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橋下行政手腕「こんな上司に巡り合えて幸運だった」 - どうなる橋下徹

渡瀬裕哉=構成 熊谷武二=撮影

──公募区長、公募校長による不祥事が続く大阪市だが、「橋下市長唯一の成功事例」と呼ばれているのが水谷翔太天王寺区長だ。

2014年の大阪市長出直し選挙で橋下徹さんが一度辞職したとき、仮に落選することがあったらどうするのかと問われたことがあったが、「自分は現在の(区長の)任を退きます」と回答した。「忠臣は二君に仕えず」という言葉もあるが、自分が区長でいられるなら、市長が誰でもいいと考えることはできなかった。橋下市長による「市の権限を区に下ろす」という市政改革方針に共鳴したからこそ、私は公募区長となった。方針が変わってなおも職位にしがみつくことは住民に対しても不誠実だと思っていた。

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天王寺区長 
水谷翔太
(みずたに・しょうた)
1984年生まれ。NHK記者を経て、2012年区長公募に応募し合格、現職。

首長は細かいことは優秀な事務方に任せて、決裁印を押すだけで仕事は完結できる。しかし、橋下市長は様々な問題意識を持っており、教育、福祉、地域活動の支援をどうするべきか、考えている。常に10個も20個も案件を抱えることになり、1案件当たりの判断をスピーディに時間をかけずにやる必要が出てくる。つまずくときもあるだろうが、その際にやり方を変えることを朝令暮改とみなすか、臨機応変に修正したとみなすかは、受け手の価値観によるところが大きい。普段は橋下市長の方針に従って仕事しているものの、各論のところで自分に任してもらえないかと意見を具申することもある。意見具申が認められることもあるし認められないこともある。区政改革を推進するうえで、私と市長の間には十分なコミュニケーションが担保されていると思う。こんな上司に巡り合えて幸運だった。

現在、大阪市には24区長いるが、橋下市長がこれまでの大阪市の既存の事業や制度を見直す中で、公募区長も市長の補完的な役割を果たしつつ、市長が気づかない市政の課題を発見し、改善していくことが求められている。

公募区長は、当初不祥事が起きたが、私は必要な制度だと思っている。ただし、民間の優れた人材が行政に入ってもそのまま優れた人材となる保証はない。取り扱うお金が住民から強制的に徴収された税財源であることの責任を自覚し、住民から信頼される立ち居振る舞いができていて、かつ基礎的な法令、民間と行政の組織構造の違いを理解した人材でないと仕事はできない。

住民の感情と行政組織特有の論理が交ざった状況下で、慎重に仕事を進めることが重要だ。この原則を厳に受け止められるかで、不祥事を起こした公募人材とそうでない公募人材の差がついていると思う。就任してからの2年あまりの中で、立ち上がり時には自分の区のことで手一杯であったが、少しずつ全市的かつ具体的な制度改正に取り組めた。若干時間はかかったが、橋下市長任せにするのではなく、市の制度上の課題を一つ一つ解決していく改革ができつつあるのではないかと思う。

特に大阪市本庁で決めてきた福祉や教育などの基礎自治的なサービスを区に移していくことで、住民にとって建設的な形で意見を集約し、事業を展開していくという路線が強化されていることは大きな変化だ。昨年度天王寺区で純粋に使える予算が就任時の約1億8000万円から額面として約9億円、従前の五倍の予算になった。

予算をどのように使うかは区長のマネジメントに委ねられるが、天王寺区では新規事業の数と質に徹底してこだわっている。たとえば、行政区としては全国史上初の子育てバウチャーを世に出すことができた。当該年度に子どもが生まれた世帯に対して1万円分のバウチャーを配るという政策であり、従来、公費の助成が入っていないインフルエンザや水痘といった予防接種の料金補助などにも使用できる形とし、申請率も現在ほぼ100%近くで推移している。

今、公募区長に批判的な意見はあるものの、私の身の回りでは減ってきた実感もある。去年市が実施したアンケートでは、民間出身の区長としては自分が最も住民から知名度があるという結果を頂いた。住民の半分以上に私の顔と名前を知っていただいている。橋下改革を進めながら、信頼を勝ちえるような取り組みを続けていきたい。

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