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サンゴ群集の再生技術に取り組む 阿嘉島臨海研究所 教育・啓発活動も

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2005年生まれのウスエダミドリイシが2010年に産卵した様子=阿嘉島臨海研究所提供

 豊かなサンゴ礁で知られる慶良間諸島国立公園の中に位置する阿嘉島(沖縄県座間味村)。島の小高い山の麓に阿嘉島臨海研究所がある。2009年に世界で初めて卵から人工繁殖して成長したサンゴの産卵に成功。現在は日本財団の支援を基に、多様な種類のサンゴを人工繁殖で生産・育成するサンゴ群集再生技術の確立に取り組んでいる。

同研究所は1988年に熱帯海洋生態研究振興財団(東京、保坂三郎・理事長)の沖縄支所として設立され、サンゴ礁についての調査研究や啓発活動を行い、地元の産業育成などを通じて地域振興に寄与することを目的としている。

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山の麓にある阿嘉島臨海研究所

 研究所が産卵に成功したサンゴは、エダサンゴの一種の「ウスエダミドリイシ」の群体。2004、05年に採取した卵を研究所内で人工授精させ、小さく育ったサンゴ(幼生)がコンクリート製の基盤に着床したところで海岸に戻し、約30センチの株になるまで生育させ、4年後の09年に産卵した。

 研究主任の岩尾研二さんは毎日午前10時、阿嘉港近くの岸壁から観測機器を海中に垂らす。海水温や塩分濃度などを調査している。88年の設立以来、台風の時を除いて1日も休みなく続けている調査だ。こうしたデータの蓄積でサンゴの産卵日を予測し、人工繁殖による産卵に成功したカギの一つだ。

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海水調査する岩尾さん

 「数百種類のサンゴは浅瀬か深い場所か、波当たりに強いか弱いかなど様々な環境に適応して生息している。種によって育てる環境を変えないと繁殖させることができない」。岩尾さんは現在の取り組みを説明する。ミドリイシなどで基本的な技術は確立したので、どう応用するかだ。それも単種類でなく複数種のサンゴ群集を育成することで、生息する魚の種類が増え生物多様性を維持できるほか、台風などの災害でも生き残れる機能を持つという。

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研究所の様子

 慶良間諸島の観光資源はダイビングで、その人気を支えているのは美しいサンゴ礁だ。サンゴを守ることで観光資源が維持され、島の生活に直結する。島の人の気持ちや考え方に寄り添いながら、サンゴ礁の生育を含めたどういう未来を目指すのか話し合い、提案して島の生活に貢献することが大事だと、岩尾さんは指摘する。

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きれいな海が広がる阿嘉島

 サンゴ保全を確かにするには子供や学生らに対する啓発、教育が重要だ。岩尾さんらは地元の子どもらを対象にしたカリキュラム開発に取り組む予定だ。もう一つはサンゴ保全のどれ価値評価として、サンゴ保全のための基金や植え付け費用にどれだけ支払うことができるか、観光客らに対してアンケート調査も実施する。

 サンゴ礁の宝庫ともいえる慶良間諸島だが、1998年の海水温上昇などによる白化現象や、近年のオニヒトデの大発生により深刻な被害を受けた。最近の研究で慶良間諸島周辺は、沖縄本島へのサンゴ幼生の供給源の一つであることが明らかになってきた。慶良間海域の環境保全は、沖縄本島をはじめとする周辺のサンゴ礁にとっても重要な課題で、岩尾さんらのサンゴ群集再生の取り組みに大きな期待がかかっている。(花田攻)

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