記事

「広告側の圧力で編集記事を削除した」、米バズフィード編集長がついに白状

 バズフィード(BuzzFeed)は、激変するニュースメディア産業で台風の目となっている。バイラルメディアとして一気に時代の寵児としてのし上がり、今やNYタイムズを凌ぐほど話題を振りまく存在になっている。 

リンク先を見る
図1 Google検索におけるBuzzFeedとNYタイムズの人気比較推移。グーグル・トレンドより。

 新しいことに果敢にチャレンジするバズフィードは、大きな成果を上げる一方で、いろんな問題も引き起こしている。今月に露見したトラブルも、オンラインメディア界に格好の議題を提供している。

 事の起こりは、4月8日の午後にバズフィードサイトに投稿された編集記事である。ダヴ(Dove)のキャンペーンが女性消費者を見下していると批判した記事である。

リンク先を見る
図2 Doveのキャンペーンを批判したBuzzFeedの編集記事(最初に掲載された削除前の記事)

 30万ビュー数に達するほど人気を集めた記事なのに、掲載されて1日も経たない9日の朝に、この記事がサイトから削除されてしまったのだ。編集長がスタッフにBuzzFeed Life欄にふさわしくない記事だからと説明して、消させたという。

 このように記事が突然消えることは、これまでもバズフィードでは何回も繰り返されてきた。でも今回は奇妙なことに、削除された記事が同じ9日の23時に、次のようにアップデートと称して本文がそのまま再掲載されたのだ(図3にスクリーンショット)。記事の削除が外部メディアにすぐに指摘され、騒ぎが大きくなったためドタバタ劇に発展した。アップデートした理由として、たまたま記者個人の意見が不適当だったので削除してしまったが、この削除行為は我々の編集基準に違反しており再掲載に至ったということである。

リンク先を見る
図3 Doveのキャンペーンを批判したBuzzFeedの編集記事(削除後に再掲載された記事)

 この記事を執筆したバズフィードの女性記者Arabelle Sicardi氏は、この問題が起こった後すぐにバズフィードを辞めた。「辞めたのはホントよ」と、彼女はツイッターでも以下のように報告している。

リンク先を見る
図4 Doveを批判したBuzzFeed編集記事のライターであるArbelle Sicardi氏が、TwitterでBuzzFeedを退社したことを報告

 この一連の流れはすっきりしない。何らかの圧力があったのではとの疑いが拭いきれない。ダヴはボディソープや石鹸などトイレタリー製品のブランド名で、あのユニリーバが保有する。ユニリーバともなると巨大な広告予算を抱えたグローバル企業だけに、バズフィードにとっても非常に大事していきたい広告主である。すでにダヴ・ブランドのネイティブ広告が、図5のようにバズフィードに掲載されているだけに尚更である。

リンク先を見る
図5 Doveブランドのネイティブ広告

 実は今回、削除から再掲載に至った編集記事には、ダヴ(Dove)の記事だけではない。続いて玩具メーカーのハスブロ(Hasbro)を批判した記事も同じ経緯をたどった。ハスブロもバズフィードのネイティブ広告の顧客であったのだ。顧客を批判した編集記事を一度取り下げたのは、広告主に配慮したためと疑われても仕方がない。

  バズフィードのネイティブ広告コンテンツは、ブランド(広告主)と密接に協同しながらバズフィードのクリエイティブ部門が制作している。編集記事と同様のバイラル性の高いコンテンツに仕上げ、それを月間ユニーク数2億人以上もカバーするリーチ力を生かして配信するので、ネイティブ広告主の満足度は高いとされている。そのせいか既に顧客として有力な企業(ブランド)が図6のように目白押しである。昨年は1億ドル以上も売り上げた。実は、バズフィードは売上のほとんどをネイティブ広告に依存している。そのネイティブ広告では、ブランドが望むメッセージ性の高いコンテンツを発信しているだけに、ビジネス担当者(ネイティブ広告担当者)としてはブランドを批判するような編集記事を掲載してもらいたくない。その強い声に応えたのか、ともかく広告主ブランドを批判した記事がいったん取り消されたのだ。

リンク先を見る
図6 BuzzFeedのネイティブ広告を出稿しているブランド例

 ところが、削除だけでうやむやに済ませられなくなってきたのだ。昨年の初めにバズフィードは、過去記事4000本以上も断りもなく削除したことがあった。多くの非難を浴びたが、編集基準に合わなかったとの理由だけで再掲載しないままで終わらせていた。当初から同サイトではバイラル性の高いリスト記事が目玉の一つとなっており、そこではネット上のコンテンツをアグリゲートしてまとめ上げることも多く、カット&ペーストに頼った盗用と見なされる記事も多く指摘されるようになった。2012年1月にバズフィードに入り編集長に就任したBen Smith氏は、巨大になってきた同サイトを社会的にもっと認められるサイトに育て上げたかった。収益源としてのネイティブ広告事業を大きく伸ばそうとしている時だけに広告主からも信頼されるサイトにする必要があった。そこで、主に2012年以前の過去記事で、盗用や誤りのあるとみられる記事4000本を突然サイトから取り払ったのである。

