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半年ぶりの喫茶店で「児童虐待防止」と「絆」を考える

ひさしぶりにご近所の喫茶店に入りました。ふと、思い起こしてみると、こうしてひとりで喫茶店に入ったのは、3月11日昼の午前中に文京区の喫茶店でハヤシライスとコーヒーを飲んで以来でした。それから、児童養護施設出身の若者たちが互いに励ましあい交流するNPO法人『日向ぼっこ』で若者の取材をして、あの大地震に遭遇したのでした。世田谷区内を中心に休日は各種行事で東奔西走する日程になっているが、ひとりでゆっくPCに向き合い、思いを巡らす時間も大切なものです。

 あの地震がなければ、きっと「児童養護施設」の出口に立つ若者たちの支援活動に寄り添いながら、『週刊朝日』などで記事をかかせてもらったことと思います。それでも、世田谷区長就任によって自治体の責任者となった以上は、行政としての法や制度にもどづく「児童虐待防止策」をきちんとやることはもちろん、まだ法や制度が完備していない領域まで取り組みを進めたいと思っています。この点を、副大臣時代から小宮山洋子厚生労働大臣と話してきたので、近く国と世田谷区や関係者の間で研究会を発足させたいと思っています。

 課題となっているのは、「被虐待児」を保護した後で「親との再統合」に導いていくプロセスの中で、親に虐待を繰り返さないように変革を迫るプログラムの開発やまた実行体制です。さらには、全国の児童相談所や保健所、学校、保育園、幼稚園、病院、児童養護施設などが取り組んでいる「被虐待児の傷を癒し、立ち直りを援助する」実践例を集約し、分析して、全体像を俯瞰出来るような研究機関も必要です。こうした議論を経て、児童福祉法の改正も必要となります。現在の児童養護施設は戦後の混乱期の中で立ち上がってきた施設であり、現在のように施設によっては「9割が被虐待児」という状況になると、保護・療育といった「虐待からの育て直し機関」としての位置づけをきちんとしなければなりません。

『日向ぼっこ』は、児童養護施設出身の若者たちが、週に何回か集って夕食を食べています。これは、とても大きな力になると思いました。「食べる」という日常の中で「会話」があり「談笑」があるというシーンを持つだけで得られることがあります。私たちの社会の課題は、18歳まで児童養護施設で保護した若者たちを、18歳の3月で施設から出した後にさしたる支援の枠組みがないことでもあります。児童養護施設出身の絶対数から言えば、こうした『日向ぼっこ』のようなコミュニティは、かなり広域から参加者が集まってくることになります。そこを入口にして、自分の住んでいる地域でもコミュニティの中に参加していく回路がひらけていけばいいのだろうと思います。

これからの行政や政治にとって、必要なのは「コミュニティ再興論」だと思います。私は、永田町言語に今や大流行の「絆」という言葉を持ち込みました。これは、最初に小選挙区比例代表制度が導入された1996年10月総選挙にあたって、当時の土井たか子衆議院議長が社民党党首に戻るにあたって掲げたキャッチフレーズを「市民との絆」と私が提案し、これが短い期間でしたが全国的に発信されたことに由来しています。なぜ、絆だったのか? 都市化と消費社会の波に洗われて、伝統的な村落共同体が瓦解し、また都会でも孤立化が強まっていたことから、地域に新たなコミュニティを再興しようと考えて「絆」という言葉を使いました。もちろん、このコピー自体は「政党と市民との関係」的なニュアンスがありますが、その後に「地域コミュニティとしての絆」を考え続けました。

3・11以後に「災害に対しての対応力・復旧力」を強めることが課題となっています。私は、伝統的な地域的紐帯としての町会・自治会を尊重しつつも、新たな地域の担い手として自転車の行動範囲でゆるやかに活動するNPOの力は欠かせないと考えています。NPO法案も私が国会で働くようになってからすぐに大きな議論となり、97年に議員立法で成立しました。それから14年、NPOの力量は確実に増してきているし、行政や企業の活動が及ばない社会の各領域で大きな役割をはたしています。昔からの地域コミュニティに重なるようにして地域の担い手が重層化することで、年齢層が幅広くなり、若者たちの参加の回路も出来てきます。

これからも、「絆」という一文字をもう少し掘り下げていきたいと思います。

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