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【再掲】リサイクル預託金制度についての考察

お陰様で、毎週土曜日の常盤平けやき通り清掃活動も定着して、ご参加頂ける方が増えてきました。そこで、以前ブログに掲載した「リサイクル預託金制度」についての小論を再掲します。

活動中に高齢の方から「もう少し元気だったら手伝うんだけどね」というお声をかけて頂くと、純粋に「がんばろう!」という気持ちが湧いてくると同時に、もっと高齢化が進んだら今のようなきれいな日本が維持できるのか、疑問を感じてしまいます。

今は何とかなるけど、将来の仕組みを考えなければ大変なことになる。

そんな思いで記した内容です。お時間のある方は是非ご一読下さい。

がんのさとし拝

背景

 日本は世界的に見て「清潔さ」に定評(※1)がある。これらの評価は、ごみ収集といった公的サービスだけでなく、様々な団体の清掃ボランティア活動や、日本人のモラルに支えられている側面が高い。
 しかしながら、日常的な清掃活動の担い手である町会・自治会等が、少子高齢化や加入率低下により人手不足(※2)に陥ることが予想される。
 本稿は、このような状況を踏まえ、モラル・日本人の美徳だけに頼るのではなく、経済学的な原理に基づく清掃活動の維持を目的として、リサイクル預託金制度(いわゆる「デポジット」)の導入を提案する。

リサイクル預託金制度(デポジット)について

 リサイクル預託金制度(デポジット)は、1971年アメリカオレゴン州の「Container deposit legislation(※3)」が法制度として最初に制定されたものとされている。日本では容器包装リサイクル法(※4)が制定されているものの、第4条に「事業者及び消費者の責務」として消費者の排出抑制の努力義務が記述されているだけである。
 リサイクル預託金制度(デポジット)の経済学的な理論研究は多数存在しているが、経済産業省によるメリット・デメリット(※5)は次の通りである。

【メリット】
・回収の実効性が向上する。
・循環資源の回収ルートが確立されてリサイクルの促進が期待できる。
・適正処分の確保が必要な製品について、確実に回収し、適正処分に回すことが可能になる。
・他者が発生させた廃棄物に関しても回収のインセンティブがあり、廃棄物の散乱が防止される。
・導入の効果が回収率に結びついており、効果の推定(モニタリング)が容易である。
・達成目標の変更は、回収率の目標を変えるだけでよく、容易である。

【デメリット】
・デポジットの適正な額の設定が難しい(額が低いと効果が低く、高いと経済的に非効率になる恐れがある)。
・デポジットの管理・払戻のための新たなインフラを構築せねばならず、導入に際してインフラ構築のコストがかかる。
・制度の設計や実施段階で、誰がどのような役割を担うべきかという役割分担について検討が必要である。
・既存の回収活動・制度との調整が必要である。
・返還されなかったデポジットを誰が取得するかの問題が生じる。返還されなかったデポジットが企業の収益になる場合、企業にとって消費者からの回収を減らしてデポジット分を収益にするという潜在的なインセンティブが生じる。
・地域的に導入した場合、割高となり売上が減少したり、換金目当ての廃棄物の持ち込みが増加するのではという懸念がある。

 これらメリット・デメリットを比較検討すると、1.預託金の金額設定、2.インフラ・オペレーション構築、3.デポジット取り扱いの公平性の3つに集約できると考えられる。

1.預託金の金額設定
 預託金の金額設定は、賃金水準をベースに考えれば経済学的な合理性は得られる。例えば、空缶のデポジットが100円で、空缶を店に持ち込み返金を受けるために要する時間が5分とした場合、時給1200円に相当する。この金額が高いか安いかは、それぞれの人の状況によって変化する。時給1200円未満の人であれば、仕事をやめて空缶を拾う方が割の良い仕事となり、時給1200円以上の人であっても、オフタイムであれば追加的利益となる。
 一方、100円の飲料を購入する際に200円必要となれば、需要が減退することは明白である。価格が倍になった場合、需要がどの程度減少するかは、商品の価格弾力性によって算出することが出来る。一般に必需品は価格弾力性が小さいといわれており、価格が2倍になっても需要は半分にはならない。
 これら需給バランスを見て預託金の金額を設定すると同時に、同じ商品が一方でデポジットあり、他方でデポジットなしという事態が発生しないように、法的な枠組みが必要となる。

2.インフラ・オペレーション構築
 インフラ・オペレーション構築は、店舗販売と無店舗販売では大きく異なる。店舗であればオペレーションの工夫によりある程度対応可能であるが、自販機等販売の場合は対応の検討が必要となる。また自販機購入を店舗に持ち込むといった場合、オペレーションコストをどう負担するのかを考える必要がある。細かいオペレーションまで言及すれば、払い戻しに伴う資金繰りや、ゴミとなった容器等の持ち込みが食品衛生に与える影響なども検討しなければならない。
 しかしながらこれらの問題は、デポジットをオペレーションコストに振り向けることが出来るのであれば、回収専門の事業者の参入が期待できるため、基本的には解決可能であると考えられる。

3.預託金取り扱いの公平性
 地域限定での取り組みや、事業者による取り組みの場合、どうしても公平性に問題が生じる。地域限定の場合は他地域のゴミが持ち込まれることで公平性が損なわれ、事業者による取り組みの場合は回収されないことでデポジットが事業者の利益となる。
 これらの問題点の解決には、やはり公的機関が全国的組織で行うことが望ましい。現実的には、市区町村役場がそのオペレーションを代行することになると思われる。

 以上のように、デメリットの解消は十分に可能であるため、リサイクル預託金制度は環境保全・ゴミのポイ捨て防止に効果が期待できる。

まとめ

 以上、リサイクル預託金制度(デポジット)を考察したが、預託金の金額やインフラ・オペレーションといった経済学的な合理性と、全国で実施・同一品目には全て適用という法的な枠組みがあれば実現可能な政策である。
 政策として実施するにあたっては、まず法的な枠組みとして預託金を預かる公的機関の設立や全体のオペレーション設計が必要となる。次に各品目別の預託金の単価や個別のインフラ・オペレーションの検討が必要となる。
 今後の取り組みとして、全体設計および個別設計に分けて、より詳細な考察を行いたい。


出典
※1 トリップアドバイザー社「旅行者による世界の都市調査」より。東京は世界の主要40都市中「街の清潔さ」で第1位
   http://prtimes.jp/data/corp/1853/d1853-20121213-7418.pdf
※2 東京都市長会事務局企画政策室「地域力の向上に関する基礎調査報告書」図表2−4より。
   http://www.tokyo-mayors.jp/katsudo/pdf/houkokushyo_chiikiryoku_200803.pdf
※3 Container-deposit legislation (CDL)
   http://en.wikipedia.org/wiki/Container_deposit_legislation
※4 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律
   http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H07/H07HO112.html
※5 経済産業省「経済的手法のメリットとデメリット」
   http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g10910f3j.pdf

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