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懲罰的賠償制度は有用か 違法駐車を排除できる?

 日弁連では民事司法制度改革の議論が行われていますが、その中の一部から懲罰賠償制度の導入が主張されています。
 米国では民事訴訟の中で損害賠償の額に本来の損害とは別に懲罰的に高額な賠償金を上乗せするという制度です。マクドナルド・コーヒー事件が有名ですが、日本にはこのような制度はありません。
 一部、賃金の未払の場合に、裁判所がその未払が悪質と判断した場合には付加金制度がありますが、一種の制裁目的もありますから同様の制度ともいえます。

 私も一部の事件では、抜本的に賠償額を引き上げなければならないと思う分野があります。
違法駐車
 他人が契約しているところの駐車スペースに勝手に停める。
 お店の利用客でもないのに停める。
 一般的には、これで賠償が認められたとしてもごくわずかです。
参照
コンビニに「無断駐車」したら「金払え」と要求されたーー支払う必要はあるか?」(弁護士ドットコム)
 一般論であれば、ここで解説されているとおりです。
 コンビニの場合にはもしかしたら誰もが経験があり、ちょっとの時間なら目くじら立てないでよ、と言われるかもしれませんが(そういうときは大抵、少額でも買い物をしますよね)、普通の買い物時間を超えるような駐車は論外ですが、実際に店舗側が賠償請求するということになると費用倒れになります。
 では、それが自分が契約している駐車スペースに停められたどうですか。先日、私も経験しました。停めている人を突き止めるまでに30分を要しました。
 その賠償がコインパーキングが30分200円だから賠償額も200円ね、なんていうことになったら、逆に他人の駐車スペースに停め放題です。見つかっても何百円を払えば済み、契約者が威嚇したり脅してきたら「脅迫された」と110番通報すればいいことになるからです。

 警察も私有地であれば全くもって強制力のある解決はしてくれません。
 違法性は明らかという意味ではモラハラとは異なるのですが、それでも泣き寝入りを強いられるようではモラハラと異なりません。
 このような場合に懲罰賠償は効果的なのかとは思います。
 その車の登録ナンバーから所有者を割り出し、訴状を出しということまでしなければならない、それに見合うための懲罰賠償の額はいくらが相当なのかという観点です。
 しかし、後から請求するにしても、今、現実に目の前に停まっている車をどうにかすることはできません。無断駐車が違法なのに、これを司法手続によらないでどかすと自力救済として違法とされてしまうのですが、まさに本末転倒です。
 もとよりこれを自力救済で排除可としてしまうと、勝手な判断、恣意的判断が入ることになり非常に問題です。
 従って、停め得を許さないためにも簡易迅速に排除しうる手段がなければならないということでありますが、権利者の正当性を証明する必要はありますから、110番通報して、さっさとどけてもらうというわけにはいきません。
 その意味では懲罰賠償は有効な手段ということになるのかもかしれません。

 しかし、私は、一般的な懲罰賠償制度の導入には問題が多すぎて反対です。
 制裁として、これくらいの賠償が課せられなければ企業は本気になって損害発生の防止に取り組まないのではないかという意見がありますが、その結果、その懲罰賠償金は、その訴えた人の「収入」になります。
 上記マクドナルド・コーヒー事件では、懲罰賠償を命じた根拠の1つに、訴訟と同様の苦情が過去10年間に700件あったことがあるようですが、そうなると、仮にこの700人は「普通」の賠償額で、最後のこの1人が「高額」賠償ということになり、いかにもアンバランスです。
 確かに企業として10年間も全く改善して来なかったというのは訴訟社会米国においては驚きですが、だからといって個人の収入かということにもなり得ないと思います。(懲罰賠償であれば、通常の損害補填する部分を超える場合には収入扱いされ、課税対象になるのかもしれません)
 日本では懲罰賠償制度の導入が消費者系の弁護士から主張されるときは、この企業に対する抑止効果ということが主張されています。現実問題として賠償額が低いために、それこそ企業側が本気になって改善しないということ、それぞれ請求を受けたものだけ低額の賠償さえすれば済むという発想になりがちだということ、です。

 しかし、そうなってくるとビジネス弁護士は一発当てれば高額報酬が入ることになり、それが米国のようなアホな訴訟社会を招かないかという問題もあります。飢えた弁護士がバクチのような訴訟を起こすようになりはしないでしょうか。
 民事司法制度改革を推進する勢力は、どうにもこの懲罰賠償制度を導入したがっています。
 その意味はどうも弁護士の業務対策の悪臭がプンプンと漂っているのです。
中本和洋弁護士、一体、何しに札幌に来たの?
民事司法を利用しやすくする懇談会「最終報告書」の問題点 民事審判制度は落ちたけれど

 確かに日本ではあまりに賠償額が低額ということで、やり得感がありました。
 それは適正な賠償額に引き上げることによって対処すれば足りる問題でもあります。
 私自身は、違法駐車の問題についていえば、住居侵入罪が犯罪とされているように明らかに他人の敷地に停めること自体を犯罪化する必要があるのではないかと思います。個別の訴訟によって解決するにはあまりに手間暇がかかりすぎるからです。
 懲罰賠償制度は再考を要します。

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