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100万円寄付したら50万円の和牛を贈るという島原市の「ふるさと納税」!

 突然ですが、ふるさと納税について貴方はどう考えますか?

 もう既にどこかの自治体に寄付をしてプレゼントをもらった口でしょうか?

 和牛、お米、クルマエビ、カニ、イチゴ、メロン…もらったら嬉しいと思う品物が並びます。

 自分が今住んでいる市町村とは別の市町村に寄付をすると、それとほぼ同額の金額が、還付、或いは控除されるのがふるさと納税と呼ばれる制度です。もっとも控除の限度額があるので、要注意ですが。

 でも、それだけだったらこれほど注目されることはなかったでしょう。今言ったように美味しいものなどがもらえるから皆注目するのです。

 細かいことを言えば2000円分は自分の持ち出しとなるのですが…それを無視すると、自分が納める住民税の納入先を実質的に換える作業をするだけでそのような美味しいプレゼントがもらえるのですから、利用しない手はないと多くの人が思うのです。

 では、そのふるさと納税はいいことばかりなのでしょうか?

 ということで、本日は、私が住んでいる島原市のケースを例にとってふるさと納税について考えてみたいと思います。

 次をクリックしてみて下さい。

 「島原市 ふるさと寄付金」

 ジャーン! 

 凄いですね。な、な、なんと和牛日本一に輝く「長崎和牛」が50万円分ももらえるのだとか。

画像を見る


 しかし…

 100万円以上寄付してくれ、と。

 どう思います?

 100万円島原市に寄付して、そのお返しに50万円分の牛肉がもらえるとなれば、差し引き50万円の損?

 そう思いますか? それとも、寄付には本来対価は伴わないので、50万円分の和牛をもらえて丸々得をしたと考えますか?

 でも、普通だと、幾ら50万円分の和牛が欲しくても100万円を寄付する人は殆どいないでしょう。

 しかし、もし、貴方が納めている住民税の納入先を実質的に変更するだけで、その和牛が貴方のものになるというのであれば、どうでしょうか?

 99%の人は、それなら納入先の市町村を変更しようと思うのではないでしょうか? だって、納めるべき税金は殆ど変らないのですから。つまり、それだけの作業で丸々和牛がもらえるのです。

 細かいことを言えば、島原市に100万円寄付すると、これまでに支払った(或いは今後支払う)所得税と住民税が100万円マイナス2千円で、99万8千円安くなる、と。

 50万円分の和牛なんて一人で食べることはできない?

 テーイ! 

 今、問題はそんなことではないのです。

 そんな旨い話になにか罠がないかということなのです。

 でも、和牛が大好きな人や、その他美味しいものをもらうことばかりに気を取られていると、この島原市の誘いについ乗ってしまうかもしれません。

 だって、そうでしょう? 住民税の納入先を実質的に島原市に変えるような作業をしただけで50万円もする和牛がもらえるのですから。

 でも、慌ててはいけません。

 いえ、島原市が詐欺を働く恐れがあるというのではありません。彼らは嘘はつかないでしょう。あなたが100万円寄付すれば、必ず50万円分の和牛を贈ってくれるでしょう。

 しかし、問題は、果たして貴方は100万円に違い額の税の還付や控除を必ず受けられるかということなのです。

 もし、貴方が大変な財産を保有しているものの、所得がなかったとしたら、或いは所得はあるものの普通の人と同じ程度であったとしたら?

 所得がなかったら、そもそも所得税の還付を受けることはない訳ですし、住民税の控除もなし。従って、損得勘定で考えると、そもそも島原市に100万円寄付をする意味がないのです。

 つまり、もし貴方に相当な所得がなければ、この島原市の話は全然意味がないのです。

 では、仮に、貴方が例えば1千万円か2千万円程度の所得があったとして、この話に乗るのは得になるのでしょうか?

 1千万円も所得があれば、相当の税金を納めていることが予想されるのですが、その程度ではこの大変魅力的に見える島原市の提案もむしろあなたに損をさせる結果に終わるでしょう。

 というのも、住民税の控除額は住民税の2割が限度となっているからで、少なくても所得が年間数千万円かそれ以上ないと、この話はペイしないでしょう。

 でも、逆に言えば、大金持ちにとってはこのふるさと納税は大変に美味しい制度だと言うことができるのです。何故ならば、この島原市のケースで分かるように、単に島原市に寄付をしただけ(といっても、実質的には寄付はせず100万円分の納税先を変更しただけ)で50万円もする牛肉をほぼただ同然で手にすることができるからです。

 もちろん、中所得者は中所得者なりにこのふるさと納税の制度によってそれなりのプレゼントを手にすることができます。

 でも、全く所得税や住民税を支払っていない貧しい人には何の恩恵も与えないこともまた事実です。

 それに、最近、このふるさと納税制度が加熱して、還元率が上がってきていることにも注意をする必要があります。還元率とは、寄付金の額に対するプレゼントの金額の比率です。その還元率が競争が激化して上がっているのです。例えば、これまで1万円寄付して3千円分程度のプレゼントしかもらえなかったのが、今では半分の5千円程度のプレゼントがもらえるのが当たり前になり…さらには7千円分や、8千円分のプレゼントさえもらえることある、と。しかも、そのプレゼントが商品券などの現金化が可能なものまで現れてきている始末です。

 そうしたプレゼントをもらえる人にとっては何とありがたいことか!

 しかし、それで本当に地方の財政制度が潤うかと言えば…一部では潤っているところもあるでしょうが、全体としてみればむしろ首を絞める結果に終わるでしょう。何故ならば、ふるさと納税のお蔭で収入が増えるところもあれば、その反面住民税の減額に見舞われるところもあるからです。それに還元率が上がれば、幾ら見た目の寄付金収入が増えても、ネットの収入はそれほど増えないでしょうし、場合によっては減る可能性もあるのです。

 でも、このふるさと納税の不合理さに気が付いている志の高い首長がいたとしても、他の自治体のせいで自分のところの住民税収入の減少に見舞われることになれば、参加したくなくても参加せざるを得ないのがこのふるさと納税「競争」なのです。

 おかしいでしょう?

 ところで、100万円寄付してくれたら50万円分の和牛をプレゼントするなんて公言している訳ですから、実態は100万円の寄付ではなく50万円の寄付に過ぎないことは誰でも分かる筈。それを税務当局が100万円の寄付があったとの前提で所得税の還付をするのですから、これはおかしいのではないのでしょうか?

 最後に、今年の初めにサッカーの大久保嘉人選手が島原市に200万円寄付したことが新聞で報道され、そのときは何と太っ腹な人なのかと思ったのですが…ふるさと納税の制度を利用したに過ぎないのであれば、真の意味の寄付と考えるべきではないのかもしれません。

 実質、寄付でもないのに寄付と呼んでいるふるさと寄付の制度はおかしいと思わざるにはいられません。

 もっとも大久保選手のことを悪くいうつもりは毛頭ないので誤解しないで下さい。

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