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アニメーターに人並みの生活を

昨晩(4/28)の、NHK「NEWS WEB」でアニメ業界の労働実態が紹介され、その待遇の過酷さが話題になっていた。
 これは今に始まったことではなくて、テレビアニメの制作が始まった当初から、つまり半世紀くらい続いていることだ。

日本アニメーター・演出協会「JAniCA」は4月29日、文化庁の委託により調査を行っていた「アニメーション制作者 実態調査報告書 2015」をホームページ上にて公開しました。報告書はPDFファイルで配布されており、誰でも閲覧可能となっています。

 調査は昨年8月から9月にかけて行われたもので、有効回答は759人。調査概要については、NHKニュースが28日の時点で「アニメ若手制作者 平均年収は110万円余」と報じ、ネットでも大きな話題になっていました。

 私は、かつてアニメーターをしていたことは、過去記事にも書いているが、あの頃から根本的なことはほとんど改善されていない。

【参考記事】
アニメーターでは食えなかった
遅きに失したアニメ界の待遇改善への試み
最低賃金とは無縁のアニメ業界
アニメーターは全部がサラリーマンじゃないよ

 過去記事に書いたことの繰り返しになるが……
 年収110万円、1カ月の労働時間が約262時間だと、時給換算では約350円になる。
 アニメ制作会社の多くは東京にあるが、東京都の最低賃金は時間額888円となっている。つまり、最低賃金よりも低い収入で働いているわけだ。
 これでは、「最低賃金法に違反するのではないか?」と思われるかもしれないが、最低賃金法は雇用されたアルバイトや社員に対して適用されるもので、個人事業主は対象外だ。
 アニメーターの多くは、会社に所属しているような形にはなっているが、正式な社員ではない。雇用されているのではなく、制作会社の1室に、机とイスと仕事を与えられる、個人事業主扱いなのである。だから、1枚描いていくらという、完全歩合制での報酬になっている。
 だから、アルバイトですらなく、最低賃金を保証する必要はなく、社会保険などの面倒を見る必要もない。動画用紙は会社から提供されるが、鉛筆や消しゴムなどの道具は自腹だ。
 正式な社員ではないが、実態としては会社に束縛されているし、会社からの命令やノルマもある。好き勝手できるわけではない。

 例外的な制作会社もあるにはある。その代表格は、ジブリだ。しかし、そのジブリも宮崎駿監督が引退してしまうと、ヒット作を作れなくなって、社員の雇用を維持していくことができるのかどうかは厳しいところだと思う。
 人並みに生活できる程度の収入を保証している制作会社は、数えるほどしかない。

 クールジャパンの代名詞にもされるアニメだが、実態は凍てついたコールドジャパンだ。
 アニメ業界を国が支援することには、メリット・デメリットがあるものの、箱物を造るのではなく、現場で働く人たちへの支援が一番必要だ。
 とりあえず、最低賃金が適用される社員としての雇用を確立することだ。
 テレビアニメの場合は、仕事の発注元はテレビ局になるが、制作費は1話あたり1000万〜1500万円程度といわれている。
 これがテレビドラマの場合は、1話あたり2000万〜5000万円程度だという。ただし、ドラマの場合には出演する俳優の人気度によって、もっと高くなる。人気俳優だと、その俳優のギャラだけで数千万になる場合がある。主演俳優が、貧乏しているって話はないからね。
 アニメの制作には、多くの工程があり、多くの人が関わっているから、少ない制作費を多くの人で分配しなくてはならないため、アニメーターの取り分も少なくなる。
 アニメが「安上がりな番組」という感覚が、テレビ業界にあることも悪しき伝統だ。

 現状のままでは、日本のアニメ業界は遠からず衰退する。
 このことはずいぶん前からいわれているが、いっこうに改善されていない。
 なんとか持ちこたえているのは、夢を持ってアニメ業界に飛びこんでいく若者が、まだいるからだ。ただ、入っていく人がいる反面、私がそうだったように食えなくて辞めていく人も多い。せっかく集まった才能を、使い捨てのように消耗している。
 これでは、未来は暗い。

 繰り返すが、せめて最低賃金が適用される雇用をしてほしい。国が支援するのなら、この部分だ。
 それだけで、彼らは普通の生活ができるようになる。
 クールジャパンが、真にクールになることを願う。

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