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「マネタイズの視点を持たない新聞記者は“甘い” 」~朝日新聞withnews編集部・奥山晶二郎氏インタビュー~

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ここ数年、新聞や出版社などの大手マスメディアもネット対応を迫られている。各社が、今まで紙で展開していたコンテンツをネット上で展開するだけではない、“ネットならでは”の見せ方を模索している。そうした中でも、注目を集めているのが、朝日新聞が取り組んでいるウェブサイト「withnews」だ。読者からの取材リクエストやネット上で盛り上がっている話題を深堀り取材するなどして、読者からの支持を集めている。サイト運営の中で感じた手応えや今後の方向性についてwithnews編集部の奥山晶二郎氏に話を聞いた。

本気でデジタル対応しようとしているのか、という危機感

―まず改めて、withnewsを立ち上げた経緯についてお聞かせください。

奥山晶二郎氏(以下、奥山):withnewsは1年程前からスタートしたプロジェクトです。

私は元々、いわゆる普通の新聞記者として入社し、佐賀や山口、福岡といった地域で仕事をしてきました。現在、私が所属しているのはデジタル本部デジタル編集部という部署なのですが、デジタル本部ではデジタル関連の事業全般を扱っていて、編集部はもちろん広告や販売、プロモーションなどの部門もあります。

メディアラボ(新事業開発などを行う朝日新聞社内の研究部署)と似ている部分もあるのですが、ラボが編集とは関係ないことも含めて新しいことをやろうとしているのに対して、デジタル本部では原則朝日新聞デジタルというコンテンツを土台に様々なサービスを考えるというようなイメージです。このデジタル本部の中で、「次世代の読者に対して、どのようにリーチしていくか」という問題意識があり、「ちょっと新しいことをやってみましょう」という話になったのです。

そうした中で、デジタル本部内の各部署から2~3人ずつメンバーを集めて、10人ぐらいのチームを作り議論を行いました。当初は「新しい読者にリーチできるならば、どんな方法でもいい」ということで、TEDみたいなライブイベントをやろうといった案も出ました。ただ、議論の過程で最終的に、「朝日新聞デジタルというものを土台にしていながら、その資産をあまり生かしきれてないのではないか」という部分も見えてきたのです。

ここ数年、情報産業全体がどんどん技術と共に発展していく中で、新しいニュースサービス、コミュニケーションの方法が生まれてきました。新聞社も紙を土台にしつつ、いろいろ手は出していたのですが、本格的に対応はしてなかったのかもしれないと考えたんです。単に「デジタルで発信している」と言っても、新聞の紙の記事をそのままデジタル化しているだけで、SNSの使い方や記事のフォー マット、写真のつけ方といった部分は、本当にデジタル対応にしていたんだろうか、と。

例えばキュレーションみたいなフォーマットを使った記事の見せ方や新聞紙の締切にこだわらないソーシャルメディアの使い方がもっと出来るのではないか、という議論の中で、新しいニュースサイトとして生まれたのがwithnewsです。

―編集部のメンバー構成は、どのようになっているのでしょうか?

奥山:全体で5人くらいです。編集の専従者は、僕ともう一人、経済部出身の記者がいます。もう一人、編集以外の何でもという感じで、システムの方針やバグ出しからアライランスまでまとめてやってもらっている人間が一人いて、専従という意味では3人ですね。さらに、デジタル編集部の記者が平日、日替わりで1人入っています。

他に広告やプロモーションの部分で朝日新聞デジタルと兼務という形で関わっている人間が2人ぐらいいるというイメージです。

―1日に出す記事の本数やPVなどは、立ち上げ当時からどのように変化しているのでしょうか?

奥山:現在では、1 日3~4本記事を出すようにしています。PV は、右肩上がりには来ていて2月が過去最高を記録しました。

―取材リクエスト機能や従来の新聞社らしくないTwitterまとめ記事の作成など、様々な試みをしていますが、現時点までの手応えはいかがでしょうか?

奥山:小さいながらもいくつか手応えを感じているものがあります。

例えば、「ジャポニカ学習帳から昆虫が消えた」という非常にバズった記事がありました。この記事が読まれた要因を突き詰めていくと、「虫が気持ち悪いという人がいる」ということは事実なのですが、それを気にして萎縮してしまう時代の流れというか、意識の変化をとらえたからという部分があると思うんです。そうした消費者や企業の意識の変化、時代の流れといったものを「ジャポニカ」というキャッチーなアイコンを使って記事にしたところが受けた要因じゃないかと。

「ジャポニカ学習帳」だけだと、通常の新聞の現場ではそこまで大きな話じゃないだろうみたいに思われてしまう部分もあると思うんですよね。しかし、ネットであれば、「まず読ませないといけない」ですから「ジャポニカ」というキャッチーなアイコンが大事なんです。その上で、その事象の背景みたいなところまで踏み込んで説得力のある記事が書けるかどうか、というのは従来のメディアならではなのかなと考えています。この記事は最終的に新聞紙面にも載りました。

いままでのメディアのやり方だと、重厚な内容のものを直球勝負で「大事なんだから読んで当たり前だよね」といって、投げ続けていた部分があると思うんです。そこは反省というか、今までとは違った記事の読ませ方もあるんだということを学んでいます。

また、記事の作り方についても日々学ぶものがあります。

例えば、今日は愛川欣也さんの訃報がありましたが、新聞の場合、夕刊のニュースになります。しかし、当然ですが、ネットでは事実がわかった時点で記事にするのが正解です。(※取材実施日は4月17日)

こうしたストレートニュースを、新聞の締切を意識せずに素早く出すということはやっていたのですが、withnewsを運営していく中で、一つの事象に注目が集中した際の読者の情報ニーズにもっと応えられる部分があるのではないかと気づいたんです

どういうことかというと、愛川さんくらいの大物であれば、過去のインタビュー記事や写真といった資産を私たちは持っています。それらを、こうしたタイミングで公開することは、ほとんどなかったのですが、今回は訃報にあわせて以前の重厚な内容のインタビューを一部編集した上で公開しました。

政治にも関心のある方だったので、「当時、愛川さんはこういうことを語っていました」というエピソードをちりばめた記事を公開すると、読者に「アド街の愛川さん」とは違ったイメージをもってもらうことができます。俳優としての活動や報道番組にも出演していたことなど、読者の注目が愛川さんに集まっている時に、様々な側面を届けることが出来たという意味で手応えを感じました。

以前の私たちは、紙の締切にこだわりすぎていましたし、なおかつこうした訃報であれば、とりあえずファクトを伝えればいい、というところで終わっていました。ですが、一つの出来事が発生した時というのは、表現は悪いですが、みんなニュースに飢えているわけです。そうした飢餓感に応えらえる資産を私たちが持っているのであれば、どんどん投入していった方がいいですよね。過去の記事は、記事を書く現場ではコンテンツとして生かされていません。それを生きかえらせる術というかニュースの需要のタイミングについては、非常に学ぶものがありました。

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