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社会貢献型の投資でリターンを得られるSIBが、ついに日本でスタート

ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)という言葉をご存知だろうか。行政の事業に対して民間が投資し、その事業で得られた成果(コスト減など)に応じてリターンを得られるという仕組みだ。行政は民間資金を財源に事業を行えるため、財政負担を抑えて新しい事業に取り組むことができる。すでにイギリス、アメリカ、オーストラリア、カナダ、韓国などで導入されており、さまざまな社会課題を解決できる仕組みとして注目されている。

イギリスでは、元受刑者の再犯率を下げる取り組みに対して投資してもらい、刑務所の収監コスト減などで得られた利益を投資家に還元するというSIBが実際に運用されている。

そんなSIBのパイロット事業が、日本で初めて実施される。横須賀市による特別養子縁組を促進する事業に対して日本財団が資金提供し、児童養護施設などにかかるコストを軽減する試みだ。児童養護施設においては、施設退所後の自立の難しさや愛着障害などが課題になっているが、里親の家庭で育ててもらうことにより、それらを解決できることが期待されている。つまり、事業が成功すれば、行政のコストが削減されて、投資家がリターンを得られるだけではなく、社会問題の解決にもつながる画期的な金融商品というわけだ。

特別養子縁組が成立すれば行政収支が1630万円軽減


横須賀市では、社会的擁護が必要になった子供たちのほとんどが児童擁護施設に入所している。そこで、新たに4人の特別養子縁組を成立させることを目指すのが、今回のSIBだ。

仮に特別養子縁組が成立すれば、児童養護施設にかかる市の負担などが1人あたり882万円(18年分)軽減されることになる。目標の4人が成立すれば、約3530万円の軽減だ。ここから特別養子縁組を成立させるための事業費1900万円(人件費、カウンセリング費など)を差し引くと、1630万円の行政収支が改善されることになると試算されている。

今回はパイロット事業のため、SIBが成功しても日本財団側にはリターンが発生しない。しかし、SIBの仕組みが有効に運用されることが確認されれば、民間の投資家から資金を募る本格的なシステム導入も検討されるという。就労支援や高齢者医療・介護予防、再犯防止など、SIB導入が検討される領域は広いため、今回の成果に注目したいところだ。

具体的には一般社団法人「ベアホープ」に委託して事業が行われ、専門家らによってプログラムの進捗評価や目標達成に向けたアドバイスが行われる仕組みとなっている。

日本財団の尾形武寿理事長は4月15日に行われた記者会見で、「もしも(今回のSIBが)成功すれば、社会課題の解決に対して、とんでもない“インパクト”を与えることができる」、横須賀市の吉田雄人も、「全国的にも大きな試みになるだろう」と意気込みを語った。

行政が投資家から「評価」される意味


行政の事業はしばしば「効率的ではない」と批判されることがある。しかし、民間の資金を使うからには、しっかりとした成果が求められる。当然、成果が出なければ投資家がリターンを得られないため、次のSIBで資金を集めることは難しくなる。民間の評価にさらされることによって、行政が成果を意識して効率的に事業を行うようになると予想される。

一方、SIBが失敗に終われば投資家はリターンを得られないどころか、契約によっては元金も保証されないという厳しい側面もある。投資である以上、当然リスクもあるのだ。それでも、企業のCSR(社会的責任)活動を含めた、社会課題解決に向けられる資金は日本でも少なくない。個人の寄付市場も7000億円近くあると推計されている(2012年)。SIBが、そうしたニーズの受け皿になれるかどうかが、今後のポイントになりそうだ。

SIBの魅力の一つは、リターンを得られる可能性があることだが、投資する側としては「社会課題解決に投資した」という広報的なメリットも大きい。新たな投資の仕組みとして魅力を高めたいならば、そうした広報にも力を入れることが大切になろう。そしてなにより、「本当に社会貢献になっているのか」という事後評価を具体的に示すことが必要だ。

今回のパイロット事業はその成果も注目だが、「SIBを運用する上でどのような課題があるのか」ということを洗い出す役割も担っている。SIBにどのようなメリットがあり、どのようなデメリットがあるのか。先行事例として、今回のSIBにかけられた期待は大きい。

(取材協力:日本財団)

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