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政策コンテストとTPP騒動について

今週から来年度予算のうち一定部分を公開コンテストで各省が競い合う、いわゆる「コンテスト予算」のヒアリングが始まりました。いま第三弾が行われている事業仕分けの予算版と考えて頂ければ良いと思います。来年の予算の項目について各省の政務官や副大臣が査定側(財務副大臣や内閣府副大臣などの考査者)に説明し、予算項目の必要性について判断頂くものです。

このやり方が良いかどうかは別として、そのように実行される事が7月に決まってしまっているので、実質的な競争倍率4倍ほどとも思われるコンテストに勝ち残らねば予算が付かないので、担当政務官としては責任重大という事です。自分たち総務省のヒアリングは今週の木曜、金曜、そして次の日曜日です。自分の担当は旧・郵政省分野なので、予算項目については、情報通信、クラウド技術、ICTのグリーン化、放送・地デジ関連などの項目を中心に10数項目の説明を行ってきました。

まだ審査の過程ですから、あまり細かい中身については説明しにくい所ですが、全体的には査定側からは「カネが無い。余程の重要項目でなければ予算は新規には付かない」という事です。実に大変だという事ですが、しかし日本が生きてゆくためには技術開発で一歩抜け出す事しかありません。特に、先般ご紹介した量子通信の事なども含めたフォトニックネットワークの完成は通信部門における生命線のようなもので、米・欧に先駆けて技術基盤を確立して国際標準化競争などをリードしなければならないと思います。先端技術分野では間違いなく日本は強いです。ただ、一項目15分という短時間で財務当局にその重大性と先進性と競争力を理解して頂くのも難しい話と思います。まあしかし、愚痴を言っても当面のゲームのルールが変わるわけではありませんので、この土俵で頑張ってみようと思います。

話は変わりますが、6月の消費税率10%宣言に引き続いて、管政権が突如としてTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への加入を打ち出して、驚くべきことに僅か2週間後に迫ったAPECにおいて何らかの宣言を行うとされた事で、今週の永田町はこの話でひっくり返ったような大騒ぎとなりました。内閣府、農水省、経済産業省がそれぞれに試算なるものを持ち出してメリット・デメリットを訴えている所ですが、この話は関税だけの話ではなくて、商取引やサービス全般に関わる規制、政府調達、労働規制なども包括的に含めたマルチの国際協定ですから、当然、一つ一つの項目を洗い出して詳細に検討する必要がありますので、とても2週間程度では結論は導きだせるはずもなく、また、おそらくは外国人労働者の劇的な増加や、最も激しいやり取りが交わされている農業部門においては、わが国の食料自給率が10%程度にまで低下する事なども含まれる為、パーツの話だけではなく、明確な国家像をもって議論すべき議題です。従って、この政策に関する意思決定を行うためには「国民の信」を問うことが絶対に必要になってくると自分は思います。

ついでに申し上げれば、もちろん、包括的なTPPの中には郵政完全民営化も含まれていますので、国民の財産300兆円がどのように取り扱われる事になるか全く不透明であるという事も考えねばなりません

既に様々な観点より国民新党も自分も反対!の立場を明確に表明させて頂いておりますが、これは何がメリットで何がデメリットという話ではなくて、数字に出ないものこそが一番恐ろしいと考えるからです。どんなに政府が綺麗ごとを言っても、結果としてコメを代表とする主食部門の農業、そして畜産・酪農関係は壊滅的な打撃を受ける事になります。カロリーベースの食糧自給率の推計は14%まで下落すると農水省は算出していますが、話の前提となっている農業部門の所得補償制度にしても、財務当局側から見れば厳しい財政状況の中で、いつまでも数兆円単位の農業補償など続けられるはずがないという主張が早晩始まる事でしょう。

