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日韓は米国に過剰な期待を寄せてはいけないのか - 岡崎研究所

米Pacific Forum CSISエグゼクティブディレクターのグロッサーマンと同上席研究員のサントロが、National Interest誌ウェブサイトに4月16日付で掲載された論説にて、日韓両国を対象に「ジュニア同盟国としての心得」について論じています。

 すなわち、「ジュニア同盟国」を安心させるのは簡単ではない。特に北東アジアで難しい。ここでは北朝鮮の核開発、中国の台頭、ワシントンの政争が米国の出方を読みにくくしていること、という諸点があるからである。米国は同盟国を守る義務の重要性を理解しているが、同盟国の期待を米国の能力・意図に見合ったものとすることは難しい。

 第一に、同盟国は米国に対し、事態の初期段階では自力で対処できるよう、防衛力・抑止力を強化する負担を負うべきである。これは、米国が同盟国を見捨てようとしていることを意味しない。同盟国の自助努力強化は、米国の同盟義務を果たす意欲を高めよう。米日韓・三国間の協力も有効である。昨年12月には三国間で防衛秘密情報共有の覚書が署名され、日本と韓国が、北朝鮮の核ミサイル開発についての情報を、米国を介して交換できるようになった。

 第二に、同盟国は核兵器に過大な期待を寄せるべきではない。米国はミサイル防衛兵器(MD)と通常兵器による攻撃システムの開発にも重点を置いているからである。核の傘は、常に作用するものではない。敵国は、「この程度であれば、米国は核兵器を使用してこない」と判断して攻撃してくる可能性がある。

 米国の核兵器は、拡大抑止の重要な一環であり、日韓とも関連政策を議論していくが、両国は、米国が如何なる場でどのように核兵器を使うかなど、詳細な情報を求めすぎる。それは過大な期待であり、米国はNATOにおいてさえ、そのようなことは明らかにしていない。

 第三に、同盟国は米国の対中政策に整合性を期待するべきではない。中国との関係については米国内部でも議論の絶えないものであり、ある時には米中関係の方が同盟国との関係より緊密であるように見える時もあろう。しかし米国は、同盟国を捨てることのコストは心得ている。中国に対しては、日本・韓国との同盟関係が重要であることをいつも言っている。同盟国は、米中関係に不明確なものがあることを受け入れるべきである。

 第四に、米国は東アジアの重要性をますます認識しつつあるが、東アジアの同盟国は米国の関心を独占できると思ってはならない。米国にとっては中東、欧州も重要である。

 最後に、同盟国は、ワシントンでの党派対立による政治麻痺がなくなると思ってはならない。米国は一貫性のないことを言うだろうし、同盟国のことについても国内の意見は分かれることがあろう。それでも、戦後の米国の同盟体制に対する党派を越えた支持は、深いものがある。

 同盟国の側は、以上のことを心得た上で、米国の同盟は防衛力、抑止力を引き続き提供しているものであることを、広く世論に納得させていかなければならない。

出典:Brad Glosserman & David Santoro,‘America's Real Challenge in Asia: The Reassurance Dilemma’(National Interest, April 16, 2015)
http://nationalinterest.org/feature/americas-real-challenge-asia-the-reassurance-dillema-12642

* * *

 本件論説は、主として日韓両国を対象に「ジュニア同盟国としての心得」を率直に説いています。日韓両国間の摩擦を諭したものではなく、同盟論としても新味があるわけではありませんが、論点はほぼ尽くした、ほぼ現実に見合ったものと言えます。

 ただ、MDも通常兵器による攻撃システムも万全には程遠い現状で、「米国はMDと通常兵器による攻撃システムの開発にも重点を置いているのだから、米国の核兵器に期待し過ぎるな」といった指摘は、少し無責任と言うべきでしょう。また、核政策についてNATOへの言及がありますが、NATOでは、フランスを除く加盟国の国防大臣が定期的に議論しています。

 米国の対中政策に整合性を期待するな、というのも、そういう実態は否定できませんが、そこまで言い切ってしまうことには疑問があります。米国の対中政策がふらつくようであれば、それは、同盟国としては安全保障政策の根本にかかわることであり、同盟国側が注文を付けて当然です。ただ、米国の対中政策は、揺らぎが小さくなって来ているように見えます。

 最近、中国のアジア・インフラ投資銀行(AIIB)設立をめぐり、日本国内では「アジア主義」及び「米国没落論」が盛り返しています。しかし、欧州諸国等が、AIIBにすんなり拠出金を払うかは疑問が残ります。また、折しも上海株式市場はバブル様相を強め、世界の株式市況はその暴落を恐れて低落している状況にあります。

 つまり「覇権は中国に移行」していませんし、中国、韓国とも、米国、EUとの提携をその外交・経済関係の主軸としているのです。「アジア主義」者の議論は、非現実的です。米国との同盟関係維持においては、本件論説が列挙する様々な問題がありますが、粘り強く着実に対処・解決していくべきです。

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