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自民党の「憲法改正マンガ」の評価 − 憲法改正をどう考えるべきか

 5月6日、フジテレビオンデマンドの報道番組「ホウドウキョク」の「あしたのコンパス」に出演し、最近自民党が作成し、配布した「ほのぼの一家の憲法改正ってなぁに?」に関連して、憲法改正について話をした。

 今回はその概要について書いてみたい。

 今回の憲法改正マンガ、ネットを中心に話題になっているようであるのでご覧になられた方もいるのではないか。四世代同居という、現在ではあまり見られなくなった家庭を舞台に、みんなで憲法改正について考えるといった内容である。(詳しくはマンガをご覧いただきたい。)

 自民党の意図としては憲法改正の必要性についてみんなで考えようということなのだろうが、端的に言って、内容が雑過ぎる。

 憲法改正の必要性を国民に訴えかけるのであれば、憲法改正の論点を体系立てて示すべきであるが、このマンガには体系性も何もない。同じく出演された早稲田大学の西原教授が「議論の立て方がおかしい」と指摘されていたが、まさにそのとおりであると思う。

 何のために憲法を改正する必要があるのかという点については、米国から、GHQから押し付けられたからということが強調されているが、それが事実であるとしても、それだけでは直ちに憲法改正が必要であるという議論には結びつかないだろう。

 憲法は国の在り方の根本となる存在であるが、その存在を決めるためには、その「国の在り方」をどうするのかということについて議論し、決めていくことが必要である。それを飛ばして憲法でどう規定するかを論じたところで、観念論にしかなるまい。

 また、憲法改正について論じようとすると、すぐに第9条の話に結びつけたがる人が多いように思う。しかし、憲法改正の論点は第9条だけではない。(なお、私の個人的な見解として、草案段階で芦田修正を受けている第9条については、現段階での修正の必要はないと考えている。もっとも、我が国を取り巻く国際情勢の変化を踏まえて、某かの手当が必要ということであれば、そうした状況の冷静な分析と方法の十分な検討の上で考えるべきであろう。少なくとも改正ありきではあるまい。)

 例えば、維新の党にとっての憲法改正は、先の衆議院選のマニフェストを見る限りにおいて、統治機構改革(一院制の実現、首相公選制、道州制の明記等)のためのものである。憲法第96条の改正についても、統治機構改正にとって手続の緩和が必要であるからと、明確な目的と方向性に基づいた主張である。(このように手段と目的を明確にしているのは、維新の党だけか?)

 翻って自民党のマンガにはそうした点は微塵も見られない。これで憲法改正を考えようと言ったところで、一般有権者は咀嚼できないか、誤解してしまうのではないか。

 個人の権利について、これを過剰に保護しているとの主張もマンガの中で展開されているが、権利主張がエスカレートしていっているのは道徳観が崩壊しているか変化していることによるものであって、その原因を憲法の規定に求めるというのは、議論として乱暴すぎる。

 司会者の速水氏から、「野党から憲法改正を有権者に訴えかける資料の作成の依頼を受けたらどうするか?」との問いかけがあった。私ならば、憲法改正の論点を体系立てて説明した上で、各論点についてのpros & cons (利点及び欠点とでも言っておこうか)を明記した上で、判断を有権者に問える内容にするだろう、と答えた。

 断っておくが、私は憲法改正に何でも反対の護憲教条主義者ではなく、必要があれば憲法は改正すべきであり、第96条の改正手続の緩和についても賛成の立場である。

 ただ、なぜ改正が必要なのか、明確な目的や方向性に紐づけられない、ややもすると、煽り立てるだけの憲法改正議論には反対である。

 憲法改正について国民・有権者に問題提起するのはいいが、自民党としてどのように体系的に考えているのか、マンガでも何でも国民・有権者向け資料を作成するのであれば、そこをしっかりと記載すべきであろう。

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