 でも真っ当なメディアサイトなら、いったん掲載した記事を削除するには、根拠のある理由を提示すべきだろう。Ben Smith編集長も、そのこともあって新しい編集規約を今年(2015年)1月に定めた。彼としてはバズフィードを、単なるバイラルwebコンテンツのクリエイターやアグリゲーターではなくて、デジタル・ニュース・メディアに変身させようと、編集体制を整えかったのだ。その新しい規約では、記事の内容に関する理由だけで決して削除しないとも明記した。だから、今回のダヴやハスブロを批判した記事を衝動的に誤って削除してしまったが、編集規約に従ってすぐに再掲載したということである。その時、広告サイトからの圧力で削除したのではないと編集長は言い張った。また両広告主から編集記事に対する抗議もなかったと言う。

 その後、外部からの追及が激しくなる中で、投稿記事の内部調査を実施した。その調査結果のメモが4月18日にスタッフに送られたのだが、それによると、次のような各種理由で1,112本の記事がさらに削除したことを明らかにした。今度は、各削除理由の説明も加えられていた。

Editorial decisions (100本)
Advertiser complaints (3本)
Copyright issues (65本)
Technical error (263本)
Duplicated already published work (122本)
Community user deletions (140本)
On-edit staff deletions and unidentified bylines (377本)

 その中で驚くべき事実を白状したのだ。新たに3本の編集記事を”Advertiser complaints”と言う理由で削除したことを明らかにしたのだ。否定していたはずの広告側の圧力があったのだ。ブランド(広告主)と協働しているビジネスサイドのバズフィード社員からの抗議を編集側が受け入れ、記事を削除したと説明したのである。

 広告側の圧力で削除した編集記事は、先の2本とは違って、新たな3本である。マイクロソフト、ペプシ、それにAxe ボディスプレー(ユニリーバの製品)のそれぞれが提供している、製品や広告を批判した記事である。いずれも有力なバズフィードのネイティブ広告主である。

 このように明らかにせざるえなくなったのは、外部のメディアからの圧力があったからである。特に厳しく責めたのがGawker Mediaであった。同メディアの創立者でもあるNick Denton氏はオンラインメディアの暴れん坊としても有名だが、バズフィードを無益なメディアとこき下ろし続けている。多くのユーザーを獲得するためには、なんでもOKで邁進する姿勢に我慢ならないようである。ブログネットワークで成功し新興ニュースメディアの雄として君臨してきたGawkerも、今ではバズフィードの台頭で影が薄くなてきたことに対する、やっかみがそうさせているのかもしれない。ともかくGawkerは4000本の過去記事削減問題を始め次々と徹底した追跡記事を書きまくった。最近では編集長のBen Smith氏にCEOのJonah Perettiを加えた単独インタビュー記事で責めたてた。さらに、Do You Work at BuzzFeed?と題する記事で、バズフィードの現スタッフや元スタッフに情報提供を募るなど、攻撃がエスカレートしている。

リンク先を見る
図7 BuzzFeed 対 Gawker。新たな編集規約の下に高成長を続けるBuzzFeedのロゴに対して、メディアとしての信頼性を失い堕落しているとGawkerはこき下ろす。

 こうした大量の記事削減行為は、揺籃期のYouTubeを思い出す。ユーザーからのネット上動画の無断投稿で人気が急上昇していったが、マネタイズの時期を迎えると、一転して無断投稿動画の削除に動いたのと似ている。また編集の独立性についても、ユーザーは必ずしも厳しく要求していないようである。ネイティブ広告に対するユーザー調査を見ても、NYタイムズのような高級な伝統メディアに対しては編集の独立性が強く望まれているが、バズフィードに対しては面白ければ良くて編集の独立性を気にしていないユーザーが多い。今回の問題も、ユーザーからの批判の声はあまり大きくなくて外部のメディア屋さんが騒いでいる傾向が強い。

 ただバズフィードの編集の進め方に変化が現れそう。ネイティブ広告主のブランドに触れた編集記事の投稿前のチェックを徹底させていくのだろう。伝統メディアと違って何のしがらみもなく自由に企業などの組織の製品や行動を批判できたのが、自己規制が働いて面白みが減らなければいいのだが。

◇参考
BuzzFeed Deleted Posts Under Pressure from Its Own Business Department(Gawker)
BuzzFeed Deletes Post Critical of Dove, a BuzzFeed Advertiser(Gawker)
BuzzFeed Restores 2 Posts Its Editor Deleted(NYTimes)
BuzzFeed Says Posts Were Deleted Because of Advertising Pressure(NYTimes)
The BuzzFeed Editorial Standards And Ethics Guide(BuzzFeed)
Why Gawker Media's Nick Denton Is Constantly Attacking BuzzFeed And Its CEO Jonah Peretti(Business Insider)
Ben Smith and Jonah Peretti: The Gawker Interview(Gawker)

あわせて読みたい

「BuzzFeed」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    堀江氏 バイトテロは昔からある

    キャリコネニュース

  2. 2

    海老蔵が豊洲で都知事をバッサリ

    BLOGOS編集部

  3. 3

    バカッター 実は低リスクで驚き

    シロクマ(はてなid;p_shirokuma)

  4. 4

    「貧乏人は犬飼うな」はその通り

    永江一石

  5. 5

    徴用工訴訟 逆提訴が日本のカギ

    AbemaTIMES

  6. 6

    いきなり! セブン出店戦略に学べ

    内藤忍

  7. 7

    西川先生の池江巡る発言は暴論?

    中村ゆきつぐ

  8. 8

    日韓関係 耳傾け合う姿勢が希薄

    宮崎正

  9. 9

    慰安婦解決と天皇の謝罪は別問題

    非国民通信

  10. 10

    「悪夢の前政権」外交面では事実

    MAG2 NEWS

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。