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リビア石油施設めぐる攻防は熾烈を極めた―ガス欠に泣く庶民

 リビアの一大石油施設があるラスラヌーフ(※)を訪ねた。道すがら高射砲やロケットランチャーを積んだ4輪駆動車と頻繁にすれ違う。「正」の字を書きながら数えていたが、しまいに数えきれなくなった。破壊され惨めな姿をさらす政府軍の戦車も同様に数えきれない。ラスラヌーフが激戦地だったことを物語る光景だ――

 戦いが終わりヒッチハイクで帰郷する反政府軍の兵士が、取材車に入れ替わり立ち替わり乗った。車中、元兵士たちの口から出てくる話は「カダフィ軍」との戦闘が熾烈を極めたことを表していた。彼らがスマートフォンのカメラで撮影した動画は極小の画面ながらも息を飲む迫力だ――

 先手を打ったのはカダフィ軍だった。カダフィ軍は先ず地中海対岸のイタリア、フランスなどへの積み出し港であるブレガーの石油貯蔵施設に火を放った。反政府軍を支える欧米諸国に、自らの栄華を支えた石油を渡すまいとする独裁者のいじましさだ。

 カダフィ軍は製油所近くのモスクに向けてもロケット砲を放った。中東地域の戦闘にモスク破壊はつきものだが、傷ついた実物を目にするとやはり気持ちが荒む。

 「カダフィ軍は反政府軍よりも強かった」。ウフタさん(23歳)は戦闘を振り返る。NATOの爆撃機と対戦車ヘリ・アパッチが強力な援護射撃を続け前線を前に進めたが、一進一退だった。

 ラスラヌーフを取ったり取られたりが繰り返された。NATOと反政府軍が一大石油施設をどうにか奪取できたのは3回目の攻勢後だった。

 リビアの石油は世界有数の埋蔵量で油質も軽く良好だ。豊かなオイルマネーがカダフィの独裁を支えてきた。NATO諸国はノドから手が出るほどそれが欲しい。ラスラヌーフが激戦地となったのには、当然の理由があった。

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ガソリン不足に見舞われるリビア。GSの従業員は襲われないようにカラシニコフ銃を肩に給油する。(トリポリ―ミスラータ街道のGSで。筆者撮影)

 「全盛時の生産量まで、いかに早く回復できるかがリビア復興のカギを握る……」。評論家はしたり顔で言う。間違いではない。その通りだろう。

 世界有数の産油国のはずのリビアは今、ガソリン不足に見舞われている。上述したように製油所が戦闘でやられたからだ。ガソリンスタンドで庶民は長い列を作って待つ。車が2列縦隊で200〜300メートルも並ぶ光景は異様だ。

 半年に及ぶ内戦の末、独裁政権は滅びた。だが石油・天然ガス資源を独占するのがカダフィから欧米諸国に変わっただけに過ぎない。中東紛争の断面である。



ラスラヌーフは首都トリポリから東へ800キロ余りの地。砂漠の中に製油所、積み出し港などが広がる。

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