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『大阪都構想』の審判結果に思う

大阪都構想に関する住民投票は0.8ポイント差の僅差によって「反対」が「賛成」を上回りました。それだけ、住民の皆さんも悩まれたということでしょう。改革を望む思いはあるけれども、改革の果てに良き成果を生むことができるかどうかに必ずしも確信が持てない。そういう悩ましい選択だったのだろうと想像しています。

直後の橋下代表の会見は、実に爽やかなものだったという印象です。とりわけ、「民主主義」と「報道の自由」がしっかりと機能していることを評価した発言には好感を持つことができました。氏のこの8年間の疾風怒濤のごとき政治活動には今も今後も様々な評価があり得るでしょうが、自治の仕組みの有り様について、重大な問題提起をされたことは確かであり、堅牢な既存システムに風穴を開けようとされた試みについては、率直に敬意を表したいと思います。

その上で、「都構想」そのものについては私はかねてより否定的に捉えていました。なぜならば、歴史的経緯をいうものを等閑視した人工的な自治の仕組みというものが上手く機能するという風には思えなかったからです。これは何もこの構想に限ったことではなく、いわゆる「道州制」についても、正直なところ、同様の思いを抱いています。今から約10年前の「平成の大合併」の経験からしてみても、行政単位の変更には極めて慎重な検討が必要だということを痛感してきたからでもあります。

大分県は全国でももっとも熱心に「合併」を進めてきたところです。それまで58存在していた市町村が現在は18にまで減少しています。私の選挙区で言えば、20あった市町村が現在は6市1町1村になりました。人口減少や少子高齢化に伴う行政需要の増大に対応するためには、やむをえない選択だったと思いますし、プラスの効果が出てきたことも事実ですが、一方で周辺地域がますます過疎化しているというマイナス面が出てきていることも否めません。

それでも、もともと歴史的に脈絡がある自治体どうしであれば、時間の経過とともに徐々に一体感が出てきますが、そうでない組み合わせである場合は長きに亘ってその後遺症に悩むことになります。私の選挙区で最後まで合併が成り立たなかった地域が最後に揉めたのは「もともと殿様が違う」ということが理由でした。「笑い話」のようにありますが、実は極めて深刻な住民意識の相違だったのです。

ことほどさように、地域の住民が長い年月をかけて積み重ねて築き上げてきた統治システムを変更するに当たっては、膨大なエネルギーと労力と時間を要することになります。仕組みとして合理的であるかどうか、効率的であるかどうかという判断基準だけではなくて、果たして新システムが納得するに値するものであるかどうかも、地域住民にとっては極めて重要な判断基準となるからです。

「都構想」が最終的に選択されなかったということの背景には、必ずしも「反改革」という言葉だけでは表すことのできない、地域の皆さんの複雑な思いがあったものと思われます。いずれにせよ、「存続」が決まった大阪市には今まで以上に多くの改革に取り組まなくてはならない重たい責任が生じたものと思います。

今般の結果が、今後の国政にどう影響するかという点に関心を持っていないと言えば嘘になりますが、それ以上に、この結果が今後の大阪市、大阪府の有り様にどのような影響をもたらすかということのほうを、大いに注目していきたいと思っているところです。

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