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安倍総理のTPPの話が米議会でイマイチ受けなかった理由

安倍総理が米議会で演説を行いました。

 それにしても45分間にも及んだのですか? 長いですね。

 演説をする安倍総理も大変だったでしょうが…聞かされる方も大変だったと思うのです。

 で、最初に思ったことは言えば…安倍総理の英語力が落ているのではないかと。否、そうではなく、スピーチの練習が十分でなかったのかもしれません。

 はっきり言って、あれでは聴いている方も相当辛いと思います。

 まあ、英語力については、それくらいにして…

 問題は中身なのですよね。中身さえよければ、人は聞いてくれるもの。

 なんて言うと、スタンディングオベーションが何度も起こったではないかと言う人があるかもしれません。

 でも、あれは半分以上は差し引いて考えるべきでしょう。つまり、そうやって立って拍手をすることが、紳士淑女の務めだと思って行動しているだけなのです。

 オバマ大統領の一般教書演説をいつも見ている人なら分かりますよね?

 それがアメリカなのです。

 否、もとい。中身に感動している人がいなかったとはいいません。

 但し、ユーモアのセンスとかそういうことになると、どうなのでしょう? 確か、なんとかさんというスピーライターが原案を作成したのですよね。

 一番ユーモアに富むと思われるところを再現してみます。

 「私個人とアメリカとの出会いは、カリフォルニアで過ごした学生時代にさかのぼります。家に住まわせてくれたのは、キャサリン・デル・フランシア夫人、寡婦でした。亡くした夫のことを、いつもこう言いました、「ゲイリー・クーパーより男前だったのよ」と。心から信じていたようです。ギャラリーに、私の妻、昭恵がいます。彼女が日頃、私のことをどう言っているのかはあえて聞かないことにします。デル・フランシア夫人のイタリア料理は、世界一。彼女の明るさと親切は、たくさんの人をひきつけました。その人たちがなんと多様なこと。「アメリカは、すごい国だ」。驚いたものです。のち、鉄鋼メーカーに就職した私は、ニューヨーク勤務の機会を与えられました。上下関係にとらわれない実力主義。地位や長幼の差に関わりなく意見を戦わせ、正しい見方なら躊躇なく採用する。――この文化に毒されたのか、やがて政治家になったら、先輩大物議員たちに、アベは生意気だとずいぶん言われました。」


 確かにここに述べられていることは、堅苦しい話ではなく…ひょっとしたらここら辺りで笑わなければ、他に笑うところはないかもしれません。

 でも、安倍さんがホームステイをした先のおばさんの話を聞いて、どれだけの人が関心を持つでしょう? 旦那がゲイリー・クーパーに似ていた? だったら、どうなの?

 米国の文化に毒された? 安倍は生意気だと言われた? だったら、そのように振舞う一般のアメリカ人も、日本人からみたら生意気に見えるのか、と。

 恐らく、このスピーチを聞いていた多くの議員は、ここで笑うべきなのかどうかと悩んだのではないのでしょうか。

 まあ、いいでしょう。問題は中身ですから。

 TPPに関する部分を見てみることにしましょう。

 「経済規模で、世界の4割、貿易額で、世界の3分の1を占める一円に、私たちの子や、孫のために、永続的な「平和と繁栄の地域」をつくりあげていかなければなりません。日米間の交渉は、出口がすぐそこに見えています。米国と、日本のリーダーシップで、TPPを一緒に成し遂げましょう。

 実は、いまだから言えることがあります。20年以上前、GATT農業分野交渉の頃です。血気盛んな若手議員だった私は、農業の開放に反対の立場をとり、農家の代表と一緒に、国会前で抗議活動をしました。ところがこの20年、日本の農業は衰えました。農民の平均年齢は10歳上がり、いまや66歳を超えました。日本の農業は、岐路にある。生き残るには、いま、変わらなければなりません。私たちは、長年続いた農業政策の大改革に立ち向かっています。60年も変わらずにきた農業協同組合の仕組みを、抜本的に改めます。」


 この話を聞いた議員はどんなことを考えたでしょうか?

 その前に、米国が日本にTPPへの参加を求めたからといっても、議会には多くの反対論者がいることを忘れてはいけません。特に民主党にはTPPに反対する人が多いのです。ですから、そもそも安倍総理がTPPについて少しばかり積極的な姿勢を示したからといって満場から一斉に拍手が起きるなんてことはあり得ないのです。

 但し、そうではあっても、日本が米国の農産物や自動車をどんどん買うなんて話をすれば、少しはアピールするかもしれません。要するに、彼らの本音は自由貿易を推進したいということではなく、少しでも米国製品が売れればいいというだけの話なのです。

 ですから、日本が今後米国の品物を沢山購入することになると匂わせれば、米国側は歓迎する、と。

 では、上の安倍総理の話は、米国の議員にどう響いたのでしょうか?

 安倍総理は日本が今後農業制度を抜本的に改革するなんて言うが、そんなことをされると、米国の農産物と競合するようになり、米国の農産物の輸出は増えないのではないか、なんて思った議員がいたのではないのでしょうか。

 つまり、米国の輸出増につながらないようなTPPであれば、何のためのTPPか、と。

 私は、安倍総理の話は大変舌足らずだったと思うのです。

 日本が農業制度の抜本的な改革に取り組めば、日本の農家ももはや「被害者」ではなくなり、そうなると農産物の関税率を大幅に引き下げることが可能になるので米国にとっても大変有利になる、とはっきり言えばよかったと思うのです。

 まあ、いずれにしてもboring の感が強いスピーチだったのではないでしょうか。

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米国連邦議会上下両院会議における安倍総理大臣演説 「希望の同盟へ」 - スピーチの全文

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