つまり、TPPの導入時期にハシゴを掛けたように見えても、そのハシゴはあっという間に外れてしまう運命のハシゴだと見ておくべきだと思います。従って、当面の食費が半分になるから良いとか、肉が安くなるから助かるという低次元の話では、いずれ通用しなくなるという事を想像する事だ大切だろうと思う次第です。世界の人口はいずれ90億人まで増加します。残念ながら耕作地は今以上には増えません。水資源の問題も深刻です。特定少数の国家・食物メジャー・水メジャーなど企業の思惑でどのような供給操作も可能になる中で、一億の国民を抱えた日本が生きてゆけますか?、これが本当の争点でしょう。

結論から申し上げれば、最低限の主食さえ自給出来ない国が人口爆発が一層進む近未来の世界においてどれだけ脆弱か・・・、安全保障を米国に一方的に依存し、文字通りの生殺与奪である食料も同じように米・豪などの国々に完全に従属して、その時のわが国の意思決定は独立国家足りえるのか?、否、国家としての大黒柱二本である、安全保障と食糧供給能力を失った国が国益を主張出来るほど、外交は甘くないと思います。

そして数字に出ないもので最も恐ろしいものが、国民の精神性に関する影響だと思います。天皇陛下の祭祀や、地域でのお祭り一つみても我が国の文化は2000年来、常に農業、更に言えば稲作を中心に展開されてきました。言わば国土の原風景そのものであり、国民精神の中心にあった稲作が我が国から消えてしまう、「豊葦原の瑞穂の国」から「みずほ=水田」が消滅するかもしれない怖さは数字では表現しようがありません。自動車輸出の関税10%と引き換えに出来るものでは絶対に無いと思います。

「いただきます」、「ごちそうさま」、「もったいない」、「おかげ様で」・・・日本人ならではの感謝の心や倹約・勤勉を重んずるの精神もその中から涵養され、それが今日の発展や技術の揺ぎ無い背景になってきたものだと自分は思います。つまり日本から農業、稲作が消えるという事は先人たちが努力に努力を重ねて築き上げてきた文化や歴史の消失と直結し、日本国民が有していた国際社会における強さもそこで終焉を迎える事になるという事こそが、TPP問題に潜む、最も恐ろしい事であろうと思う次第です。

いずれにしても、これだけ大きな問題を密室談合の世界で決める事は絶対にすべきではなく、現実にも出来ないと思われます。一方で、何故、こんな問題が突如浮上してきたのか背景を考える必要もあるでしょう。端的に申し上げれば、結局、我が国が自分の国を守る物理的な力が無い事に起因すると言わざるを得ません。特に9月以来の騒動となった「尖閣問題」での真の勝者は、これまでの所では圧倒的にアメリカ合衆国です。例えば、普天間問題や思いやり予算は「満額回答」が決定的、為替介入は完全に封じ込めに成功、郵政問題についても強烈な圧力の存在が推定されます。そして極めつけが、このTPPでしょう。

先日もクリントン国務長官は「尖閣に対して日米安保条約第五条が適応される」と我が国の外務大臣に繰り返しリップサービスをして、彼の大好きなSLの模型をプレゼントしています。しかし、いざ有事にこの条約が実際に発動出来るか否かについては、相当な手数が要求されるのみならず、実際に意思決定を行う事は我が国が思う以上に難しい事が合衆国側にも多数存在するだろうと考えられています。国際社会は右を見ても左を見ても怖いモノばかりです。

何故、自分たちが自主防衛の必要性を結党以来一貫して主張してきたのか?、今までも申し上げてきた通り、主権・経済・内政・・勿論、郵政や医療政策も含めて、今日の我が国に与えられた全ての政策課題は安全保障と切り離すことが出来ないと言っても過言ではありません。様々な課題をクリアしてゆく第一歩は我が国が「普通の国」になる事からしか始まりません。改めて今日の状況から御推察頂ければ幸いです。

TPPについては、失うものが多すぎる、大きすぎると思います。事は単なる円高対策ではありません。自分たちのよって立つ国家の歴史や文化、国民の精神性さえも中長期的には決定的な影響を受ける可能性がある。あらゆる問題点を洗い出して、全国民に自分の問題、子孫の問題、祖先への孝行の問題として考えて頂いた上で意思決定するしかない、そのように申し上げて今日は終わります。

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