かの縁を感じる。

大阪都構想についての住民投票が行われ、僅差で反対票が上回ったこと、そして、橋下徹さんが政治家引退を表明したこと。これは周知の通りである。

ただ、これを「反対が賛成を上回った」とだけ解釈していいのだろうか。

そして、橋下徹さんのスピーチや政治家引退を「潔い」とだけ評価して良いのだろうか。

何か、こう悶々としてしまう。

まず、私は「政治家」としての橋下徹さんは、「二項対立」で成り上がり「二項対立」で失脚したのではないかと思う。

そもそも、外野から見ていると「大阪都」を「賛成」するとは、どういうことなのかがわからなかった。もちろん、長年かけて橋下氏が主張し、議論を重ねてきたことだったが、最後には賛成、反対とはどういうことかが良くわからなくなってしまった。論点はいくつもあるし。一方、それは「二項対立」を煽り続けたことで自壊したのだと言えないだろうか。

また、政治家引退というのも、潔いというが、彼が政治家生命をかけた都構想とは、そんなものなのかと思ってしまった次第だ。

私は橋下徹については、数年前から、ずるいな、卑怯だなと思いつつ、ある姿勢を貫き通してきた。それは「批判も肯定もしない」ということである。いや、私なんかの小物は相手にされないだろうが、彼は批判した人を徹底的に吊し上げ、レッテル貼りをする、論破しようとする。一方、彼を肯定していたら、数年後、相手にされなくなると思ったからだ。

ずるいよ。私は、ずるい。でも、処世術なのだ。

そして、この都構想に関する感想というのも、「あぁ、世の中は安易な二項対立を求めているのだな」と感じた次第だ。速報が出た段階で、開示されていたデータから言うとよっぽど自分でデータをとっている専門家では無い限り、「なぜ勝ったかは分からない」という答しか出せないのではないだろうか。

それを秒速で「シルバーデモクラシーが勝った」「シルバー運賃の問題がきいた」「世代間対立だ」などというのは、どうなのだろうか。「これで大阪の地盤沈下は決定的」だと断じるのも、ニヒリズムではないかと思う。ちきりんさんや、宇野常寛さんなど、気鋭の論客だと言われる人たちも、首を傾げるようなことをTwitterで発言されていたが、うーん、そういう反射神経で物事論じるの、やめようとと思った次第だ。

その点、朝日新聞の昨日の「耕論」は多様な視点、意見がフォローされていて共感したのだが(速報とは違うが)。

というわけで、二項対立の繰り返しに私はうんざりしている。特定の局面を文脈から切り離し焦点化することを意図的に、あるいは無意識的に行いつつ、物事の本質をぼかしていないか。二項対立を装った論点の中にある、多様な事象を読み解きたい。こういう傲慢な自己肯定の応酬、自己正当化を目的とした論点の羅列、違いを味わう余裕の欠如、想像力の欠如、共感の欠如に私は疲れているんだ。

ちょうど自分の中で、橋下徹がいったん終わり、田中康夫がまた始まったことや、今回の結果やそれに対する反応などがひとつの線になり、興奮した次第である。

違いの分かる男を、私は目指すよ。

というわけで、思い切り領空侵犯した政治ネタ。徒然なるままに書いてみたが、どうだったかな。素人でしょ?でも、「微力だけど無力じゃない」のだよ。

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